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  立ち位置と嫉妬(6)

「え……?」

「なんか顔が疲れてる。私は今日仕事が忙しくて、きっと麗華と話す時間もないし、ずっとそばに居るのは疲れるでしょ? 外で遊んできなよ」

「そんな、いいですよ」

「遊んできて」


 今度はやや、命令口調で彼女は言った。


「ここからあんまり離れていないところに、大きな通りがあって……駅の近く、分かるでしょ? そこに素敵なお店がいっぱいあるから、遊んできなよ、探検しておいでよ」


 彼女なりの気づかいだったのだと思う。それでも、と渋る私を、彼女はとうとう無理やり部屋から追い出した。私の手を引き、部屋のドアまで連れて行き、「行ってらっしゃい!」と素敵な笑顔と共に、突き飛ばされた。


「えー……」

 部屋から追い出された直後、いつも彼女が寝ているときに部屋の番をしているオールバックの男(彼の名は、ゴウと言った)がやってきた。


「おう、レイカ」

「ゴウさん……こんばんは」

 彼は、数少ない、私を同じ仕事仲間だと認めてくれている人の一人だった。彼は、私に嫌味を言ったりしたことはない。最初こそ無口だったが、そのうち少しずつ打ち解けてくれるようになった。なぜ彼は私のことを、妬んだり疎ましく思ったりしないのだろうか。彼に訊けるチャンスがあれば、訊いてみたいものだ。


「お嬢様から、今日はもう来てくれと言われた。まだ夜の七時だが。夕ご飯も取っていないだろう?」

「なんか……半ば強制的に追い出されたところでして」

「喧嘩でもしたのか?」

「いえ、休めと言われました」


 はは、とゴウさんは笑った。


「サキ様は、君の事を心配していたよ。最近疲れてるみたいだって」

「そうなんですか」

「サキ様が起きたら、基本君を起こしに行くだろう? でも、最近何度か、サキ様はこっそり起きて、朝一番に俺に『麗華はまだ寝かせておいてあげて』って言ってくることがあったんだ」

「……そうだったんですか」


「サキ様が寝た後に、トレーニングやらで君が頑張っていることを、サキ様はちゃんと知っていてくださっていたんだ」

「………………」

 そうでしたか、と言いたくても言えなかった。嬉しくて、うまく言葉が出てこなかったのだ。


「大通り、行き方は分かるだろ?」

「……はい」

「行っておいで、酒でも飲んでくるがいいさ」

「十六から、大丈夫ですもんね」

「べろんべろんに酔っぱらうなよ」

「大丈夫ですよ。じゃ、行ってきます」


 財布はいつもポケットに入れていた。他に持っていくべきものもないだろう。私はスーツのまま、階段を下りた。


「おい、その格好で行くのかよ?」

「他に服がありません」

 私は笑って、浮かれた気分で、外に出た。


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