決断(4)
その後、ガーネットさんは散々ここに残ると言ったが、最後には折れた。遊びに来てもいいですか、と笑う彼女の笑顔は、とても寂しかった。
サキ様は、残ったメイドとコックを呼び出し、ヒトツボシ家ではないところで働いてもらうことを告げた。両親が彼女を捨てたことは、話さなかった。ただ、他のところで働いてもらうと告げただけだった。メイドとコックは戸惑っているようだったが、何も質問をしなかった。
「麗華、電話を。ライン、机からノートパソコン持ってきて」
サキ様は、皆に希望の職場を聞くと、ベッドの上でパソコンを開いた。電話を片手に、あれよあれよという間に私とライン以外の職場を決めてしまった。六人の職場を決めるのに、かかった時間は三十分足らずだった。
彼女の行動を見て、思い知る。今まで近くにいたからこそ、当たり前のように見ていたが、この子は仕事に関して、天性の才能……それ以上の、能力を持っている。
私と一緒だ、と思う。強く思う。
大人びた口調で、てきぱきと仕事をこなす彼女は、パソコンのキーをタッチしているときよりはるかに分かりやすく、その能力を見せてくれているようだった。
化け物、と彼女の両親は言ったのか。
唇をかみしめた。サキ様が今まで、こんなに一生懸命だったのは、なぜだか、あの人たちは考えてもみなかったのかと思うと、気分が悪くなった。
「はい、終わり」
電話を切り、彼女はメモを走らせた。そのメモを、各自に渡し、三日以内に行くように告げた。
「今までありがとう」
と言う彼女の顔に、笑顔は無かった。熱で辛いのだろう、ショックもあるだろう、目がうつろだ。表情もない。どんよりとしていた。それでも彼女は、皆の眼をしっかりと見つめ、ありがとうと何回も言った。そんな彼女の態度に、皆何度も頭を下げた。
二日後には、皆屋敷から出て行った。
「サキ様を頼むよ、私も、また会いに来るから」
ガーネットさんは、結局皆を送って、最後にこの屋敷を出て行った。最後に見せた微笑みは清々しく、私も涙を見せまいと、必死に笑った。サキ様は、笑顔を見せることは無かったが、ベッドに横たわったまま「元気で」と優しい声で言った。
屋敷には、私と、ラインと、サキ様だけになった。




