崩壊(4)
「俺達を入れて今八人でしょ。適切な数、というか――旦那様に二人、奥様に二人、サキお嬢様に二人、その他二人で多いとは思うけど、麗華が来た時なんて倍以上いたんだろ」
「うん」
「どうして急にこんなに減らしたんだ?」
「人件費削減とかじゃなぁないの?」
「異常だよ。必要としていたから雇っていたわけだろ……なんかあったんじゃないか?」
「何かって例えば?」
「レイカが言っていた人件費削減。例えばだけど、旦那様と奥様、どちらかあるいは両方が、多額の借金を抱えたとしたら? 人件費を削るだろ」
「旦那様も奥様も、お仕事で忙しいって、最近」
「そうか……でも嘘かも……まぁとにかく、変だよ」
確かに、とその時初めて自覚したのだから、呆れてしまう。
サキ様に訪ねると、「お父様から、今までが多すぎたってことしか聞いてないけど」と首をかしげた。
今度、旦那様に会う機会があれば、それとなく聞いてみよう。
そんな流暢なことを考えていた。
今でも、思う。
あのとき行動していれば、と。すぐにでも聞いていれば、と。
何かに注意していればと、もっと疑いを持てばよかったと。
悔やんで悔やんで、悔やんでも、悔やみきれない後悔だった。
もし、私が何かしていたら。
そうしたらあんな事態にはならなかったのだ。
「レイカ!」
夜中に、私はラインに起こされた。彼にしては珍しく、酷く慌てているようだった。
「どうしたの」
「こんなこと、日常茶飯事ならごめん。でも、驚いて……旦那様と奥様が、今屋敷を出て行った」
「え?」
「ボディガードの人たちも、俺たち以外は一人残らず居なくなってて」
「どういうこと?」
「扉が開く音がしたんだ、玄関の、あの扉きしむだろ。でも、俺ここを離れられないから、とりあえず下に降りてみたんだ。そしたら、俺と同じくドアが開いたことに気がついたメイドさんがいて、俺その人に様子を見てくるよう頼んだんだよ。そしたら、旦那様と奥様がお出かけになったらしい、ボディガードの皆さんもいないって、不思議そうにしてて」
私は飛び起きた。夜中に二人がそろって出かける? ボディガードを連れて?
「ラインはとりあえずここをお願い。私、外を見てくる」
私は、寝間着のまま部屋を出た。蒸し暑い日だったため、白いシャツにズボンという格好だが、気にしない。ベッドの近くに置いてある靴だけはヒールだが、急いでそれを履いた。バランスなんて言っていられない。
何が起こってるんだ?
階段を下り、扉を開けるとすぐそこにはメイドがいた。彼女は寝間着ではなく、仕事着だった。夜中まで何か仕事をしていたのかもしれない。
「あのっ、先ほどラインさんに」
慌てているようだった。息を切らしていたため、もしかしたら屋敷中を駆け回り、どこかに旦那様と奥様がいないか探してくれたのかもしれない。
「伝えてくれた人ですね、ありがとうございます。彼はあの場を離れられないので、私が代わりに来ました」
「そうでしたか。あの、旦那様と奥様がいなくなって」
「ボディガードも連れていたってところまでは聞きました」
「えぇ、そうなんです。今屋敷を見て回ったんですけど」
彼女は泣き声だった。
「コックとメイドも数人いないんです。部屋は、もぬけの殻で」
ぞっとした。
いったい何が起こっている。




