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私の問いに、頭の上に‘?’マークを大量に浮かべる女性。
だって、白飯を食べられるのは農家をやっている家か、畑を貸し出し、貸出料の代わりにお米をもらっている地主様くらいで……。
私達の様な一般家庭じゃ到底食べる事は叶わない代物で……。
それが、いっ、いっ……いっぱいあるですって!?
「あの、別に農家とか地主じゃないわ。普通の一般家庭よ」
「一般家庭なのに白飯を?」
「お店に普通に売ってるし」
「お店で普通に!?」
もう一度ムンクの叫び。いい加減うるさいかしら?
そんなやり取りをしていると、襖の向こう(たぶん廊下)から何やら音が聴こえる。
音楽……歌? そんな感じの音。
女性はその音に振り返ると、私に椀を渡し足早に部屋を後にした。
「あの、とりあえずこれ、食べなさいね? 本当、気にしなくていいんだから」
「え、いや、でもっ」
私の声は空振り、閉まる襖。
「あっ……あ~あ、行っちゃった」
私の掌に伝わる熱。そして匂い。
ぐぅぅう~…
私と違って、正直な腹の虫。
「……いただきます……」