対面(4)
「さて、麗華、いったい何が起きているのか分からない状態でしょう、ごめんなさいね」
「いえ……奥様」
ふふ、と彼女は笑うと、部屋にある大きな白いソファに腰かけた。その横に、小さな少女もちょこんと座る。
「どうぞ、かけて」
目の前にあるソファに、私は座った。机の上には、お茶とお菓子が用意されていた。
そこで、私は自分が今まで緊張のせいか部屋に何があるのかさえ見えていなかったことに気がついた。部屋には、黒い壁に逆らうように白い家具が取り揃えてあった。白いソファにはじまり、ソファに挟まれる形で置いてある白い机、まばゆい光を放つランプにシャンデリア……そして、奥様の後ろに見える、真っ白なパソコン。その景色は、圧倒的だった。どうして入ってきてすぐ気がつかなかったのだろう、と思うほどに。
部屋に入って右側の壁一面、パソコン機器で埋め尽くされていた。何台ものモニターには、なにやら難しそうな数字が映し出されている。大きな画面のものから、小さな画面の物まで様々で、電源はついていたりついていなかったりするようだった。キーボードが可愛らしい椅子を囲むように数台並んでいる――可愛らしい椅子?
その光景を見て、私ははっとなった。あの椅子、先ほど少女が座っていた椅子だ。まさか……この機械を、この少女は操作することができるのだろうか? この、年端もいかない少女が?
「びっくりしているみたいね」
奥様の言葉に、私ははっとした。思わず目の前にある景色に圧倒されていた。
「まぁ、説明はするわ。その前にね、少し謝らなくちゃいけないの。勝手ながら、あなたの身辺調査をさせていただいたわ」
「……はい」
唐突な切り出しに返答に困ったが、だまって頷いておくことにした。いったい私は何を調べられたのだ?
「本名月影麗華、お父様とお母様は異国からの移住者ね。三人兄弟の末っ子、七歳のころにロカソラーノの家に養子として引き取られる……そうね?」
「はい」
「その後、跡取りとして懸命に勉学に励むも、ロカソラーノ家に子供が生まれてしまった。貴方は居場所が無くなって、ここに来た。帰る場所は、ないわよね?」
「……はい」
「うん」
彼女は満足げに微笑むと、こんな話しをしてごめんなさいねと笑った。
「やっぱり好条件だわ。あなたは今日から、この家の家族みたいなものよ。貴方の仕事はね、彼女のお姉さん」
家族みたいなもの?
お姉さん?
奥様の表情からは、嘘をついているような気配や、騙して様子をうかがっているそぶりも見られなかった。いったい……どういうことだろう?
「私は長いこと、この子のボディガードを探していたの。彼女に歳が近くて、先生や、話し相手にもなってあげられるような人をね。やっと出会えたわ。でもね、いい?」
急に、彼女の顔が深刻な表情になった。
「今から話すことは他言無用。外に情報を漏らした瞬間、あなたの首は飛ぶわ。そのままの意味でね」
「はい」
「いい返事だわ。まずは、質問……サークルスターって、知っているかしら?」
「サークルスター……? ……記憶が間違っていなければ、私がいた家の、義理の父の会社もお世話になっていました」
「あら、ほんと」
そう言った彼女の顔は、嘘をついていた。アルドさんの会社も、サークルスターのサービスを使っていたことを、彼女は知っていた。嘘をついたことに、きっと深い意味はないだろう。探りをいれた、それぐらいだ。
「ネット上のサービス会社だったと記憶しています」
「そうね、無料で使えるメールサービスやファイル保管庫なんかを提供したり、ホームページを作成したり、ネット上のなんでも屋みたいなものね」
ん? と、ここで私は首をかしげそうになった。この人、実はあまりよく知らないな? 発言があやふやで、自信がないような表情をしている。旦那様が経営しているのだろうか。
内情がますます気になり、好奇心が芽生えたが、後々分かるようになるだろうと私はだまって話を聞き続けた。
「それで、その会社の社長を彼女がしているの」
さらっと、彼女は言った。




