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   崩壊(7)

 サキ様をベッドに横たわらせる。汗がひどい、熱も出ているようだ。


「とりあえず朝までは寝てていただこう」


 ラインはそう言うと、サキ様がいつも寝ているベッドに腰掛け、ガーネットさんに電話をかけた。私も、ラインの隣に座る。何度も何度も、切ってはかけ直す。携帯電話の中に入っているデータの中で、屋敷に居ない人全てに電話をかけるが……だめだったようだ。しばらくして、首を横に振った。


「だめ……?」

「だめだ、つながらない」

「どうしよう」

「ほんとに……何がどうなってるのか」

「ライン」


 私は、無意識にラインの手を取っていた。私の手が震えているのが、彼の手を取ることでようやく認識できた。


「どうしよう」

「とにかく、連絡を待とう」

「どっか行っちゃったのかな」

「わからないけど、その可能性も捨てられない。サキ様が起きるまでは、他の人からの連絡を待とう。きっと、サキ様にあぁは指示されても、みんな夜中に動いてくれるさ。自分の上司の部屋ぐらいは、見てみるだろう」


「何で、何で? 何が起きたんだろう?」

「レイカ、落ち着いて」

「落ち着けないよっ」

「声を荒げないで、サキ様が起きてしまう」

「だって、だってわけが分からないから、だって」


 ぐいと手をひっぱられ、両肩に手を置かれた。金目が不安そうに私を覗き込む。


「お願い、落ち着いて」

 目を伏せて、ラインはそのまま頭を私の右肩に置いた。


 私が震えているのか、彼が震えているのか分からない。


「嘘でもいいから、落ち着いたふりをして、レイカ。俺だってどうなってるのか分からなくて、混乱するんだ。頼むよ。明日になれば、ご両親が帰ってきて、よかったってことになればいいって思ってるけど、きっと、多分、そうはならないだろ?」


 ラインは早口になっていた。表情は見えないけど、彼の様子が、いつもと違う。余裕があって、冷静な彼とは違う。私は不安になった。


「ライン……?」

 呼んでも返事は無い。彼は震えていた。私が震えているのではなかった。声も、体も震えていた。


「怖いんだよ。こんな、こんな少女を、自分の娘を、おいてきぼりにする親が、いるって認めたくないんだ。捨てられた子が、俺の他にも――」


 はっと息を飲んだ。


「もう言わなくていい、ごめん、ライン、ごめん、私がしっかりしてなくてごめん」


 多分初めて、私から彼を抱きしめた。

 彼は泣いていた。

「こんなひどいことって、無い」


 彼の言葉が、耳の奥で反響するようだった。


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