連絡と診察(4)
原因不明から、原因明確になることの安心を知った。ありがたい、と思った。医者の言葉は、心強い。
「頭痛はあるようだったか?」
「いや、分からない」
「あるようだったら、この薬を食後に飲むようにしてくれ。頭痛が和らぐだけで、違うだろうから」
ルークはそう言うと、鞄から小さな薬を出した。白い錠剤だ。はい、とラインに渡す。
「眠れているようだが、万が一眠れないようなら睡眠薬……いや、でも――今、お嬢さんは何歳だ?」
「十歳だ」
「じゃぁ、今持っている俺の薬では強すぎる。もし眠れないようなら、俺に連絡をくれ。ちゃんとした薬を持ってくるから」
「解熱剤は?」
「風邪になら効くんだが、心因性の病となると効かない場合がほとんどだ……しばらく様子を見ないといけないことは確かだが、俺が今診察した限り、何度も言うが、この症状はストレスによる発熱だろうからね」
「わかった、ありがとう」
「食事をしっかり摂取して、安静にしていることが一番だ。くれぐれも無理はさせないように。また何かあったらすぐに呼んでくれ。飛んでくるから」
「恩に着るよ」
「他に診察は? というかお前もしとくぞ、ライン」
汗がひどい、と医者は無理やりラインを椅子に座らせ、診察を始めた。
「頭は痛いか?」
「いや、ふらふらはするけど」
「少しぼうっとする?」
「うん、なんか、考えすぎて頭痛い」
「考えすぎだ。少しパニックになってるだろう」
「それはある」
「安定剤、いるか?」
「いや、そういうの飲まない主義」
「じゃぁ、なるべく冷静にいろよ」
医者はラインの頭を一度叩くと、ポケットから何かを差し出した。
「これでも食え」
「ガキか、俺は」
ラインは苦笑すると、それを受け取った。
「飴玉だなんて」
「十九なんて、まだまだガギなんだよ。それに、飴玉を馬鹿にするなよ。冷静になるんだ、それを舐めると」
「医学的に?」
「個人的にだ」
はっ、と笑うと、ルークは立ち上がった。私に声をかける。
「お嬢さんは?」
「私は、大丈夫です」
「俺の電話番号を教えておきますから、いつでも連絡してください」
鞄のポケットから、彼は名刺を差し出した。ありがとう、と受け取る。名前と電話番号しか書いていない、シンプルな名刺だった。
「遠慮はしないで、いつだって来ますから」
「本当に、ありがとうございます……薬を頂けて、ホッとしました」
「看病は任せましたよ」
「あ、治療費は……」
「大丈夫。あいつには借りがあるんで、そう言うのは気にしないでください」
いい女性をたくさん紹介したんだよ、と笑うラインに、嘘をつくなとルークは苦笑した。仲がいいようだ。私は、久しぶりに笑った。
「お嬢さん、ラインのことも、悪いけどよろしくお願いします」
「はい。きつそうだったら、寝かせます」
「その調子で」
にこりと笑うと、医者はラインと共に部屋を出て行った。
ふう、とひとつため息をつく。
ストレス性の発熱か……私はそっと、サキ様の額をタオルで拭いた。苦しそうだ。三十九度なんて、私は経験したことが無かった。薬をもらえたのは安心だったが、しかし、やはり心配だ。
ご両親が帰ってきたら、治るだろうか。
泣きそうになるのを、ぐっともう一度こらえる。
携帯は、まだ鳴らない。




