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いきなりの事に私は驚きの声を上げその場から飛び退いた。
その勢いに乗って、尻餅をついた私の後ろから笑い声が届いた。
キーンと耳の中で鳴り響く音と共に聞こえる、男の人の笑いを堪えた声。
私は目をパチパチと瞬かせながら、声のする方へと視線を流した。
そこにいたのは、私と同じ歳くらいの少年。
少年は口許と腹を押さえて、居間の入口に(廊下)立っていた。
真っ赤に染め上げた髪。それと相反する漆黒の瞳。切れ長の目に整った顔。
一言で言って、カッコイイ。
「あ……の?」
おずおずと声をかけると、視線が私へと向けられた。
「それは聴くんじゃなくて、見るんだよ」
笑いながら言うと、黒い箱に指をさした。
黒い箱には男の人達が二人。
何これ……
「すごぉい! こんな小さな箱にどうやって二人も入ってるの!?」
私がいた時代には、TVなんてなかったか。だから私はその箱そのものに人が入ってると思っていたの。今思うと、我ながら恥ずかしい事を叫んだものだわ。