対面(5)
「彼女はそう言う……プログラムとかを作製するのが得意で、経営するのも得意だったのよ」
私は驚きのあまり言葉を失いかけた。しかし、彼女は嘘をついていない。少女も隣でだまって聞いている。そこに、嘘がばれるのではといった不安な表情は読み取れない。
本当なのか?
この子が、社長?
「……失礼ですが、お嬢様はおいくつですか」
「九歳よ」
と、少女はにこりと微笑んだ。
九歳。思わずぎょっとしてしまった。奥様は、まるで「この子少しピアノが得意なの」とでも言うかのように話を進めたが、私も、ひとつの会社の跡取りになろうと懸命に勉強をした。だから分かる。この少女が会社を一つ経営しているとなると、もうそれは才能とかそんな次元のものではない。
思考が廻る。
彼女は社長、会社の規模も大きくなり、少女が社長だとばれた時にどうしようと両親も焦ったのだろう。こんなに誘拐しやすい社長は、他に居ないかもしれない。他にも問題はある、そうだ、彼女はきっと友だちがいない。学校に行く暇もないのだろう。彼女自身、フラストレーションがたまっているのかもしれない。彼女が仕事をしなくなったら? 会社は崩壊してしまうのだろう。
彼女の護衛をし、なおかつ彼女の友だちにもなれる人材。
それに選ばれたのが私、というわけか。
「それでね、社長になって会社を経営して……そうすると、もうこの家から離れることができなくなっちゃったのよ。お友達がいないの、まずはそれがかわいそうでね。この子の話し相手がいないの。この家で働いている人、一番若くて二十歳だから……最初は同い年の子供を雇えないかしら、って思ったんだけど、次に考えたのは彼女の安全。その子からもしこの子が社長だってばれたら? 今のご時世、怖い事件が多いでしょう。誘拐なんて事件が起きてしまったら、なんて考えると、もう怖くて……」
やはり予想通りだったな、と思いながら、私は相槌を打つ。
「それで、彼女の秘密を守って、警護もしてくれて、話し相手にもなってくれる人を探していたの。それに貴方が選ばれたってわけ。貴方の仕事はシンプルよ。咲の傍に居て、警護をする。話し相手にもなる。勉強を教えてあげてほしいとも思っているわ。成績優秀だったみたいだしね。部屋はこの部屋のすぐ隣にある部屋を一つ上げる。自由に使っていいわ。食事は彼女と一緒に取ってね」
「かしこまりました」
「じゃぁ、荷物を置いて、さっそく仕事を開始してちょうだい。あ、それと、トレーニングについては、またあとで連絡を入れるわ」
「はい」
私は立ち上がり、礼をした。
「奥様、お嬢様、これからよろしくお願い致します」
「こちらこそ」
と、奥様より早く返事をした少女は、私を見て本当に幸せそうにほほ笑んだのだった。




