本音と別れ(5)
「いろいろアタックしたつもりで、脈がなさそうだから、諦めたんだよ、俺。彼氏が実はいるんじゃないかな、とか思ったんだけど」
そうだったのか、だからやけにあっさりしていたのか。
「いろいろ考えたよ。でも、転勤って決まって、もういっかってなってた。気持ちは言わないつもりだったんだけど、まさかレイカからこんな話しをしてくれるとはね」
「私、鈍感ですけど、それでも少し、どうなのかなって思ってて――もやもやしたまま、お別れは寂しいから」
「また会えるよ、そんな世界の果てに行くんじゃないんだからさ。でも、会ってくれるの?」
「……恋人には、なれないですけど」
「そっか」
「諦めたのに、掘り返して振るなんて、なんだか最低ですよね」
「そんな、いいよ、いいよ。すっきりしたし」
「恋人はいないんです。ほんとです。私が恋から逃げてるだけなんです。言おうかどうか迷っていたんですけど、それでも、ゴウさんには聞いてほしいから、今日はこの話を切り出しました。私、きっと一生恋ができないんです」
「恋ができないの?」
うん、と頷いた。
「驚かないで、聞いてくれますか。ほんとのことなんです」
私は、ゴウさんに自分の能力について話した。
あっさりと、淡々と話すことができた。
彼には知ってもらいたい。こんな、私を、好きでいてくれたのだから。
義務のようにも、必然のようにも思っていた。彼に言わない、という選択肢は、探してみたが見当たらなかった。
「そう」
黙って私の話を聞いていた彼は、話し終えるとそう答えるだけだった。さすがに驚いたようだが、それでも「信じてくれますか」と尋ねると、「嘘じゃないんだろ」と返してくれた。
恐怖に近いような、驚きの表情は見慣れている。
彼からもそんな表情をされるのは辛かったが、それでも、受け入れてくれた。
「だから、恋愛はできないんです」
ごめんなさい、と頭を下げた。
「レイカが悪いわけじゃないよ。レイカの気持ちはよく分かった」
「驚いたでしょう」
「うん、でも、嫌いになったりしないから、安心して」
優しい。彼は、ラインとは違った優しさを持っている。
気がついたらまた泣いていた。最近の私は泣いてばっかりだ。涙を拭けば拭くほど、次から次へと溢れてくる。
サキ様を起こしてはいけない。声を殺して泣いた。
「どうして泣くの」
「ゴウさんが、優しいから」
「……レイカ」
泣きじゃくる私の頭を、そっとゴウさんは撫でてくれた。
「嫌いになったりしないから」
「ありがとう」
「話してくれて、ありがとうな」
「うん」
「また、会ってくれ、な」
『 恋愛ができないと思っている君に、好きな人ができますように。
きっと出来るよ。俺は信じている。
また会おう。本当にありがとう。毎日が楽しかった。
たくさんの幸せが、君に降り注ぎますように。 』
別れの際に、彼はそう書いた手紙と、小さなペンダントを私にくれた。
笑顔で別れて、そう言えば人生の中で、私が見送るのは彼が初めてだと思い、悲しくなって少しだけ泣いた。サキ様も、寂しいわねと少し泣いた。
彼の代わりについたのは、あまり話したことのない男性だった。名をリアンと言い、私を訝しく思っている人の一人で、交代の際も無言でいることがほとんどだった。最初は、そのたびにゴウさんを思い出したが、なんとか乗り切っていた。




