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謁見の間にて

俺は彼女に連れられて豪華な王宮内を歩いていた。ちょっと言わせてもらいたい、いくら何でも広すぎだろ!! 何でこんなに天井が高いの!? 何でこんなに通路が長いの!? 何でこんなに中はキラキラしてるの!? 何でこんなry……。

そんな一般庶民には全く馴染みのない光景に俺はそわそわしていた。キョロキョロと視線を泳がし、置物などがあるところを通るときは壊してしまわないかとビクビクしていた。まさに挙動不審である。

そんな俺を見かねたのか彼女はこちらに振り返った。


「あの、大丈夫ですからね。そんなにビクビクされなくても普通にして頂ければ」


「は、はい!!」


うぅ……なんとも情けない。





しばらく進むと、一際豪華そうな扉の前にたどり着いた。枠は恐らく金のようなもので縁どられており、扉自体には綺麗な絵が描かれている。この絵、これはどこかの国だろうか? 街のようなものが描かれていた。


「こちらが謁見の間になります」


どうやら目的地についたみたいだ。ここに俺は今から入るらしい。どうしよう心臓がいたいんだが・・・・。まるでこれから面接でもするかのような気持ちだった。


「中にはすでにジャガル様とゼオラ様がいるはずです」


「も、もういるんですか!?」


心の準備が出来てないんですけど。


「大丈夫ですよ。肩の力を抜いてリラックスしてくださいね」


「は、はひ!」


噛んだ。もう嫌だ俺……。

そして、彼女はそれでは私はこれでと通路の奥に歩いて行こうとした。

その時、俺はふと思った。そういえば彼女の名前聞いてないし、俺も自己紹介してなかったな。


「あ、あの!」


そう思った俺は思わず彼女を呼び止めた。これも何かの縁なんだし名前くらいは知っておきたい。もしかしたらこれから何かとお世話になるかもだしな。


「はい?」


「お、お名前を聞いてなかったなと思いまして……あ、自分は荒崎 達也と言います」


そう言うと彼女は驚いたような顔になった。何だ? 俺の名前そんなに変だったのか?


「も、申し訳ありません!! 私ったら自己紹介もせずに!」


ペコペコと頭を下げる彼女。どうやら自分が自己紹介を忘れていた事に驚いていたようだ。しっかりした人に見えていたが、案外そうでもないのかもしれない。


「い、いえいえ。こちらも言ってなかったし気にしないでください」


「す、すいません。あ、私の名前は‘イリヤ カーミュ’と申します。これからよろしくお願いします」


「こ、こちらこそ」


お互いに頭を下げる。こんなことしてるとまるで日本にいるみたいな気持ちになった。謁見の間の前で何をやっているんだろうか俺は。


「そ、それでは私行きますね。また何かありましたら気軽にお声がけください」


そう言ってイリヤさんは今度こそ通路の奥に行ってしまった。

ふぅ……何だか今のやり取りで少しだけ緊張がほぐれた気がする。

そう思いながら俺は再び扉と向かい合う。よし! それじゃあ、行きますか。

俺は扉の取っ手に手をかけそのまま押し開けてみた。豪華な見た目とは裏腹に扉はすんなりと開いた。

ゆっくりと中に入っていき後ろ手で扉を丁寧に閉めた。

中は床に赤い絨毯が敷き詰められており、横に並んでいる窓は全て綺麗なスタンドガラスで出来ている。天井にはシャンデリアのようなでかい照明がぶら下がっていた。

あいも変わらず豪華だねぇ。そうキョロキョロしていると、部屋の先に誰かが座っているのが見えた。

あの人たちが王様と妃様なのかな。

ドキドキしながらゆっくりと部屋の中を歩いていく。


「あ、あのぉ……」


「おぉ、よくぞお越しくださった」


ご立派なヒゲを生やした何ともダンディな男の人がそう言った。ガッチリとした体、それにタキシードのようなビシッとした黒い服装。背中にはお約束の赤いマントのような物を着ていた。うわぁ、イケメンや……。


「あなたがファリアを助けてくださった方ですか?」


その隣にいた金色の長い髪の美人な女性がそう聞いてきた。その人は水色の控えめで綺麗なドレスを着ていた。大きな眼、綺麗な肌、それから整った顔立ち。うーん……美人さんだ。でも、何だろうあの顔どっかで見た気がするな。

…………まぁ、いいか。


「は、はいそうです。あ、俺の名前は荒崎 達也といいます」


そう言うと二人共座っていた椅子から立ち上がった。立ち上がっただけなのにどうしてこんなにも絵になるだろうこの人達は。


「私の名前はジャガル アディエマス。この国の王を勤めている。この度は我が娘を救ってくださり誠に感謝致します」


「私の名前はゼオラ アディエマス。ジャガル様の妻でございます。あなたのおかげで娘の命は救われました。本当にありがとうございます」


そう自己紹介をされ、二人から深々とお辞儀をされてしまった。王様と妃様にお辞儀されるなんて普通の一般人には先ず有り得ないことだ。

だから俺は一瞬何をされているのか分からずに硬直した。

…………って硬直している場合じゃねぇ!!


「い、いえいえいえいえいえいえいえいえそんな大したことしてませんから!! 頭を上げてくださいよ!!」


慌てて彼らにそうお願いした。俺はそんな頭を下げられるような人間じゃないんだ。確かに王女様は助けたかもしれないけどさ。


「いいえ、あなたはこの国の王女であり私たちの娘であるファリアを救ってくださったのです。これくらいしなくては」


「い、いや……はぁ……」


これが国のトップに立つ人間の意識というやつなのだろうか。何というか心が広いねぇ・・・・。

そう思っていると、どこからともなく一人の男性が椅子を持ってこちらにやってきた。そして、俺の後ろに椅子を綺麗に置くとまたさっと何処かへ走り去ってしまった。


「このような質素な椅子で申し訳ないがどうぞお座りいただきたい」


質素って言ったかあの人? その割には柔らかそうなクッションが敷いてあるし、背もたれにも豪華そうな刺繍がされているんだが。


「し、失礼します」


お言葉に甘えて座らせてもらうと、その椅子はフカフカで座り心地もよく背もたれも柔らかい素材で出来ていて素晴らしい触り心地だった。


「そ、それで今日は俺を何のためにここに連れてこられたのでしょうか?」


そう言うと二人は顔を見合わせコクりとお互いに頷きあった。なに、そのアイコンタクト。


「実は、荒崎さん。あなたにいくつかお聞きしたいことがあるんだ」


「聞きたいことですか?」


王様が聞きたいことって一体何だろうか。


「ああ、君がファリアをここまで連れてきてくれたと聞いたがファリアは一体どこにいたんだ?」


ああ、なるほど。そういうことね。確かに行方不明ともなればそれを聞きたくもなるよな。


「えーと、この国の近くに森があるのを知ってますか?」


「森というとあの北の方にある森のことですか?」


「多分そうです。そこに彼女は倒れてました」


すると、二人は森か……と呟いた。あの森には何かあるのだろうか?


「それで、倒れているファリアをあなたが発見したということですね」


「はい」


その通りである。あの時はまさか人間だとは思わなかったけど。しかもそれが王女様だなんてもっと思わなかった。


「ファリアが倒れていた時はどんな状況だったのかね」


状況ねぇ。確か、えーと。


「彼女は草むらに倒れてて、黒い布のようなものを被ってたんです。それでなんだろうと思ってめくってみたら人だったんで驚いたんです。息も苦しそうにしていたし、何だか肌も黒く変色していましたね」


それを聞いた二人は目を丸くして驚いていた。

俺、何か変なこと言ったかな?


「あ、あなたがファリアを見つけた時まだ病状は残っていたということ!?」


「びょ、病状ですか?」


もしかしてあの黒く変色してた肌のことかな? あれって病気だったんだ。


「‘黒死の病’というのを聞いたことがないかね?」


「黒死の病?」


なんだそれ、初めて聞いたぞ。それが彼女のかかっていた病気の名前なんだろうか。


「とても少ない確率でかかってしまう病でなその分珍しいものなのだ。肌が徐々に黒く変色していき、全身が黒く染まった時に命を落とすと言われているものなんだ。一度かかると絶対に治らないといわれているはずなのだが……」


ほうほう、そんな病がこの世界にはあるのか。俺が元いた世界で言うとなんだろうか?


「しかし、あなたがファリアを連れてきてくれたときファリアに現れていたその症状は綺麗に消えていたわ。どれだけの医者や魔術師が治療を施しても治らなかったあの黒く変色した肌が綺麗な白い肌に変わっていたわ」


医者はともかく魔術師なんているのか!! もしかしてこの世界には魔法とか言われる存在があったりするんだろうか。

もしそうなのだとしたらこの俺の力も魔法みたいなものなんだろうな。


「それは、俺が治したからですよ」


俺はついそう口にしてしまった。すると、二人の目の色が一瞬にして変わり始めた。


「「治した!?」」


大声を出し、椅子から半分立ち上がりそうになる二人。かなり驚いている様子だ。


「は、はい。多分俺が治しました」


二人は今日何回目かの目配せをして俺に向き直った。だから、そのアイコンタクトはなんなんだ。


「荒崎さん、それは一体どうやっ……」


ジャガルさんがそう言おうとしたとき急に後ろの扉が勢いよく開いた。

振り返ってみると、そこには息を切らせているイリヤさんがいた。


「ジャガル様! ゼオラ様! ファリア様が目を覚まされました!!」


どうやら王女様が目を覚ましたみたいだ。よかった、目を覚ましたんだ。


「それは本当か!! イリヤ」


「はい、たった今目を覚まされました!!」


二人共椅子から立ち上がり扉の方に慌てるように歩いていく。慌てるようにといったがそれでも彼らの歩き方にはどこか気品のようなものが漂っている。

格の違いってやつですかねぇ……。

二人が扉をくぐろうとした時、


「荒崎さんも一緒に来ていただきたい。イリヤ、ファリアのいる部屋までご案内して差し上げてくれ」


そうジャガルさんがイリヤさんに言った。イリヤさんはかしこまりましたと、了承して二人はそのまま行ってしまった。


「荒崎さん、お手数をお掛けしますがご一緒に来ていただいてよろしいですか?」


「は、はい。わかりました」


俺も椅子から立ち上がるとイリヤさんに案内され王女様がいる部屋まで向かうことにした。

12月15日、本文修正しました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 王様に名前を名乗ってますが 王様達の名前が欧州風の性が後に来る様だが そうなると主人公の名前も間違えて荒崎 達也の荒崎の方が名で達也を性と勘違いしそう そして王様が荒崎と呼んでますがそうなる…
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