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異世界での必需品

あの後、俺はとりあえずヴィオーラに事情を話し家まで来てもらっていた。思えば女の子を家にあげるのは生まれて初めてかもしれない。どうせなら異世界に行く前に体験しておきたかったけどなー……。

そんなこと考えながらヴィオーラをあのよく分からない物体の数々が置いてある部屋に案内した。


「うわぁ、すごいですね。こんなに色々たくさん」


ヴィオーラは目をキラキラさせながら謎の物体たちを見ている。俺には全く何が凄いんだか分からないんだが。

とりあえず一つずつ聞いていってみるしかないか。


「なぁ、ヴィオーラ。さっきも話したけど俺この辺のことには詳しくないんだ。だから色々教えて欲しいんだけどいいかな?」


「はい! お任せ下さい」


ヴィオーラは何故か張り切っているように返事をした。

それじゃあ、お言葉に甘えて……俺はとりあえず一番気になるこの袋に詰められた石のことから聞くことにした。


「じゃあまずは、この変な色の石のことについて教えてくれるかな」


そう聞くとヴィオーラは驚いた顔をして俺のことを見てきた。え、俺なんか変なこと言いましたか。


「え、荒崎さんが今まで住んでいたところって‘鉱属石’使ってないんですか?」


およよ、何か気になるフレーズが出てきたぞ。


「鉱属石?」


そう聞き返すとヴィオーラは本当に知らないんですね……と呟いた。どうやらこの石、この国では常識レベルで皆知っているようである。


「これを使わずに生活できるなんて荒崎さんの今まで住んでいたところはどんなところだったんですか?」


うーん、どうしよう。なんて答えるべきだろう。正直に「実は俺、この世界で生まれた人間じゃないんだ!」って言うか?

……駄目だ。頭おかしい奴だと思われそう。でもそれが事実だしなぁ。ちょっと誤魔化し気味に話すか。


「ほ、ほら世界って広いじゃん? 色んな国が世界中にはあるもんなんだよ」


「ほへー、そういうものなんですかねー……」


「そういうものなんだって! あ、それよりもこの石、何か色んな色が付いてるけどこれって何か意味があるの?」


無理矢理話題を戻した感があるが致し方ない。俺は頭の回転が早いほうではないんだからな。


「え、あ、はい、色によって石の使い方は異なります。例えば……」


そう言ってヴィオーラは袋の中から赤い色の付いた石を取り出した。


「この赤色の石は‘朱炎石’(しゅえんせき)と言います。主に熱を発したり火を起こしたりすることができます。色が濃いものほど強い火を起こすことができて、色が薄いものは火を起こすことはできませんが熱を発することができます」


ええ!! これそんなすごいものなのか! 火を起こすとか熱を発するとかどんな原理になってんだよ。


「す、すごいな……」


「それからこの青いのは‘氷結石’(ひょうけつせき)と言います。これは主に物を冷やしたりする際に使います。これも同じく色の薄い濃いによって効果が違いまして、濃いものは水の中に入れれば氷ができたりして、薄いものは食材を冷やして保管する時とかに使います」


これまたとんでもない物がありますな。今度は氷を作ることができる石か。うーん……ファンタジー。


「それとこの黄色い石は‘陽光石’(ようこうせき)と言います。これは明かりを発する石で他の二つと同じく色の薄い、濃いで明るさの大きさが変わります。濃い色の物は広い範囲を照らしたい時、薄い色のものは足元や夜道を照らしたい時に使います」


光ねぇ……。つまりこれは照明替わりってことか。家の中が暗いのは困るしこれも結構大事なものだな。

なるほど、なるほど。この石はこの世界で暮らしていくためには必需品だな。


「ところで効果は分かったんだけど、この石はどうやって使えばいいんだ?」


どういうものかが分かっても使い方が分からなければ意味がない。


「使い方は簡単ですよ。この石に強い衝撃を与えればいいんです。普通はそのための板があってそれで叩けばいいんですが、荒崎さんは多分まだその板を持ってないと思うので、今は使いたい場所に投げたりどこかに打ち付けたりすることで使えるはずですよ」


「結構簡単なんだな」


何かもっと扱いが難しいものだと思ってた。まぁ、簡単ならそれに越したことはないのだけど。


「とりあえずここにあるものはそういった効果があります」


「なるほど」


こんな石ころがねぇ……。何か今まで生きてきた世界とは全く違う技術でちょっと混乱しちゃいそうだな。慣れるしかないんだろうけど。


「鉱属石については以上になりますが、他にも何か聞きたいことはありますか?」


「そうだな、それじゃあ……」






その後もヴィオーラに色々教えてもらってしまった。これはこれから色々と大変そうだな……。

そんなヴィオーラの説明を必死に聞いているうちにいつの間にか外は薄暗くなっていた。


「荒崎さん、ちょうどいい機会ですから試しに陽光石を使ってみてはいかがですか?」


と、ヴィオーラが言うので試しにあの黄色い石、陽光石だっけ? を使ってみることにした。少し濃い色のついた手のひらサイズの石を取り出すと俺はそれを少し強めにテーブルに打ち付けてみた。すると、少しして石の表面が光りだしその光がどんどん強くなって部屋の中を照らすのには充分なほどの明かりが発せられた。


「おお、本当に光ってる」


何ていうんだろうか、この石が発する光は機械的な光ではなくこう……暖かみのある優しい感じがする光だった。何か見てて安心するっていうか。


「とりあえず使い方に関しては大丈夫ですよね。一応この石の大きさなら夜が明けるくらいまでは光り続けると思いますよ」


とりあえず、照明に関しては問題ないようだ。


「さてと、それじゃあ私もそろそろ帰らせていただきますね。もしまた何かわからないことがあったら気軽に聞いてください。あ、ちなみに私の家は街の入り口近くにある大きな風車のついた家です」


「ああ、あそこヴィオーラの家だったんだ」


目立ってたからよく覚えている。分かりやすいシンボルがあるのは大変助かるな。







「それじゃあまた。羽の傷、治してくれてありがとうございました」


「こっちこそいろいろ教えてくれてありがとう、助かったよ。気をつけて帰ってね」


小さな陽光石を持って玄関までヴィオーラを見送り俺達はそこで別れた。

ふぃ~……何か色々疲れたな。そう思いながら家の中に戻った時、俺はふと考えた。


「そういや俺、ヴィオーラに魔術師がなんだとかいうの聞くの忘れてたな」


何か結構大事そうなことだけど……まぁ、いいか。今度あった時に聞けばいいんだし。家の場所も教えてくれたもんな。

早くもこの世界で知り合いができた俺はそう呑気に考えたのだった。





「それよりも、腹がへったな~」


そういや俺、ここに来てから何も食ってない。そりゃ腹が減るのも当たり前である。


「…………」


一応家の中には食材がある。ヴィオーラに調理をする方法も教えてもらったので何か作ることもできる。

しかし、困ったことに俺は料理をしたことがない。だからこの食材達をどう使えばいいのかも分からない。


「ど、どうしよう……」


これを機に料理に挑戦してみるか? 嫌、でも今まで見たこともないような食材でいきなり料理はハードル高すぎるよな。それにもし失敗して貴重な食材を無駄にするのも気が引けるし。うーん……。


そう色々考えた結果俺が出した答えは、


「よし、寝るか!!」


早く寝てしまえば空腹なんて忘れるだろう。本当だったら風呂とかにも入ったほうがいいんだけど今日はもういい。そこまで汗もかいてないし、とりあえず寝よう

という訳で俺の慌ただしい異世界に来てからの一日目はこうして終了した。

うん、不安しかないよ……。


皆様、メリークルシミマス!!(血涙)

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