一緒(3)
すっと金目から視線を外し、私は机を見つめた。口の中がからからだ。どうなってしまうんだろう。鼓動が速い。手に汗がにじむ。ぎゅっと目を瞑ってしまいたかった。怖くて怖くて、でもそれをなるべく悟られたくなかった。
へぇ、と彼は言った。多分、すぐに言ったと思う。
「だから、俺の嘘もばれたんだね」
「……うん」
驚かないの、と訊こうと思って、止めた。彼は、私を受け止めてくれたのだと信じたかった。今度は、私が彼の反応を待つ。
「人の気持ちが分かるか……そりゃぁ、凄い才能だとか、そんなこと言われたら嫌だよね」
独り言のように、彼は呟いていた。
「俺と同じだ」
頭の中に、その言葉が鐘のように響き渡った。
同じ――私と、同じ。
「お互い苦労するね」
「………………うん、ほんとに」
タオルに顔を埋めた。あれだけ、あれだけ泣いたのにまだ涙が出てくる。
言ってよかったじゃない、と私の中の私が言った気がした。きっと言った。心が叫んでいた。
「深くは聞かないから、ただ、レイカが話したかったら、なんでも話して。誰より、とはいかないけど、それなりに苦労したもの同士、分かる話しもあると思うし」
「ありがとう」
「俺こそ、話してくれてありがとう」
意識的にだろうか、無意識的にだろうか、分からないが、彼は次々と私がほしかった言葉をくれた。
「嬉しかった」
「そんなこと言うと、抱きしめちゃうよ」
彼らしい冗談に、思わず笑ってしまう。
「ほんとに嬉しかった」
タオルから顔を上げて、まっすぐ彼の瞳を見て言った。
「今まで誰にも言えなかった?」
「うん」
「俺も」ラインは微笑んだ。「俺も、誰にも言えなかった」
驚いた。まさか、彼の口からそんな言葉が出てくるなんて。
「……さっき、あんなに自然な流れで言ったのに?」
「賭けだったよ。めったにそんなことはしないけど……レイカなら、分かってくれるかもしれないって、直感的にね。なんとなくだけど、おんなじような悩みを抱えているかもしれないって思ったんだ」
言ってよかったよ。
彼は泣かなかったが、声が少しだけ震えていた。




