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私の17の歳の頃、当時は戦争の真っ直中で、いろいろ大変だった。食べ物も住む所も空襲で焼け、働き手の男子は殆どが兵隊になってしまって……。
それを補う為に、女子供が必死になり畑を耕していた時代。
空襲を避け逃げねばならない。でも食べる為には田畑を耕し、作物を作らねばならない。
本当にあの頃は大変だった。
ある日の事。町は闇と静けさに包まれ、人々も動物も、植物も眠りについていた。だけれど、いきなりのけたたましい鐘の音と轟音に、私も家族も眠りを妨げられたのだ。
「お母さん! 空襲警報や!!」
暗闇で響く、切羽詰まった私の声。母は相づちを打つと、素早く着替え、防空頭巾を身に付けると、枕元に置いていた風呂敷を肩にかけた。
父は兵隊に行き、家には母と私の二人きりだったので、持って行く荷物は少なく非難するのに手間はかからなかった。
外に出た私達の目に映りこんだのは、暗い夜空に浮かぶ紅い紅い光り。それは、敵軍が落とした爆弾によって家が燃える光り。
「…………」
逃げ惑う人々。燃え、損壊してゆく家屋。襲い来る炎の波。
私は、恐怖と驚きで足が石の様に重くなり、動けなかった。
逃げなきゃ……っ
頭の中で思うのは至極簡単だった。でも身体は言う事を訊かず、動かない。そうしている内に、火の粉が私のすぐ横の家に燃え移り立ちすくむ私を目掛け倒れて来たのだ。
「キャアアアッ」
家の下敷きになり、薄れゆく意識の中聞こえたのは、轟音を響かせ飛び交う飛行機の音と、泣き叫ぶ子供の声だった。
私の記憶はそこで途絶えた。