6 立ち位置と嫉妬(1)
「麗華って呼んでいい?」
「えぇ」
「私のこと、お嬢様って呼ぶのはやめて。サキって呼んでほしいの」
「では、サキ様で」
「サキじゃだめ?」
「すみません、サキ様と呼ばせてください」
「ちぇ、まぁいいや」
彼女は、キーボードをタッチしながら、私と話をした。自動的に手が動いているかのように、カタカタと凄い速さでキーボードをタッチしている。
部屋に荷物を置き、彼女の部屋に戻った時には、すでに奥様の姿はなくなっており、彼女はパソコンに向かっていた。私が部屋に入ると、彼女は嬉しそうに笑い、隣に座るように促した。
「麗華は、いくつ?」
「十六です」
「そうなんだ。じゃぁ私と七歳離れてるんだね。確かにお母さんが言うとおり、この家の中では麗華が最年少かもしれないけど、やっぱり同い年の友だちはできないのかなぁ」
そこで彼女ははっと手を止めた。私が首をかしげると、申し訳なさそうにこちらを向いて来た。
「ごめんね、今の、麗華が来てくれて嬉しくないわけじゃないんだよ」
そこには、心からの謝罪の色が見て取れた。私は大丈夫ですよ、と返した。
「ほんと?」
「本当です」
「よかった……私、何て言うか、気を配れないんだよね。言葉を選ぶのがへたって言うか。同い年の友だちができなくても、今は麗華が家に来てくれただけで本当に嬉しいんだよ」
「ありがとうございます」
「いっつもね、この部屋で一人だったの」
「そうなんですか……」
彼女は困ったように笑っていたが、その声はとても寂しそうだった。
「それは、寂しかったですよね」
「……分かった?」
そう訊かれてどきりとした。私の心が読まれたのかと思ったからだ。
「やっぱり、どうしても寂しいんだ。お母さんにも隠していたつもりだったんだけど、ばれていたのかなぁ」
と彼女は続けたので、どうでしょうねと返事をした。心臓が今さらになって大きな音をたてていた。




