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Meeting  作者: 吉四六かぼす
始まり
5/52

5


「いいえ……」


「そう……。いいわ、ゆっくり思い出せばいいんだから。お腹空かない? お粥を炊いたんだけれど食べられそう?」



 傍らに置かれた小さな土鍋の蓋を開け、中身を器に移し私にさし出した。


 その器の中身を見て、私は息を飲んだ。だって、この御時世に芋や大根じゃなくて、白飯のお粥を見る事が出来るなんて、思ってもみなかったんだもの!!


 今は戦争真っ直中。白飯どころか、芋はもちろん、大根でさえそう簡単に口にする事ができないのに……。



 器を受け取ると、私は白く光る中身を、じーっと見つめた。ごくり……っと鳴る私の喉。



「どうしたの? さぁ、遠慮しないで食べて」


「で…でもコレ……」



 白飯なんて……。



「ダメです!」



 器を女性に突き返すと、バッと目を逸らした。ああ……匂いが鼻腔をくすぐるぅ。



「ダメですよ!そんなっ、そんなっ……身元も知れない様な私に、こんなっ、白飯なんてっ」


「は?」


「こんな御時世です! そりゃ助け合いも大切でしょうけど、貴重な白飯を下さるなんて私……私……いえ、それより親を差し置いて自分だけこんな贅沢するなんて、バチが当たりますっっ!」



 私は一息で喋り切る。女性は驚いた顔で、目をパチパチと瞬かせている。



「あの……気にしなくていいのよ? 御飯、沢山あるから」


「た……沢山~ッ!?」


 ひぃぃいっっとムンクの叫びポーズをする私。その叫びに、女性がビクリッと肩を揺らした。



「あ、あの、不躾で申し訳ないんですけど、ここもしかして地主様のお家……とか、農家……とか、そんな感じのお家ですか?」


「……は?」


 

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