到……着……?
モートリアムを出発して少し経った頃、俺は馬車の中から空を見上げてみた。先程まで薄暗かった空が今はもう明るくなり、そこには見事なまでの青い空が広がっていた。雲一つないまさに快晴である。あぁ……平和、なんか日向ぼっこでもしながら暖かいお茶をゆっくりすすりたい。って、ちょっと年寄り臭いな今のは。でも、本当にいい天気だ。今のところ馬車も順調に進んでいるし、周りの空気もどこかのんびりしているように感じた。
「なぁイホーム、ここからしばらくはずっとこんな状態なのか?」
「うん、何もなければこのままずっと移動するだけだから、馬車に揺られて進むのみって感じかな」
何もなければか……頼むから何事も起きて欲しくは無いんだが、まぁこういうことにハプニングというのは常につきものだろう。思えば俺は長距離の移動というものにあまりいい思い出がない。
例えば家族で旅行に行ったとき、高速道路で渋滞に巻き込まれたりすると何故か俺だけ急にトイレに行きたくなったりした。その際、一度だけどうしても我慢できずに漏らしてしまった事もある。……あの時の家族からの哀れみと同情に満ちた視線には、流石にやりきれない想いが溢れ出しそうになったな。他にも学校の修学旅行では同じバスに乗っていたクラスメイトが体調を崩してしまい、その時保健委員をやっていた俺がひたすらその子を看病をしてあげる羽目になり、バス内レクリエイションやら綺麗な外の景色やらを楽しむ事なく終わったこともあったな。ちなみにその子は帰りも体調を崩しやがったため、再び俺が出動する羽目になってたりする。まぁ、今となってはどれもいい思い出…………いや、苦い思いでとなっているが今回もそんなことが起きないように只ひたすら願うのみである。
「ご主人様? 何だか遠い目をしていますが大丈夫ですか?」
「あぁいや、ちょっと昔のことを思い出しちゃってな」
俺はフラウの頭を撫でながらそう言った。言葉の響き的には格好良く聞こえるかもしれないが、思い出していたことはちっとも格好良くない。むしろ記憶の彼方へと捨て去ってしまいたいものだ。…………何だか自分で思ってて虚しくなってきたので、俺はこれ以上そのことについて考えるのをやめることにした。
「まぁ、まだまだ時間はかかるから皆好きなようにくつろいでくれてればいいよ。眠かったら寝ててもいいし、もしお腹とかすいたら簡単なものだけど食料もあるから遠慮なく言ってね」
「食い物もあるのか。何だか色々準備してもらっちゃって悪いな」
「気にしないで、そもそもこっちが頼んだ事なんだしこれくらいはしなくちゃね」
そんなイホームの発言に俺はふと思った。何だかんだで俺達って王宮に優遇というか気を使ってもらっているよな。いつぞやもお食事に誘ってもらったりとかしたし、いつの間にか関係がどんどん強くなっている気がする。まぁ、それもこれも全部この力のおかげなんだけどな。この力が無ければ俺は何もできない只の凡人だったわけだろうし。
……じゃあもし、この力がなかったら俺はどうなっていたのだろうか。今一度考えてみる。俺はあの森でファリアを救うこともなく、王宮とも何の関係も持つことはなかっただろう。恐らく今ここにいるフラウやピィタやセルツとも出会っていなかっただろう。それはそれで平穏そうな人生だな。どちらかといえば俺にはそっちのほうが合っているかもしれない。だけど、もしそうなっていたとしたら俺は誰も助けられなかっただろうし、助けてももらえなかっただろう。一人で四苦八苦して何もわからないままあの場所で細々と暮らしているに違いない。……そんな生活で俺今みたいにちゃんと生きていけるのかな? ……だーもう!! 考えたらこんなのきりがない。今更文句言ったってしょうがないんだしグダグダ思うのはもうやめにしよう。全くなんなんだ今日の俺は、さっきから面倒くさいぞ。さっさと気持ちを切り替えよう。
「だってさ、誰か腹減ってる人いるか?」
「私は大丈夫だ」
「私もまだあまり減っていませんね」
セルツとフラウはまだ大丈夫らしい。っていうかセルツに関しては昨日の朝から何も食べていないけど大丈夫なのか? ベイルが作り置きしてくれた夜飯も勧めてみたけどいらないって言うし、そういやピィタも昨日の夜飯は食べてなかったよな。やっぱり狩った獲物じゃないと口にしたりしないんだろうか。だとしたら聞くだけ無駄かもしれないが、念の為にピィタにも食べるかどうか確認しておくか。そう思い俺は膝の上で未だに寝息をたてて眠っているピィタを起こそうとした。が、いくら揺さぶっても叩いてみても起きる気配がない。頭をぷにぷにと触ってみても顎の下をコショコショとくすぐってみても体を軽く動かすだけである。だ、駄目だこいつ……熟睡している!! ドラゴンがここまで人間に心を許していいものなんだろうか。いや人懐っこいのはいいことなんだけさ、ここまで来ると本当に……本当に……可愛く見えてくるじゃねぇか。だって人の膝の上で安心した顔で眠ってるんですよ! こんなの見たら流石に俺だって心奪われそうになるわ!! いや分かってるよ? 相手はドラゴンだって分かってるよ? でもこれは、これは…………とにかく反則だと思うの!! ペットとか飼ったことなかったから周りの人に言われても良さがよく分からなかったけど、今ならわかる。これが癒しなんですね!!
「俺もまだいいやー。食べたくなったら言うよー」
「そう? っていうかどうしたのお兄ちゃん? 何だか顔がふにゃっとしてるよ?」
「え~? そんなことないよ~? 全然そんなことないよ~」
そんな俺の明らかな異変に皆、怪訝そうな顔で俺を見ていた。しかし、そんなの気にせずに俺はピィタの穏やかな寝顔を見つめ続けていた。
それから更に馬車が進んでいき、いつの間にかモートリアムの姿が見えなくなっていた頃、突然イホームがあっ! と声をあげた。その声にウトウトし始めていた意識が一気に戻される。ちなみに俺が連れてきた他の面子は皆ほとんどその声に反応することなく眠ってしまっていた。
「どうした急に大きな声出して」
「そういや、お兄ちゃんの偽名を考えていなかったと思って。向こうについてもそのままの名前を呼んでいたらバレちゃうじゃない?」
あぁ、なるほどな。確かに姿形を変えていても名前が同じなら怪しまれるのは当然だよな。……っていうかそれってもっと早く気づくべきことだったんじゃないか? いや、じゃないか? というかそうだよな。あの変声布とかローブの印象が強すぎて、それで満足しちゃってた。よかったイホームが気づいてくれて。
「確かにな、じゃあどうする? 何かいい名前とかあるのか?」
「え? 私が決めちゃっていいの?」
「うん、できればお願いしたいんだけど」
自分のネーミングセンスの無さは嫌というほど分かっているからな。自分に自分の偽名をつけるなんてことをしたら、どんな大惨事が待っていることか。想像しなくても分かるというもんだ。だからここはイホームのセンスに賭けてみようと思う。
「うーん……じゃあそうだなぁー……‘ジアート’とかどうかな?」
「‘ジアート’……ちなみにこの名前って何か意味とかあるのか?」
「えっとね、古代の言葉の意味で‘三日月’って意味だよ」
ほうほう三日月ねぇ。いいんじゃないかな、まさに俺にピッタリなスマートなネーミングだと思う。それに俺、蒼三日月の魔術師だしちょうどいいんじゃないかな? うん。…………いや分かってる、分かってるよ。俺にスマートさが欠片も無いことは分かってるんだよこんちくしょうめ!! ちょっとおしゃれっぽい名前にテンションが上がっちゃたんだよ! えぇ単純ですよ、単純ですとも! でも古代語とか何かいいじゃん? カタカナの名前とか外国人っぽい感じでさぁ。皆一度は自分の名前を外人っぽくアレンジしたりしたことあるでしょ? え? ない? ……そんな、もしかしてそういうことするの俺だけだったのか?
「どうかな? やっぱりもっと違うのがいい?」
「え? あぁいや、すごくいいと思う。うん、流石イホームだな。いいネーミングセンスだ」
「そ、そうかな? そんな風に言われるとちょっと照れちゃうよ」
イホームはポリポリと頭を掻いた。あ、まんざらでもない感じだなこりゃ。まぁイホームなりにもちゃんと考えてくれてるわけだし、文句を言うのはお門違いってもんだろう。
という訳で俺の新たな名前(正確にいえば偽名だが)は‘ジアート’ということになった。と言ってもこの名前を呼ぶのはついて来てくれている護衛の兵士の方々とイホームくらいなんだけどな。フラウは俺のことご主人様と呼ぶし、セルツは主、ピィタに関してはぴぃ! としか鳴かないからな。それに、この名前が必要になる場面は俺が蒼三日月の魔術師として他国に派遣される時だけだし、きっとそんなにないだろう。
「じゃあそういうことで、お願いねジアートさん」
「おう、了解」
その言葉を最後に俺は再びウトウトと意識を薄れさせながら、ゆっくりと目を閉じることになった。
それからどれくらいの時間が経ったのだろう。俺の意識は完全に暗闇に飲まれていたのだが、突然襲いかかってきた激しい揺れと誰かが俺を呼ぶ声が聞こえてきたような気がして、俺はゆっくりと目を覚ました。
「お兄ちゃん、起きて! 起きて!」
「んあ? なんだよイホーム。どうした?」
少しフラフラする頭を抱えながら俺は起き上がった。その時気がついたのだが、進んでいるはずの馬車がいつの間にか止まっていたのだ。他の皆も目を覚ましていて何やら変な空気が流れている。
「何かあったのか?」
「分からないけどもうすぐピレアムアに続く森の中に入るところで前の馬車が止められたみたいなんだ。様子を見に行ってみたら妖精族が二人ほどいて、兵士と何か話していたから今のうちにお兄ちゃんも変装をしておいて」
馬車が止められた? しかも妖精族ってことはピレアムアの人たちだよな。森の中に入る前ってことはやっぱり何かあるってことか? 俺は慌てて持ってきていた白いローブと変声布を身につけた。ここからは‘ジアート’として動かなければならない。気を引き締めていこう。
「おぉ、主よ何だその姿は」
「ご主人様、すごい格好ですね」
「ぴぃいい?」
あ、そういえばこいつらにこの姿を見せていなかったんだっけ。変身した俺を見て皆驚いているけど、ピィタはいまいちよく分かっていなさそうだった。
「ピィタ、俺だぞ。分かるか?」
試しに変声布をつけたまま喋ってみる。相変わらず違和感バリバリの渋いおじさん声がでてくるな。それを聞いたフラウとセルツはおぉ! と声をあげたがピィタはジッと俺の目を見つめると不意にくんくんと鼻を鳴らし始めた。
「ぴぃいい…………! ぴぃ! ぴぃいいい!!」
「どうやら主だと認識はできているみたいだな」
「そうか、よかった」
「声も別人ですし、姿も解りにくくなっているのにやっぱりすごいですね」
どうやらピィタにはこの程度の変装では簡単に見抜かれてしまうようだ。離れた場所からでも俺の居場所がわかるくらいだからな、まぁこれくらいじゃ問題にならないんだろうな。でも、逆に考えると俺はピィタから身を隠すことになったらどうすることもできないということではないだろうか。……かくれんぼをする時は俺とピィタは絶対にセットだな。うん。
そんなくだらないことを考えていたとき、一人の兵士がこちらに向かって走ってきていた。
「皆様、申し訳ありませんが一度馬車を降りていただけますでしょうか?」
「どうしたのだ? 何かあったのか?」
「いえ、それが……ピレアムアに行くのならば全員馬車を置いていけと言っておりまして」
置いていけって何でだ? 何かいけないことでもあるのか?
「……そうか、分かった。とりあえず皆一回馬車から降りてもらってもいいかな?」
イホームにそう言われて俺達は言われた通り外に降りることにした。周りの景色は今まで見たことのないものへと変わっており、鬱蒼と茂る木々に囲まれた大きな森が目の前には構えていた。まさに大自然。本当に空気の澄んだ場所というのはこういう所のことを言うのではないだろうか。それくらい涼やかで綺麗で心が落ち着くような空気がそこには満ち溢れていた。すごいな先程の眠気が一気に吹き飛ばされてしまった。
「私も一度話しを聞きたい、妖精族の方々はどこにいるんだ?」
「はっ! こちらでございます」
素早くキビキビした動きで兵はイホームを案内した。俺達もその後に続き、一緒に話しを聞いてみることにした。
「貴殿らが今回、歌姫様の治療にあたるという者たちか?」
そこにいたのは背中から虹色に光る透明な羽が四枚、上下に別れるようについている背格好の少し小さい男の人たちだった。見たこともない独特な形をした赤や青などの色とりどりの模様が付けられた、薄黄色の服をまるで着物のようにして着ている。手には持ち手が木で出来ており、先端が黒光りしている銛のような尖った刃物を握っていた。恐らくあれが彼らの使用する武器か何かなんだろう。
それにしても……あの羽すげぇな。小さくパタパタと動いているのだがその度に光が反射して色が次々に変わって見えていく。そのグラデーションはとても幻想的でまるで宝石を眺めているかのような気分になる。……いや、ぶっちゃけ宝石なんてよく見たことないしそういう宝石があるのかも知らないが、とにかくそれ程までの美しさがあるということで。
「はい、そちらの国の国王様から依頼されて参ったものです。本日こちらに向かわせていただくという連絡はしたはずなのですが」
「はい、そちらに関しては確かにお話を聞いております」
連絡はいっているのか。じゃあ何でこんなところで止められているんだ? そもそもこの二人は一体どうしてこんな場所にいたのだろうか。
「では、馬車を置いていけというのはどういうことなのでしょうか?」
「それは…………」
そう言い淀み二人は顔を見合わせた。今のアイコンタクトは何ですか? 何の確認だったんでしょうか?
「実は、今この先には結界を張り巡らせているのです」
「結界?」
「えぇ、我々の国の大聖樹様が加護をお授けにならなくなったのはご存知だと思います。それからというもの国の作物や環境は大きく変わってしまいました。そして、その影響は我らの知らないうちに周囲の森にまで及んでいたのです」
「影響というのは具体的にはどういうことが起こっているんでしょうか?」
「……森の生き物達に異変が起こり始めているんです」
異変……それは恐らくあのことだろう。おとなしいはずの動物たちが凶暴的になるというやつだ。
「この森は大聖樹様のお力を受け育っています。木々や小川、それに住み着く生き物すべてがそのお力に助けられて生きているのです。ですが、大聖樹様のお力が弱まっている今、森は徐々にですが死にかけてしまっています。そんな中我らが森の中を調査している時でした、木の中に見たこともない‘木の実’がなっているのを見つけたのです。それは禍々しく黒い色をしていて、様々な場所になっているのが発見されました。我々はそれが何なのか分からず、持ち帰って調べようとしました。ですがその時、その木の実を採取していた他の仲間が突然、森の生き物達に一斉に襲われてしまったのです。我々は何とかその仲間を救出することに成功しましたが、彼は羽を破られる重症を負い飛ぶことができなくなってしまいました」
「そんなことが……妖精族であるあなたたちを襲うなんて、これは相当な異変が起こっていますね」
「あぁ、あんなことが起きたのは生まれて初めてだった。今でもあの光景を思い出すだけで背筋が凍りそうになるよ」
今の彼の言いぶりだと妖精族を動物たちが襲うというのは普通はありえないことのようだな。それにしても今聞いた彼の話にはいくつか興味深い点があった。少しだけ考えてみよう。まず一つ目、森の中になっていたという黒い木の実のことだ。まぁ、恐らくだがこの木の実が動物たちの異変の原因なのだろうと思う。普通に考えればだがこの木の実を食べたかなんかしてそれがどういうプロセスなのかは分からないが凶暴化をさせているってとこだろう。それから森は大聖樹の力を受けているという点と知らぬ間になっていたという点。知らぬ間にということは最近までなかったということだ。つまり大聖樹が弱ってしまう前まではそんなものなかったってことなんだろう。とするとこの原因は大聖樹にある可能性は極めて高い。むしろ大聖樹が木の実を生み出しているとも考えられないか? 少なくとも否定はできない。何しろこの森では大聖樹が全てなのだから、その意思一つで森はいくらでも姿を変えてしまうだろう。
そしてもう一つは、採取していた仲間に‘一斉に’襲いかかったということ。何故彼だけに動物たちは襲いかかったのか。凶暴化し見境なく襲いかかるようなら他の調査していた妖精達にも被害は出ていたはずだ。なのに何故? ……もしかしたらだがその木の実にはいわゆる中毒性、もっと言えば麻薬的な何かが含まれているのかもしれない。一度体に入れれば止められなくなる。もっともっとと木の実を食べ尽くしていき、より一層中毒的な症状に陥っていく。そんな中その欲しているものが他の生き物に奪われそうになったらどうなるか……自我を失いし獣たちは邪魔者を排除しようとするだろう。その対象に運が悪いことに選ばれてしまったのが彼、ということはありえないだろうか? あくまで自分で考えた想像に過ぎないので本当にそうなのかは分からないが、中々筋は通っていると思う。そして、もし仮にそうだとしたら一番気になるのは一体その木の実がどれだけの範囲で分布されてしまっているのかだ。それが広ければ広いほど危険に近づいてしまう危険性は高くなっていくだろう。
「突然横からすまないが一つだけ教えて欲しいことがある。その、木の実というのはこの森全体になってしまっているのか?」
横からすまないとか普段だったら絶対に言わないような言い方で俺はそうたずねた。声が渋いから昔の刑事ドラマみたいになってるんだよなぁ。
「いや、全体ではないがこの結界を張り巡らせている内部の森には既にいくつもの木の実がなっているのが確認されている。実はこの結界には大聖樹様のお力の影響を遮断できるような特殊な技術が使われていてな、これ以上被害を拡大させないように急遽用いることになったのだ」
遮断できる特殊な技術ねぇ。そんなもの今はこういう事態だから使うことになっているのだろうが、普段は必要になることはあるのだろうか。恩恵をわざわざ拒絶するなんて、はっきり言って馬鹿としか思えないんだが。
「ということはこの結界の中はまさに危険地帯ということなんだな?」
「あぁその通りだ。だが、ピレアムアにたどり着くにはこの中をくぐっていかなくてはならない。一応連絡を受けた前日に道の近くに生えている木の実をある程度は除去しようとしたのだが、いくら取り除いてもすぐに生えてくるうえに我らの気配を感じ取った動物たちに邪魔をされ、ほとんど無意味だった」
「他に道があったりはしないのですか?」
「あるにはあるが……そこを通るのは更に危険で険しいものになるぞ。一番安全なルートはこのピレアムアに続く一本道を行くしかないな」
一本道か……両側が木々に挟まれているためどこから襲われてもおかしくない道だな。迷わず行けるのはありがたいが正直あまり歓迎できるものじゃない。そう考えた時、俺はふと思いついた。
「そういえば、あなたたちは飛ぶことができるのですよね? それならば私達を抱えて国まで飛んでいってもらうことなどはできないのですか?」
「……申し訳ないが私達が空を飛ぶのにも限界というものがある。この小さい彼女やそこの白い動物なら何とか運ぶことは出来るかもしれないが、他の人間の方々を持ち上げて飛ぶことは流石に無理だろうな」
「ち、小さ……」
イホームがその発言に頬を引きつらせる。そうかぁ、イホームくらいじゃないと無理ならその案は完全に没だな。となるとやっぱりこの森の中を突っ切っていくしかないのか。俺は不気味なほど静まり返った森を睨みつけ、心の中でため息をついた。
次回予告
ついに森の中へと足を踏み入れる荒崎達。周りに注意を払いつつ少しずつだが確実に進んでいく。だがしかし、そんな侵入者を森は歓迎してはくれなかった。
あ、ちなみに今ならピィタを膝に乗せてぷにぷにできるチケットを特別価格銀貨一枚でお譲りしております。ご希望の方はヒルグラウンドモートリアム支部までご連絡ください。詳しいご連絡先は、w……
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