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   一人ぼっちは、寂しいですから(4)

「私は、少しルークと話がしたいから、二人はルークの部屋を決めてきて。一階にある部屋でも、二階にある部屋でも、どこでも使っていいから」


 サキ様に言われ、私たちは一階に降りた。護衛がいなくなることを心配したが、「誰も私を襲わないわよ」と彼女になだめられた。医者と二人で話したいことがあるのかもしれないと思い、承諾した。


 私とラインは、まず一階の部屋を見て回った。各部屋を見て回るのは、私もラインも始めでだった。広い屋敷だ。元いた使用人全員より、数が多いのではないかと思わせるほどの部屋数だ。


「ちょっとした探検だ」

 と、ラインは楽しそうに言った。無理に笑顔を作っているようだったが、私は何も聞かなかった。私だって、無理に強がっている。


 どこもかしこも部屋に私物が残っており、何もなくすっきりと片付けられている部屋はほんの少ししかなかった。ガーネットさんの部屋は、きれいさっぱり片づけられていた。少し、心が痛んだ。


 残っていたメイド達が、部屋自体は綺麗にしてくれていた。ベッドを整え、私物を一か所にまとめてあった。


「処分しなきゃ」

 置いてあったスーツを手に取り、少しは貰ってもいいかも、とラインは冗談を言った。確かに、捨てないで、全部取っておこう、と私は提案した。


「これから来る、仲間のために」


 そう言うと、ラインはにやりとわらい、オッケーとスーツを元の場所に戻した。


 結論として、一階にいると呼び出しづらいため、二階の空き部屋をルークの部屋にしようという結論に至った。二階の、ラインの部屋の隣にある部屋を使用することにした。だれも使っていない空き部屋だが、掃除だけは綺麗にされている。


 サキ様の部屋に入ると、サキ様はすでに眠っていた。ソファに座っていたルークがやぁ、と手を挙げる。


「疲れていらっしゃるようだから、話しもほどほどに、眠りについていただいたよ」

「睡眠薬でも?」

「いやいや、もう寝てくださいって言ったら、あっという間。やっぱり疲れていらっしゃるんだと思うよ」

「いろいろ話したんですか?」


 私とラインは、ルークの前のソファに座った。うん、とルークは頷いた。


「どんな仕事してるのとか、どんな患者さんがいたのとかそんなことから、好きな景色や本の話なんかもしたよ。御聡明なお嬢さんだ、いろんな知識があって驚いた」

「いろいろ、勉強なさってましたからね」

「俺たちも、実はよく知らない同士でしょ」


 ルークは、私と自分自身を交互に指差して笑った。


「自己紹介しよう。俺はルーク。名字は忘れたから、ルークでいい。それと、年齢とかも気にしないから、敬語もいらないよ」


 一見クールで寡黙そうに見えるこの医者は、意外と親しみやすかった。少し、安心する。


「遠慮なく、敬語は無しで話させてもらうね。私はレイカ。養子先では、レイカ・ロカソラーノ、本名は月影麗華よ」


「ツキ……? ここの国の人じゃないんだ」

「ツキカゲ。両親がね。そうだ、ここで一緒に暮らすんだから、あなたにだけ隠してるのもなんだし、言うね。私の能力って――――――」


 私は、今まで必死に隠してきたものを、不思議とすんなり彼に話すことができた。なぜだかは分からなかった。ラインとサキ様に、受け入れてもらえたからかもしれない。勇気を出すと、それだけの物が返ってきたからかもしれない。



 その後、サキ様が起きるまで、私たちは雑談をしていた。


 ルークは、私の能力について驚いていた。その驚き方が、彼独特のものだった。


「へぇ、それは気になるな。今度診察させてよ」


 初めての反応だったので、思わず笑ってしまった。なんだよ、と笑われた本人は不思議そうにしていた。


「恐くないの」

「恐くないさ。何が怖いの? 生まれ持った才能や、能力は誰にだってある。その中のひとつだろ?」


 医者の考え方なのか、彼の考え方なのか分からなかったが、私はその考えに救われた。あぁ、そうやって見てくれる人もいるのかと、安心した。言ってよかったと思えた。


「ありがとう」

「何が」


 彼はまた、不思議そうな表情を浮かべた。今度はラインが笑っていた。


 出会ってまだほんの数日だが、私はすぐに打ち解けることができた。かれのさばさばとした人柄に好感を持っていた。うまくやっていけそうだ。



 夕方にサキ様は目を覚ました。すぐにルークがかけつけ、診察をした。


「だいぶ楽になりましたか?」

「うん、おかげさまで。治るかしら?」

「多分、明日には熱も引きますよ。少しずつ熱は下がってきていましたから」


 よかった、と彼女はほっとしていたが、相変わらず表情は無かった。



 二日後、彼女の熱は下がった。咳や頭痛、喉の痛みと言った症状も無く、だんだんと仕事をする時間を増やしていった。


 少しずつ、元のサキ様に戻りつつあった。

 サキ様を時には三人で囲み、時には一人ずつ交代で傍に居ながら、様々な話をした。私が、今までしてきたように。



 それでも、彼女の笑顔は戻ってこなかった。



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