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純粋種のドラゴン

え、えーと……これはどういうことだ? 何が起こってるんだ? とりあえず俺は一旦頭を抱え、それから状況を整理することにした。えっと、まずここに連れてこられました。ドラゴン喋りだしました。光りました。目の前に女の人いました。はい、今ここ。


「…………駄目だ、意味がわかんねぇ!!」


「何が分からんのだ?」


俺が一人困惑して色々考えているところにキョトンとした顔でこの女性はそう話しかけてきた。先程は呆気にとられていたので気づかなかったが、よく見てみれば顔立ちは整っていて、若干つり目気味で綺麗な緑色の目が印象的なかなりの美人さんだった。体型も適度に引き締められており、そのうえこれでもかと強調された女性の象徴が俺の目をひきつけた。うわぁ……でけぇ……。……って、何だかこれじゃあ俺が変態みたいだ。でも、しょうがないのである。何故ならそれは、彼女の格好に問題があるからだ。まるで赤いウロコのようなものに最低限隠れてなくてはいけない箇所が覆われているだけのかなり露出の激しい格好を彼女はしていたのだ。これが日本なら確実におまわりさんのご厄介になるレベルだ。そんな格好をした女性がいればどうしたって変な場所に目がいってしまう。俺だって男なんだ。一部の特殊な部類を除くが男なんてそんなものである。……と信じたい。


「あ、あの……あなたは?」


「あなたは? 何を言っておる。先程から目の前にずっといたであろうが」


ずっといた? 先程まで俺の目の前にいたのはあの馬鹿でかいドラゴンだぞ。そう思った時、俺はふとある考えに至った。もしかして……もしかするのか。いや、でも逆にそうならば今のこの状況の説明がつく。ドラゴンが消えてこの女の人が目の前にいた。ということは考えられる可能性はただ一つ。


「もしかして、さっきのドラゴンなのか?」


俺が恐る恐る聞くと彼女は口元をニィッと歪ませた。


「そうじゃ、私はここまであなたを連れてきたドラゴンじゃ。よろしくの」


……マジですか。っていうかあいつ女だったのかよ。あの強面のドラゴンがこんな美人さんに変身するなんて誰が予想できただろうか。多分、普通なら誰も予想ができないだろう。でも、俺はこのドラゴンという種族をよく知らない。もしかしたら、この類の生き物はこういった能力が使えて当たり前なのかもしれない。なんせ魔法が存在する世界だ。ありえなくはないだろう。


「はぁ……よろしくお願いします。……ドラゴンって人間みたいな姿になることもできるんですね」


俺は軽く会釈をした後、さりげなくそう訪ねてみた。


「うぬ、私はこの姿に変身することはできる。だが、同じ種族の中で人の姿に変われる者は恐らくいないであろう」


「そうなんですか?」


「あぁ、なんせ奴らは魔力をさほど持っていないからな。私は生まれた時から特殊な個体だったようでな。他の仲間たちよりも数倍、魔力をこの体の中に宿していたんだ」


「魔力を宿してるってことは、もしかしてその姿には魔法とかでなってるんですか?」


「魔法とは違うかもしれんが魔力を使っているのは確かだな」


なるほどね。こんなことができるのは彼女だけってことか。どうやら、どんな生き物にもイレギュラーは存在するものらしい。特殊な個体……ねぇ。


「ってことはその言葉を喋れるのも魔力の力なんですか?」


「いや、これはそうじゃない。私が昔出会った人間に教えてもらったのだ」


「お、教わったんですか」


あのドラゴンに人間の言葉を教えるなんて……なんとも肝が座った人物がいたらしい。普通あんな姿を見たら誰だって一目散に逃げ出しそうなもんだが。


「そのおかげで今こうしてあなたと普通に話すこともできる。こんなことができるのも種族の中では私だけだろうな。そもそも本来なら必要がないものだしな」


「そ、そうですか」


ですよねーー。普通話したいとも思わないですし。その姿ならともかくだが。そう思った時、俺はふと思った。


「あ、じゃあもしかしてコイツも人の姿に変身したりとかできるんでしょうか」


先程からずっと俺の体に擦り寄ってくるコイツも人の姿になれたりするんだろうか? っていうかいい加減離れろ! 俺はコイツの体を再び引き剥がそうとした。


「いや、その子は魔力は持っているがまだ自分で制御することができないんだ。だから人の姿に変身することはできない。それからその子にはまだ人間の言葉を教えていないから喋ることもできないぞ」


「そうなんです……かっ!!」


「ぴぃぃい!! ぴぃ!」


だああああああ!! 暑苦しい! せめてなんて言っているのか分かれば良かったんだが。


「ふふふ、本当に懐かれているな。まぁ、無理もないか。自分の命を助けてくれたのだからな」


俺がミニドラゴンと格闘しているのを見て彼女はそう呟いた。そういやさっき確認してきたもんな。俺がコイツを助けたのかって。多分それが原因でこんなところまで連れてこられたんだろう。それは分かる。だが、問題は……


「あの、ところで俺はこれからどうなるんでしょうか?」


そう、そこだ。こんなところまで連れてきたのだから何かしら目的があるはずだ。


「おぉ、そうだな。あなたをここに連れてきた目的は二つ。まず一つ目はあなたにお礼をしようと思ったからだ。受けた恩は返すのが礼儀だからな。そして、もう一つは……」


「もう一つは?」


「私達をあなたの傍にいさせていただけないだろうか」


「…………」


は? 傍にいさせていただけないだろうか? 何だそれ、どういうこと? まさかのお願いに俺は混乱した。


「駄目だろうか?」


「いや、駄目とかそう言うのの前に説明してくれないですか」


色々と訳が分からなかった。どうして彼女がそんなお願いをしたのかも、なんでそんな考えに至ったのかも。だから俺はとりあえず説明してくれるように頼んだ。








「私達ドラゴンという種族は遥か昔には空や陸を覆い尽くすほど大勢の種類と数がいたのだが、今ではその数も減り中には完全に滅んでしまった種族もいる。その中でも私達‘純粋種’と人間達に呼ばれている種族は恐らくもうこの世界に数えられるほどしかいないだろう。まぁ、我々の種族は集団で生活をすることがほとんどないのでどうかは分からないがな。しかし、それゆえに一つ一つの個体は大変貴重なのだ」


「な、なるほど」


「さっきも言ったように私達の種族は数が少ない。だから人前に姿をあらわすなんてことは滅多にないんだ。これがどういうことか分かるか?」


どういうことかって言われてもねぇ……。彼女達は貴重な種族で人前にあらわれることがほとんどない。ってことはだ……


「あなたたちのことについて俺達人間はよく知らないってことですか」


「そういうことだ。人間達は私達のことについて知っていることがほとんどない筈だ。ましてや治療方法など知るはずもないだろう。それなのにあなたはこの子を治した。一体どうやったかは知らないがこれは紛れもない事実だ」


「……」


確かにコイツを治したのは俺だ。けれど俺だって治療方法を知っているわけではない。むしろそういった知識はまったくもって無いと言っていいだろう。


「確かに俺はコイツの怪我を治しました。でも、俺だってあなたたちドラゴンのことについて知ってることなんて全くないですよ」


「ならば、一体どうやってこの子の怪我を治したのだ!?」


彼女は何故か興奮気味に俺の方へと体を詰め寄せてきた。俺はそれに思わずたじろぐ。


「そ、それを説明する前に俺も一つ教えて欲しいことがあるんですけど。なんでコイツはあの時、怪我だらけであんな場所に倒れていたんでしょうか?」


「なんで? と言われてもな。一緒に移動していた群れとはぐれてしまって、その時に遭遇した他の生き物に襲われたとこの子は言っていたが」


言っていたが? 何だか他人行儀というか……まるで自分の子じゃないみたいな言い方だな。


「もしかしてコイツってあなたの子供とかじゃないんですか?」


そう聞くと彼女は目を見開き驚いたような顔をした。


「私の子供? まさか、そんなわけ無いだろう。よく見てくれ、私と全然似てないだろう?」


「は、はぁ……」


いや、わかんねぇし!! そもそもあんたは人間の姿になってるから比べようがないっつの。いやまぁドラゴンの姿でも分からんけど。


「じゃあどうやってコイツと一緒に俺のところに来たんですか?」


「それはだな、たまたま私があの近くを飛んでいた時にこの子の鳴き声が突然聞こえてきたんだよ。それで何事かと思ってその声がした方に近づいて行ってみたらこちらに向かってこの子が飛んできたんだ。それでその時に話を聞いてみたら自分が群れとはぐれてしまったことと、怪我を治してくれた人間がいるということを私に教えてくれたのだ。私達の種族を治せる人間なんて聞いたことがなかったから私も興味をもってな」


「なるほど、それで俺のところに来たと」


あんなに叫んだり喚いたりしたのに、興味をもたれただけでアイキャンフラーーイ!! したのか俺は。何か色々損しているきがする。


「それと、ついでに聞いちゃいますけどさっき言ってた俺の傍にいさせてくださいってのは何ですか?」


「そのままの意味だ。もしあなたが本当に私達のことを治せる術を持っているのならば、下手に動き回って生活しているよりもあなたの近くで生活したほうが安心できるだろう」


「あ~……いや、まぁそうですけど……」


何ていうか結構思い切った結論だなぁ。生活のリズムとかそういうのは案外アバウトなのかもな。


「もちろんタダでいさせてくれという訳ではないぞ。きちんとお礼はするしあなたの生活の補佐だってしよう。こう見えても私は長生きしているからな大抵のことなら何でも手伝うことができるぞ!」


うわー……なんか知らんけど張り切っちゃってるよこのドラゴン。目が滅茶苦茶キラキラ光ってるんですけど。


「どうだ? 私達を傍においておきたくなったか?」


期待を込めた瞳を輝かせながら近づいてくる彼女。だが、そんなこと急にいわれてもすぐには決められるはずがない。なので俺はとりあえず一つため息をついてから、一言彼女にこう言った。


「とりあえずすぐには決められないんで一回、家に帰してもらっていいですか?」


冷静に対処した結果俺はまず帰宅させてもらうことを提案したのだった。

次回予告


ドラゴン達に共同生活を迫られる荒崎。


「ぴぃぃぃーーー!!」


突然やってきた究極の決断に彼は一体どんな答えを出すのか。


「ぴぃ! ぴぃいい!!」


その結末は次回をま……


「ぴぃいいいいいい!!」


だぁーーー!! うるせぇええ!!


「ぴぃ?」


次回は金曜日に更新予定です。

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