13 決断(1)
やっときた。やっときた。手が震えたが、それでも私は携帯電話を握り締め、電話に出た。
「もしもし?」
懐かしい声だった。後ろから雑音が聞こえる。車の音だろうか、騒がしい。
「ガーネットさん」
「大丈夫か?」
「お嬢様が、熱で倒れて……奥様は? 旦那様は?」
「落ち着けレイカ、お嬢様が熱だって?」
電話の向こうのガーネットさんは、冷静を装った声でそう尋ねた。はい、と電話越しに頷く。私の声は震えていた。
「ご両親がいなくなった直後に倒れてしまって……」
「医者は?」
「診察しました、来ていただいて、心因性の熱で……私どうしたら」
泣くのを我慢しながら、指示を仰いだ。ガーネットさんはすぐ「そのまま看病を頼む。私は今から屋敷に戻るから」と答えた。
「ガーネットさんお一人でですか?」
「そうだ」
「ご両親は?」
電話の向こうから、雑音しか聞こえなくなってしまった。心の底が震えるようだ。どうして、どうして返事をしない。
「――二人は」
随分と間があって、聞こえたのは弱々しい声だった。
「もう、屋敷には戻らないそうだ」
「どういうことです!? どういうことなんですか!」
「落ち着けレイカ!」
「落ち着けるわけがないじゃないですか! 意味が分からない! お嬢様を見捨てられたんですか!?」
「私だって信じたくない!」
耳が割れるほどの大きな声だった。思わず黙る、黙ってしまう。
「……とにかく、あと半日もすればそちらに到着する。夜には着くだろう。そうしたら、全てを説明するから」
「……わかりました」
「大丈夫か? 何か他に問題は無いか?」
「えぇ、大丈夫です」
「わかった。まかせたよ、レイカ」
電話は切れた。そっと、携帯を机に置く。心配そうにラインがこちらを見ていた。私は、首を振ってこたえることしかできなかった。
「ご両親は、お嬢様を捨てたのか……?」
声は沈んでいた。私はどうしても、そうらしいと頷くことができなかった。




