連絡と診察(3)
ラインの友人である医者に連絡が取れ、すぐに向かってくれると言う。一時間以内には来るのと事だった。サキ様は、本当に三十分足らずで仕事を終えてしまったようだ。
「ライン、お願い、ベッドに」
サキ様は、作業を終えると、電源が切れたようにぐったりとなった。汗を拭きながら、ベッドに横たわる。
「麗華、食事を頼んでくれてたでしょう、ありがとう」
「もう、来ます」
サキ様がベットに横になってからほんの数分で、食事が運ばれてきた。私達の分も用意してあった。三人でそれを、黙々と食べた。サキ様は、ほんの少ししか口に入れなかった。
「もう、無理だわ。お医者様が来るまで、寝てるわね」
そういって横になるサキ様は、衰弱しきっていた。心配で、心配でたまらなかった。泣きだしそうな感情を、必死に必死に押し殺していた。私が、しゃんとしていないと。
食事をした後、カタリーナに連絡を入れた。掃除をし終わったが、手紙以外は出てこないとのことだった。荷物を残して必要最小限の物が無くなっている部屋ばかりだとのことだった。各部屋に、携帯電話が置き去りにされていたそうだ。
「指示を、待っていた方がいいですか」
カタリーナには、私が指示を出した。
「そうですね、お願いします。休みたい方は休んでいてください。今、サキ様の体調がよろしくないので、お医者様がいらっしゃいます。その方に、体調が悪い方は見てもらえるとのことでしたので……」
「わかりました。今のところ、体調不良者はいません。いたら連絡をします。何かありましたら、連絡をください。皆、食堂で待機しています」
「よろしくお願いします」
ふう、とひとつため息をついた。落ち着け、冷静に。何度も自分に言い聞かせた。
十五分ほど経ったところで、ラインの携帯が鳴った。一瞬どきりとしたが「医者だよ」と言う彼の言葉に、思わず肩を落としてしまった。ガーネットさんからの連絡だったら、私の方に来るはずだ、分かってはいるけど、やはり期待してしまう。
連絡はまだだろうか。
今どこに居るのだろう。
不安が、浮かんでは消え、消えては浮かんでくる。
「もう着くって。玄関まで迎えに行くよ」
ラインはそう言うと、部屋を出て行った。しばらくして、ノックと共に、ラインの友人である医者が入ってきた。
ラインと同じぐらいの背丈で、白衣を来ていた。茶色のバッグを持っている。医療鞄だろう。丸い眼鏡をかけ、その向こうの釣り目が私をとらえた。
「はじめまして。ラインの友人の、ルークといいます」
「麗華です」
すっと頭を下げた。私は思わず、その特徴的な髪の毛を見てしまう。短髪のそれは、綺麗なミントグリーンだ。
「あ、こんな髪の色してますけど、腕は確かですので、心配なさらず」
彼は、私の視線に気がついたのか、そう言って苦笑した。慌てて頭を下げる。
「すみません、珍しいなって思っちゃって。ラインのお友達だと聞いています。信用しています、よろしくお願いします」
「ありがとう。それで、診察してほしい方って言うのは?」
「あちらで寝ていらっしゃる、お嬢様だ」
ラインがそっと、ベッドを掌で指した。
「失礼しますね」
医者はサキ様の横に行くと、鞄を広げ、聴診器を首にかけた。
そっと額に手を置き「高い熱だ」と呟く。
「いつから?」
「昨日から」
答えるのは、ラインだ。私は黙って聞いている。
「昨日からか――風邪ではなく、ショックでの発熱の可能性がある。心因性の発熱だ。今三十九度近く出ている。相当辛いだろう」
ラインから、事の概要は聞いているようだった。失礼、と彼はベッドをめくり、診察を始めた。サキ様は、それでも目覚めない。
「やっぱりそうだな」
彼は、無言で診察をした後、聴診器を取って言った。
「心の病だよ、これは。ストレスで熱が出ちゃったんだろう」




