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王宮にご招待

お、お久しぶりです。

あの後、俺達とベイルさん達は一旦解散することになった。というのもせっかく妹さんの病気が治ったので、今日は家族みずいらずで過ごした方がいいだろうと俺が言ったからだ。料理は明日またヒルグラウンドに集合してから家に来て作ってもらうことにした。

エストニアさんも少しの間、様子を見ていたいと言ったのでそれじゃあここで別れようということにした。




という訳で俺とフラウはまた中心街につながる大通りへと戻ってきていた。


「さてと、これからどうしますかね」


と言っても、もう陽は傾き始め家を出てから大分時間が経ってしまっていた。

特にすることもないから良かったけどまさかこんな事に巻き込まれるとは思ってなかったもんな。いやでも自分から関わったんだから巻き込まれるはおかしいのか?

そんなことを考えながらとりあえず歩き出していた時だった。


「荒崎さーーーーん!!」


「ん?」


どこからともなく俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。辺りをきょろきょろと見回すと大通りの先から何かがこっちに向かってやってくるのが分かった。


「あれは……」


もしかして……馬? しかも二頭。黒色と茶色の馬がこちらに向かって来ている。そしてその馬の後ろには四つの赤い車輪と、大きな窓のついた小さい箱型の部屋のような物がくっついていた。あの見た目……昔何かの映画で見たことある。いわゆる馬車ってやつだろうか。

道行く人の脇をうまい具合にすり抜けながらそれはどんどんこちらに近づいてきた。


「な、何かこっち来てるけど……ってあれ?」


今気づいたけどあの馬の後ろに座ってるのってイリヤさんじゃないか?


「荒崎さーーーん!」


やっぱりそうだ。こちらに向かって手を振ってきている。何やってんだあの人。

そして、俺達の目の前で馬を止めると乗っていたベンチのような椅子から降りてこちらにやって来た。


「荒崎さん、こちらにいらしたんですね。探しましたよ」


「探してたって、どうしたんですか? 俺に何か用事でも?」


「はい。実は今朝、荒崎さんのお家に伺ったとき言い忘れていた事がありまして」


言い忘れたこと? 何だろうか。


「実は本日、ファリア様が荒崎さんとご一緒にお夕食をいただきたいとおっしゃられておりまして、是非とも王宮にご招待させていただきたいと」


「はぁ……夕食をねぇ」


これはこれは何ともありがたいお誘いをいただいちゃったよ。しかも、王宮に招待なんて中々すごい事なんじゃないか。王族が食べる料理ってことはさぞかし美味しいんだろうし、ここで断って自宅で自分が作ったまずい飯を食うなんて損以外の何物でもない。


「いかがでしょうか?」


「そうですね、せっかく招待していただいたんだし是非ともお願いします。あ、それと一つだけお願いがあるんですけど、フラウも一緒に連れて行っていいですかね?」


「フラウちゃんもですか?」


「はい、出来れば一緒がいいんですけど……。ダメですかね?」


イリヤさんは顎に手を当て少し考え込んだ。ここで断られちゃうと俺も少し悩んじゃうんだけどな。


「そうですね。ファリア様は動物がお好きでいらっしゃいますし荒崎さんのお連れ様と言えば問題ないと思います」


「それじゃあ!」


「はい、ご一緒にご招待させていただきます」


はぁ~よかった。とりあえず二人共無事に招待してもらえることになった。



その後、俺とフラウはイリヤさんが運転する馬車に乗せられて王宮に向かうことになった。ちなみに馬車の乗車部分は、中に深紅色のふかふかな座席があって乗り心地は中々にいいものだった。


「馬車って初めて乗ったけど結構いいもんだな」


「そうですね、私も初めて乗りました」


フラウはどことなく落ち着かないようで先程から中でずっとキョロキョロと視線を彷徨わせていた。

まぁそうだよな。ここで私は乗ったことありますなんて言われたらますますお前何者だよ!! ってなるところだよ。

それに、俺だって何かよく分からないけどテンション上がってきてるし落ち着けない気持ちもよく分かる。こんなこと滅多にない貴重な体験だろうしな。


そんなこんなで二人して微妙にそわそわした空気を出しながら王宮に到着した。


「何度見てもでけぇなぁここは……」


こんな場所で今から夕飯を食べるってんだからホントとんでもない話だよな。人生何が起こるか分からないって言うけどずばりこういうことだよな、うんうん。勝手に一人で何かを悟ったような気分になりながら、俺はイリヤさんに案内されひとまず客室で待機することになった。客室だっていうのにこの華やかさ。真っ赤な絨毯。ふかふかした白いソファ。煌びやかな銀でできたテーブルに椅子。さっきまでいたベイルさんの家とは正反対だな。


「申し訳ございません。ファリア様のお召し物の準備が出来ましたらまたお伺いいたしますのでこちらで少々お待ちくださいませ」


「わ、分かりました」


え? 飯食うだけなのに着るものの準備とかいるの? 俺、超普段着なんですけど……大丈夫なんだろうか。いや、待て待て待て待て、落ち着け俺。イリヤさんだってここに来るまでに何も言わなかったじゃないか。大丈夫、だいじょ……はっ!! まさか、俺気を使われて何も言われなかっただけ? いやでも招待したのは向こうなんだし……。


「あの……ご主人様? 先程からウロウロされていますがどうかなされたのですか?」


「え? い、いや何でもないよ。大丈夫大丈夫。うん」


そうだよ、飯食うだけなんだし何も心配することはない。いつも通りにしてればそれでいいんだ。

全く俺は今更何を緊張してるんだか。

そう思った時だった、外からコンコンと扉を軽くノックする音が聞こえてきた。


「え、嘘!? もう終わったの!」


まだ心の準備が出来てないんですけどー!! そして扉がゆっくりと開いた。

……開いたのだが、そこにいたのはイリヤさんの姿ではなく、


「……え?」


雪のように真っ白い長髪と、今まで見たことのない綺麗な紫色の瞳をした…………女の子だった。

小学校低学年位の小さな身長で真っ白いローブのような物を着ていて、背中に大きな黒くて四角いバックを背負っている。


「え、ええと?」


このお方は一体どちら様ですか? 


「お兄ちゃん達、誰?」


そう可愛らしい声を出しながら首を傾げられてしまう。 いや、それはむしろこっちが聞きたいんだけど。 

でも、とりあえずここにいるってことはこの城の関係者だよな多分。


「うんと今日ここで夕食を食べないかって招待された者です。あ、こっちは俺の連れでフラウって言います。そんで俺の名前は荒崎 達也って言います」


念のため下手な態度をとらないように一応敬語っぽく喋ってみたが、何かちょっと変な感じがするな。


「アラザキ?」


俺が自分の名前を言ったとき彼女の瞳が一瞬ぎらりと光った気がした。


「もしかして、お兄ちゃんがファリア様の黒死の病を治してくれた人?」


あぁ、そういえばそんなこともありましたな。不治の病、的なものだったんだっけ?


「まぁ、一応そういうことになるのかな」


俺がそう言うと彼女はへぇ……と何とも怪しげな笑みを作った。さっきから何なんだこの子。何か只者じゃないっていうか、何か変わってるよな。


「ねぇ、お兄ちゃん。今日ここでお夕食を食べた後はすぐに帰っちゃうの?」


「え? い、いやーどうかな」


何でそんな事聞くんだこの子。


「もしも、ファリア様とのお夕食が済んだあと時間があればどこかでお話したいなと思って……」


「は、はぁ……」


お話したいって何を話すんだ? 俺達、今会ったばかりなのに。

そう怪訝に思い彼女を見つめた時だった。


「先生ーーー!!」


部屋の外から誰かがそう叫ぶのが聞こえてきた。って先生?


「やれやれもう見つかってしまったか。それじゃあお兄ちゃんさっきのこと考えといてね。もし大丈夫ならこの部屋の前で待ってるから」


にこっと笑いそのまま彼女は部屋の外へと消えていってしまった。


「一体何だったんだ?」


あの子は一体何者なのだろうか? 結局名前も教えてくれなかったし。というかこれは俺行ったほうがいいのだろうか。


「荒崎さん、お待たせいたしました。ファリア様のご準備が整いましたのでお部屋の方にご案内いたします」


「あ、は、はい」


結局俺は先程の女の子のせいでさっきまでの色々な緊張を忘れ、変に落ち着いてしまったまま部屋に案内されることになった。

5月27日一部修正しました。

この話を書くまでに起きたこと。

・書いてる途中でパソコンフリーズ。

・休日に書こうと思ったら病欠者が出て代打出勤。

・読んでた漫画の濃厚欝展開。

そんなこんなで心が折れて遅くなりました。マジすいませんでした……orz

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