立ち位置と嫉妬(2)
彼女と、それからいろいろな話をした。彼女はおしゃべりで、表情もくるくると変わった。いや、もしかしたら今まで喋る相手がいなくて寂しかったのかもしれない。彼女はいろいろなことを教えてくれた。
「お母さんはね、ファッションデザイナーをしているの」
「お父さんはね、映画を作ってる」
「二人の夢だったの、私が社長になったから、ふたりは好きなことができるって喜んでる。私にありがとうって、いつも言ってくれるの」
「私は嬉しいよ、でも時々、普通の生活をして見たいって思う。無理だってことも、知ってるけどね。仕事は楽しいし、大好きなの。だからいいんだけど。でもちょっと時々寂しくなる、だから、麗華がいてくれて本当に嬉しい」
「時々家族で旅行に行くの。麗華も一緒に行こうね」
「麗華は好きな人とかいる? なんだ、いないの……私ね、誰にかに恋をして見たい。まだ早いって思う? でもね、そういう映画や本を読むと、やっぱり憧れるの」
「私、ピアノが少しだけ弾けるの。麗華は? 弾けるの! じゃぁ今度聞かせてね」
「そうそう、好きな料理は? なんでも好きなの? 特に好きなのは? リンゴ! 私も好き! でもそれって料理じゃないよ、ははは。今度コックさんに、アップルパイを作ってもらうね」
「麗華の髪の毛の色、私好きだよ。私もだけど、黒っていいよね。この屋敷も黒いでしょ? 私が頼んだんだ、ふふ、ちょっと変わってるかもね」
「私の話、退屈じゃない? ほんと? ならよかった」
「音楽は聴く? 今度お気に入りを教えて。私、最近の曲はよく知らないの。古い歌なら少しは知ってるけどね」
「最初、何歳に見えた? 大人びてるってよく言われるの」
「最近外に出ていないの。出ても、お友達がいないから。今度遊ぼう?」
「勉強? 家庭教師が来てくれるの。お仕事で、学校に行く時間はなくなっちゃった」
「そうそう、麗華の過去の話は気にしないからね。お母さんが話しかけたんだけど、止めてって言ったの。麗華は麗華。過去は気にしないよ」
「話したかったら話してね。口は固いから、安心して」
「まだ、麗華のこと何も知らないね。好きなもの苦手なもの得意な物興味があるもの……そっか、私のも知らないよね。これから知っていくからいっか」
「ん? 名前の発音? あぁ、レイカってこの国の人は言うでしょ。私、この国の言葉と母国語、両方喋れるんだ。お母さんとお父さんは、結婚してからこっちに引っ越してきたの」
「名前の意味? あるある。私の名前は、花が咲く、って言う意味だよ。綺麗? ありがとう。麗華は、麗しい華って意味だよね。私たちの名前、合わせると綺麗だね。麗しい花が咲く、でしょ」
「これからもよろしくね、麗華」
彼女は話した。話し続けた。せき止めていた水があふれ出したように、彼女は次から次へと話題を持ってきた。
彼女は自分の仕事に熱心で、両親を愛し、たくさんのことに興味を持っていた。
「今日はもう寝るよ。食事はいらないや、お休み」
喋りつかれたのか、仕事に疲れたのか分からなかったが、十一時を過ぎたあたりで、彼女はパソコンの電源を落とし、その部屋の奥にあったベッドにダイブした。
「サキ様、歯磨きは……」
「んー……」
彼女は返事をすることなく、眠りについてしまった。
ぐう、とおなかが鳴る。食事は、彼女と取るように言われていたのだっけ。
私は、とりあえずその部屋を出ようとしたが、すぐに考えを改めた。彼女が寝ている間は他の人が警護すると言う事だったが、どこでどうやって頼めばいいのだろう。
身動きが取れないまま徹夜を考えた時、部屋のドアがノックされた。




