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大事なことは大きく見やすく丁寧に!

自宅に辿りついた俺は玄関を開けるなり家に転がり込んだ。そしてそのまま居間にダッシュで向かう。


「ピィタ!! 大丈夫か!!」


いきなり大声でピィタを呼んだ為か、中でくつろいでいた面子がビクッと驚きの様子を見せる。いつものようにテーブルの上に座っているピィタはその中でも一番びっくりしたのか背中の翼を半分程開きかけていた。


「ピィタ! おまえなんともないか? 何か変なやつに襲われたりしなかったか?」


「ぴ、ぴぃいいいいい!!」


あ、とりあえずなんか元気そう。頭撫でてあげたらすごい喜んでるし異常はなさそうだな。よかった~……ベンダーさんの話聞いてたら思い当たる節がありすぎていやな予感がしたからもしかしたらって思って思わずとびだしてきちゃったけど、よくよく考えてみればそんないきなり何かあるわけないよな。


「どうしたんですかご主人様!? そんなに息まできらして……」


「いや、それがさ……えっと……ちょっとまって……あー、しんど……」


若くしてこの体力の衰えはまじでやばいな。日頃の怠惰な生活のつけがこういうところでまわってくるとは。本気で筋トレとかちょっとずつ始めようかな……。


「ほら主、水だ」


「あぁ……ありがとうセルツ」


コップに注がれた水を受け取り勢いよく飲み干すと先程よりは呼吸が安定してきた。よし、オッケー落ち着いてきた。


「ふぅ……さて、それじゃあ話そうか。俺がなんでこんなに慌てて家に帰ってきたのかを……」


それから俺は全員を椅子に座らせあの地下牢で聞いた話を説明した。この国に怪しい連中が入り込んでいるかもしれないこと。そしてその連中がもしかしたらピィタのことを狙っているかもしれないこと。一つ一つ整理しながら順々に話していくと皆は少しずつ深刻な顔つきになっていった。


「……というわけなんだ」


「なるほど……それで主は我々だけで帰路についている途中に何者かに襲い掛かられたりしていないかと不安になったわけだな」


「あぁ、だって聞く限りじゃあ何だかやばそうな連中みたいだったし何よりピィタに何かあったらって思ったらもういてもたってもいられなくって!! あ、もちろんフラウもセルツのことも心配してたんだからな」


そこんところ誤解されると困るのでちゃんと補足しておかなくちゃな。こういうところでフォローを入れられる男はもてるって偉い人が書いた本にも載ってたし。


「そうか……だが主よ。フラウはともかく私にはそのような心配はいらないと思うぞ」


「……え、なんで?」


心配はいらないって……なんでそんな冷めたことを言うのセルツ! お兄さんちょっと悲しくなっちゃうぞ! 


「なんでって……そもそも私は人間などよりも遥かに強いドラゴンなのだぞ。ピィタのような子供であるならともかく幾百年を生きてきた私がそんな輩に遅れをとるはずがないだろう。もし、仮に襲われそうになっていたとしても全員返り討ちにしてくれるわ」


「た、確かにセルツさんがいてくれたら頼もしいというか説得力はありますよね」


「…………」


あ…………あれ~?。そうか、言われてみれば俺がいなくても魔法が使える馬鹿でかいドラゴンというもはや何そのムリゲー的な最強の存在がすでに近くにおりましたやん。っていうことは俺があんなに必死こいてここまで走ってきた意味ってもはや皆無に等しいってことだよな? ……あ、駄目だ。一気に疲れがきた。いろんな意味で疲れました。


「ぴぃいいい……?」


「ピィタ、大丈夫だよ。俺がいなくてもセルツ先輩がお前を守ってくれるからな……」


「私はいつから主の先輩になったのだ?」


そういうところもさらりと流してくれないセルツ先輩まじ流石っす!!


「でも、実際セルツさんはそうなったらどうやってその人達を追い払おうと考えてたんですか? やっぱり魔法とかで何とかすることができるんでしょうか」


フラウからの質問にセルツはふむ……と考えこむ。それって考えるほど対処法があるってことなのか、それとも別に深くは考えていなかっただけなのかどっちなんだ。


「まぁ人間相手ならば一番いいのは……そうだな…………やはり、握り潰すことだろうか!」


「握り潰す!?」


何を!? 何処を!? そんなドヤ顔で楽しそうに言わないで!! 何その握りこぶしは!! いやぁっ!! 男でも女でも潰されちゃいけない場所があることをご存じないんですか先輩!! 特に男なんか再起不能になるどころか社会的にも復帰できなくなる可能性だってあるんですからね!!


「セルツ、落ち着け。駄目だから。握り潰しちゃ駄目だから。あの、もう……色々取り返しがつかなくなっちゃうから。な?」


いやそんな事言われても……見たいな顔しないのセルツ。よかったぁ……俺が辿り着く前に襲われてなくてよかったぁ……向こうが。

そう安堵しつつ冷や汗を拭うと突然ポケットの中に入れておいた疎通石が振動し始めた。慌てて取り出し石に軽く衝撃を与えると向こうからイホームの声が聞こえてくる。


「お兄ちゃん!! ねぇ大丈夫!?」


さっきあんなふうに飛び出してしまったからかイホームはかなり心配してくれたようだ。いきなり大きな声を出さないでほしかったけど、まぁしょうがないか。


「あぁ、ごめんごめん。さっきの話聞いてたらピィタのことが心配になっちゃってさ。思わず飛び出しちゃっただけだから」


「そうだったの? それならいいんだけど……で、ピィタちゃんは大丈夫? なんともなかった?」


「うん全然平気だった。というかむしろ最強のボディガードがついてたから俺が慌てる必要全くなかったわ」


そう言うとイホームは一瞬考え込んでいたがすぐにその正体を思い浮かべることができたようで納得の声をあげた。理解力が早くて助かるよ。


「あ、それはそうとお兄ちゃん。さっきのことなんだけど今からまたこっちに戻ってきてもらうのも面倒だから詳しいことは明日説明するね。で、もし明日なにも用事がないようであればちょっと協力してもらいたいことがあるから王宮の門の前に来てもらってもいいかな?」


「あー……特になんにもないはずだからいいよ。どれくらいに行けばいいんだ?」


それから俺はイホームに時間の指定を受け、明日の予定が決まることとなった。にしても協力することっていったいなんなんだろうか?


「ぴぃいい?」


はぁ……とりあえず今日はもう寝よう。俺は膝の上に乗っていたピィタを抱き上げるとそのままベッドの中へともぐっていった。





そして翌朝。約束の時間十分前程に指定の場所へとたどり着いた。今のところ誰も来てないようだけど……はてさて一体なにをするつもりなのか。そう思いながら大人しくその場で待つこと数分。俺は突然背後から誰かに肩を叩かれた。振り返ってみるとそこには灰色のフードを深くかぶった一人の男性が立っていた。


「ど、どちらさまですか?」


え? なにこのあからさまに怪しそうな人。っていうかいつの間に俺の後ろにいたんだよ。


「荒崎さん、俺です。ベンダーです」


「……えっ!? ベンダーさん! どうしてここに……」


「シッ! 荒崎さん俺の名前を大声で言わないでいただけますか」


驚きのあまり少し大きな声を出すとベンダーさんにそう注意されてしまった。おっと何か訳ありな状況みたいだな。それにしてもなんでそんな格好してるんだこの人は。前のときとはえらいちがいだぞ。


「ここにいるってことはベンダーさん地下牢から出せてもらえたんですか?」

 

まさかとは思うが脱獄してきたなんてことはないよな? ……いや正直この人ならできてしまうかもしれないからちょっと不安なんだけど。


「はい、今回の件で協力するということで一時的にですが……」


そうか、それが昨日イホームが言ってたことだったんだな。なるほど……でもそのイホームが辺りに見当たらないんだけど、どっかで監視でもしてるのか?


「そうだ荒崎さん。イホーム様がこれをあなたにと」


そう言って彼から差し出されたのは一通の手紙と何かの装置のようなもの。手紙はまだ分かるがこの装置は一体なんなんだ? 小さな黒い箱型のものに赤いボタンのようなものが取り付けられたそれを眺めながら俺は渡された手紙を開く。


‘お兄ちゃんへ’


‘今回お兄ちゃん達にはある調査をしてほしいと思います。話したとおり近頃不審な集団の目撃例がこの国で頻繁にあげられています。そして昨日のお兄ちゃんの反応とベンダー君の話を聞いてとある結論が有力ではないかと判断しました。そこで今から二人には一緒に街中を歩いてもらい何か異常がないか確かめてもらおうと思います。頑張って仲良くしっかりお願いね。’


‘イホームより’


「…………」


な、なんじゃこりゃ……。なにを可愛らしい丸文字で書いてんのかと思いきや、調査だの異常だの似つかわしくない単語ばかりいれやがって。というかこれってつまりはお前ら二人で街に変なやつがいないか確かめてね。ってことだよな。……完全に使われてるし言い方変えれば囮捜査みたいなもんじゃねぇのかこれ?


「あ、まだなんか書いてあった」


ぶつぶつと文句を心の中で言いながら、手紙を何の気なしに裏返すとそこにもなにか書いてあることに気がついた。


‘追伸’


‘一緒に渡されたと思うその装置ですが、それは今ベンダー君とララちゃんの首についてる装置と連動しています。もし彼が不審な行動や危害を加えるようなことがあればそのボタンを押してください。その瞬時に彼らには強烈な電流が流れ動きを止めることができると思います。使う機会は恐らくないと思いますが、念のため頭の隅にいれておいてね。’


「………………」


あ、あいつは……なんてもんつけさせそとるんじゃーーーー!!? なに強烈な電流って!! しかもララちゃんにもつけてるとか何考えてんの!? っていうかこんな大事なこと手紙の裏に書くんじゃねぇよ! 表に大きく色つきで書いておいてくれよ!! あぁ……どうしよ。めっちゃ手汗かいてきた。とんでもないもの持ってるよ俺!!


「ベンダーさんこれ!! やばいですよ!! つかなんでそんなもの付けちゃったんですか!!」


「自分はこの国にとって貴重な人材を命の危機にさらしてしまいました。それでもこの国の方達は俺にチャンスをくださった。今回のこの調査で俺にもう荒崎さんや街の人々に敵意や危害を加える意志がないと判断してもらえれば、この国に条件付きで住んでもいいと言ってくれたんです。だから俺はそんな慈悲深い皆様にこたえるためにこの装置を付けたんです」


えぇ……ちょっと待ってよ。このミッションってそんな重い内容も含まれてるの。やめてよそういう試練的な感じにするの。


「でもそれならララちゃんにまで付ける必要はなかったんじゃ」


「いえ、ララにも同じ装置がついていると分かっていれば俺は絶対に荒崎さんにそのボタンを押させるようなことはしないと約束ができます。イホーム様いわく自分がララのためにどれだけの意思で挑むかをより確かめることができるからということです」


「どれだけの意思ねぇ……」


いやそもそも押す気なんてこれっぽっちもないけどさ……はぁ~……なんかすごいやりずらくなった気がする。


「……まぁ分かりました。俺もベンダーさんを信じますから、何事もないようにさっさとこの依頼を終わらせちゃいましょう」


「はい、よろしくお願いします」


本当にだいじょうぶかなぁ……。そんな様々な不安要素を抱えつつ、俺達の調査が始まることとなったのだが……この時、俺達はまだ知らなかった。これがちょっとした波乱の幕開けになってしまうとは……。

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