本音と別れ(2)
「私の働いているところは、同僚がたくさんいるんだけど、あまり私は好かれていないし、そんなに関わりもないって話はしたことがあるでしょ? でも、ひとりだけ、毎日接するしよくしてくれる人がいるの。ゴウって言う名前の男性。私より四つ年上なの。
彼ね、私に本当に優しいの。
時々ね、私がムシカに出かけた時とかに、男と会った? とか聞いてくることがあるの。
馬鹿みたいかもしれないけど、私、彼に好かれてるんじゃないかって思ったの。だって、だって彼は優しいし、それに私が男と会ったって言うと、凄く不安そうな顔をするの。私と話す時も、不安そう。でも凄く嬉しそうでもあるの。よく分からない、感情がぐしゃぐしゃってなった表情をして、声もそうで、もう全部が、いつも不安定。
私の知らない感情だから、それって好意だって思ってた。
でもね、私は彼から一定の距離を保ってた。近すぎず遠すぎず、ずっとずっと、彼と向き合うのが怖くて、そう、一緒にバーに行きたいねって言ってきたりもしたの。でも、そうですねーなんて何も気がついていないように笑って。
そうやって逃げてきたの。彼の核心に触れないように。
今日ね、今日の朝。彼が転勤するって聞いたの。
私びっくりしちゃって、気が動転しちゃって、でも彼に聞いたら、そうだよーって明るく言うの。なんか、その時私拍子抜けしちゃって。私だけなんだか馬鹿みたいじゃない?
でも、どうしてあんなに混乱したのかもわからないの。
凄く寂しいし、辛い。
それに、彼の反応がさっぱりしていて寂しくて。
自分が何を考えているのか分からないの。
恋愛ってなぁに? ライン。
私、恋愛って無理だと思ってた。彼の気持ちが全てわかっちゃうの、そんなの、恋愛が成り立たないと思わない? 嘘も本音も全部が透けて見えちゃうんだよ。私が辛いし彼も辛い。幸せになれない。
恋愛って遠ざけてきたの。
恋愛の悩みの種だった彼が、いなくなるの。
なのに私はこの上なく寂しいって思うの」
ラインは、うん、うんと相槌を打ちながら、一度も私の話を遮らなかった。
そこまで言って、ううと唸った。言葉に詰まる。
「どうしよう。何なんだろう。訳がらからなくて」




