本音と別れ(3)
「うん」
「寂しいの」
「傍に居てほしいの?」
ラインから、初めての質問だった。うん、と私はすぐに答えた。
「それが当たり前だったから、でも、でも分かんなくて、こういうのが恋なの?」
「そうだねぇ、どうだろう」
「私が気がついてないだけなのかな」
「レイカは、寂しい?」
ラインは、整理をするようにゆっくりと言った。
「うん」
即答する。
「いなくなっちゃうのが嫌?」
「うん」
「彼の反応に驚いている」
「うん」
「自分の反応にも?」
「うん。自分の考えていることが分からない」
「そうか」
少し黙って、ラインは続けた。
「俺はね、それが恋だよ、とか、あれが恋だよ、なんてそんなことは言えない」
「うん」
「それは、自分で考えることだからね、俺だって常に探してるよ。さっきまで抱いてた彼女のことも好きだけどさ、でも、恋か、一生愛したいと思うか、っていったら、それは違うんだ。俺はきっとそう言う事に対して、歪んでる」
「私もおかしい」
「そっか」
少し笑うと、「俺らは似ているからね」と彼は言った。
「でも、レイカ。俺に話して、少しだけ整理がついたでしょ」
「……そうだね、なんだか落ち着いた」
「ならいいよ。恋愛事って言うのはほんとにあやふやで、無秩序で、すぐに混乱する。ぐるぐる回る渦みたいに。俺と寝た女性の中でも、混乱していろいろ言ってくる人はいる。私は貴方のことを遊びだと思ってたのに! って怒鳴られたり、本気か分からないって言われたり、期待しないでよって殴られたり、もうしょっちゅうだよ。そんなとき俺は、彼女に気持ちを話してもらう、すると彼女は落ち着いてくる。俺も、彼女の気持ちが分かってくる。彼女も多分、俺の気持ちを少しは理解してくれる」
「うん」
「アドバイスでもなんでもないようなことだけど、レイカの気持ちが分からないなら、相手と一緒に話してごらんよ」
「……そうだね」
「向き合うんだ」
ラインは相変わらず、優しい声でそう言った。
その言葉は力強く、まっすぐだった。
「恐いよ」
だから私もまっすぐに言った。
「恐いさ。嘘が無い世界からね」
嘘が無い、か。
「レイカは、話せる?」
「話してみる。もやもやしたまま、お別れは嫌だ」
「うん。レイカならできるよ」
「ありがとう。話を聞いてくれて。いきなりごめんね」
「大丈夫、いつでもかけておいで」
「ラインも、いつでもかけて」
「君は仕事中だったら出られないだろ」
「無理を言って出るよ」
笑う彼に、私は真剣に言った。私の真剣さが伝わったのだろう、そうか、と彼は言った。電話の向こうで、優しく微笑む彼の姿が浮かんだ。
「本当にありがとう」
「うん、もう平気?」
大丈夫と元気よく答え、私は電話を切った。ふう、とひとつ深呼吸をする。
「がんばる」
携帯を握りしめた。そうか、話してみればいいのか。
話す。ぐちゃぐちゃな気持ちのまま、ゴウさんに話す。
「できるかな」
不安もあったが、それでも私は、もう逃げないと心に決めていた。




