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   崩壊(3)

 三日後、ラインは屋敷に来た。本当に来た! と言った感じだった。


 彼の部屋は、私の正面の部屋と決まっていた。ゴウさんとリアンは元から別に部屋があって、そこから夜勤務に勤務内容が変更していたため、私の部屋の正面の部屋は長いこと空き部屋だった。ずっと夜の勤務をしてもらうのだから、最初から部屋はそこがいいだろうと言う配慮だった。


 彼は荷物を部屋に置くと、さっそくサキ様に挨拶をした。


「こんなかっこいい人が来るなんて思ってもみなかった。少しどきどきしてる」

 彼女はこんな大人な対応をしながら、頬を真っ赤にして喜んだ。


「よろしくライン」

「よろしくお願いします、サキお嬢様」

 にこにこと微笑む彼は、執事のようだった。


「天職なんじゃないの」

 と小さく言うと、案外ねと彼は意地悪な笑顔を浮かべた。


「旦那様と奥様はいらっしゃらないのですか?」

 ラインの質問に、

「今日は忙しいみたい」

 サキ様は残念そうに言った。


「最近お忙しいですね」

 私の言葉に、うんと彼女は寂しそうに笑った。一緒に食事をしたのは、一週間も前になる。隠しているのだろうが、サキ様はやっぱり寂しそうだった。


「二人とも、お仕事が忙しいみたい。私も一緒だけどね。ごめんね、ライン。今度改めて紹介するわ」

「とんでもございません。また後日、ご挨拶させてください」

「今日はゆっくり休んで。明日ガーネットに、屋敷を案内してもらってね。仕事は明後日からお願い」

「かしこまりました」

「携帯はガーネットから受け取ったかしら? 連絡は、彼女からあると思うわ」

「はい、いただきました。それでは、部屋に戻ります。今後とも、よろしくお願い致します」


 彼は礼儀正しく、サキ様の部屋を出て行った。


「麗華のときは、随分ばたばたしたよね、ごめんね」

「そんな、その日から働けて、私は嬉しかったんですよ」

「ありがと」


 少し微笑み、彼女はいつものように、キーボードを軽快に叩いていた。



 ラインとは、二日後から毎晩顔を合わせるようになった。元々夜型だから、大変じゃないよと彼は言っていた。その次の日、彼はサキ様のご両親――旦那様と奥様に対面したようだった。


「大丈夫、奥様に色目は使わないから」

 こそっとそんなことを言ってのけるところは、普段と変わらない。


 しかし、前の生活から少し離れても、彼は楽しそうなのが嬉しかった。いろんな経験をしたいと思っていたのは本当なのだろう。彼が傍に居ることは、私の安心につながった。同じような人が傍に居てくれるだけで、こうものびのびと生活できるのかと思ったほどだ。


「二人は仲が良いようだし、こちらとしてもチームワークがいいと安心して仕事を任せられるから、彼を雇って正解だったよ」

 とガーネットさんも満足そうだった。


 私は浮かれていた。

 日々が楽しかった。

 もう少し注意するべきだった。警戒するべきだった。


 明らかに異常事態だったのだ。ひとり、またひとりとボディガードが減っていた。しかし、そのことをあまり不思議に思わなかった。


 気がつくと、ボディガードの数は十人を下回っていた。

 ラインの勤務が始まってから、三か月ほど経った頃だった。



「なんか、ボディガードの数の減り方が異様だよね」

 と言ったのは彼だった。そう? と私が尋ねると、うんと真剣に答えた。夜中の二時、サキ様が寝ているので、ひそひそ声で話しは続く。


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