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疑心暗鬼

えーと……これは俺はどうすればいいんだ? この人の妹さんを救う? 


「あ、あのエストニアさん。救うってのはつまりこの人の妹さんがかかってるその重い病気ってやつを治せってことですか?」


「ええ、そうです。荒崎さんのその力があればもしかしたら、あの子の病気も治すことができるかもしれません」


「ま、まぁ多分出来ると思いますけど」


一応どんな病気や怪我も治せるってことになってるからなこの力。それにファリアがかかってたえーと……黒死の病だっけ? とかいう不治の病も治せたんだからきっと大丈夫だろう。


「ですからどうかお願いします。この依頼受けて貰えないでしょうか?」


そう言って深く頭を下げるエストニアさん。なんかどんどん話が進んでいってるんだけど……。とりあえずその依頼を受けるのは全然構わないんだが、その前に俺はどうしても確認しておきたいことがあった。


「えーと……エストニアさん。その前に一つ聞きたいことがあるんですけど」


「確認ですか? あ、報酬の事でしたらきちんとお支払いさせていただきます。まぁ、私もそこまでお金を持っているわけではないので多くはお支払いできませんが……」


あー……別にその辺はどうでもいいんだけどな。……いやどうでもよくはないか。まぁ、今はとりあえずそこは置いといて、気になっているのはもっと別のことだ。


「あ、いやそうじゃなくて俺が聞きたいのは彼女がこの依頼を承諾してくれるかどうかです」


そう言うとエストニアさんは軽く首を傾げた。


「いやほら、一応彼女の家族の問題ですからきちんと確認はとっておいたほうがいいんじゃないかなと思いまして」


勝手に治して後から色々文句を言われたんじゃこちらもたまったもんじゃないからな。こういうことはお互いの了承がやはり大事だろう。


「なるほど、確かにそうですね」


「でしょ、ですからとりあえず彼女が目を覚ますまで待って一度確認をとった方がいいと思うんです」


俺がそう提案すると何故かエストニアさんは急に暗い顔になった。

え? 何か俺まずいこと言ったかな。


「あの、荒崎さん。実は彼女は……ベイルはその昔色々とありまして私や一部の親しい人間を除いた方にはあまりよろしくない態度をとるようなことがあって……」


「え、そうなんですか?」


「特にそうじゃないことは分かっているのですが、荒崎さんのような‘魔術師’級の力を使える人には……」


うわー……マジかよ。俺そういう人への接し方というか対処法というかそういうのはよく分からないんだけどな。自分から言っといて何だがとてつもなく面倒な事になりそうな予感がする。


「ま、まぁでもやっぱり一度は確認をとっておきたいので……」


俺は少し顔を引きつらせながらそうお願いした。はぁ~……何だか胃が痛い。







そんな訳でとりあえず彼女が目を覚ますまで俺達はまたあのカウンターの奥の部屋で待機することになった。


「はぁ~……」


思わず大きな溜め息が一つもれる。これから起きるであろう面倒くさい事態に俺のテンションは下がりまくっていた。


「ご主人様、大丈夫ですか?」


横にいるフラウは相変わらず俺のことを心配してくれる。あぁ、もう今俺にとってはお前だけが唯一の癒しだよ。サラサラの毛並みを撫でながらそう思った。


「あぁ、大丈夫大丈夫。あ、そういえばさ今思ったんだけどお前エストニアさんが来てから一言も喋らなかったよな?」


「はい、それがどうかなさいましたか?」


「いや、なんでかなーって思って」


「あまり私が喋るところを見られて注目されたくないというのと、できることならご主人様とだけ言葉を交わしていたいからです」


ふーん、なるほど。まぁ、確かに下手な混乱は避けたほうがいいよな。それは納得である。しかし、俺とだけ言葉を交わしたいっていうのはどうなんだ? 実は私、人見知りするタイプなんですって遠まわしに言いたかったんだろうか。その辺は俺にはよく分からなかった。





それからしばらくフラウと雑談を交わしたり、もふもふ撫でたりしていると部屋にエストニアさんが入ってきた。


「荒崎さん、お待たせしました。彼女が目を覚ましたので休憩室に来ていただけますか」


どうやら無事彼女は目を覚ましたらしい。よかった……と言いたいところなのだが、これからのことを考えると少しだけもやっとした気持ちになった。

いやいやいや、悪い方に考えるな。まだ話もしていないのにイメージだけで決め付けるのはよくないことだ。そういう人に限って実は意外といい人のパターンもあるし!

そう自分に言い聞かせ俺はエストニアさんと一緒に再び休憩室にやってきた。中に入ると先程まで横になっていた彼女はベッドの上で上半身だけを起こしていた。そして、彼女と一瞬視線が合い俺は慌てて目をそらした。


それにしても本当綺麗な人だよなぁ……。いや、こんな時に何だが……。


「ベイル、こちらの方が先程話した荒崎さん。あなたを治してくれた人よ」


そう紹介され俺はペコッと頭を下げる。


「荒崎 達也と言います」


そう短く挨拶すると彼女は表情を崩すことなく軽く頭を下げてくれた。


「私は‘ベイル・レイミリア’。エストニアから話は聞かせてもらった。どうやら今回はあなたに助けられたみたいだな、まずは礼を言わせてもらおう」


そう言って深く頭を下げられる。あれ? これはそんなに悪い人じゃなかったよパターンか? 


「いえいえそんなに大したことしていませんから」


なんだよ全然普通な人じゃん。よかったー、ここでいきなり毒吐かれたらポッキリと心が折れてたぞきっと。


「それでね、ベイル。実はあなたに一つ話があるの」


エストニアさんがそう言うとベイルさんは目を少し細め首を傾げた。


「実はね荒崎さんはその……不思議な力を生まれつき持っていて、その力っていうのがどんな病気や怪我でも治せるってものらしいの。今回あなたを毒から助けた時もその力を使ってくれたのよ」


「どんな病気や怪我でも治せる?」


それを聞いたベイルさんが眉間に皺を寄せ俺のことを凝視してくる。その視線はまるで刺すように鋭くて思わず体がビクッとなりそうになる。


「それでねその荒崎さんの力を使って‘カルラ’ちゃんの病気も治してもらおうと……」


エストニアさんがそこまで言った時だった、


「貴様、魔術師なのか」


ベイルさんがそう何とも低い声で俺に言ってきた。ちょ、何ですか今の妙にどすのきいたような声は……。女性が出していい声じゃなかったぞ。


「え、いや、その」


「そうなのかと聞いているんだ」


更に威圧感たっぷりな声で迫られる。……前言撤回、やっぱりこの人怖い人だったよ……。


「ま、魔術師ではないでしゅ……ないです」


ないでしゅって……変なところで噛んだし。何だか自分が情けなくなり泣きたくなってきた。


「魔術師ではないのか」


彼女はそれが分かった途端、俺に向けて放っていた威圧感を無くしてくれた。それに俺はホッと胸を撫で下ろす。


「しかし、魔術師でもないのにそのような力が使えるなんて……一体何者なんだあなたは」


「な、何者と言われましても最近引っ越してきた只の一般人です……」


あ、滅茶苦茶怪しそうな顔してる。どうやらこの人にはあまりごまかしは効かなそうだ。



「ベイル、それでねさっきの話の続きなんだけど……」


それからベイルさんにエストニアさんから先程の話の流れを説明してもらった。ベイルさんはその話を何も言わずにじっと聞いていたが、その顔は終始難しそうな表情をしていた。


「というわけなんだけど……どうかしら?」


「…………」


黙ったまま考え込むベイルさん。さぁてどうするのかな。


「ベイル……」


しばらく考え込んだあと、エストニアさんの呼びかけに彼女は顔を上げて俺のことを見据えてきた。


「正直なところ私はまだ彼を信頼することは出来ない。むしろ怪しい奴だと思っている」


さ、さいですか……


「しかし、私がうけたスケイルドラゴンの毒を治したのもまた事実だ。カルラの病状はそれとは比べ物にならないくらい重いものだが、エストニアがここまで言うんだ。少しでもよくなる可能性があるのならそれにかけてみてもいいと思う」


それを聞いたエストニアさんが目を見開き嬉しそうな表情になる。


「それじゃあ!」


「しかし! こちらからもひとつ条件がある」


そう言ってベイルさんは急にベッドから立ち上がった。そして、俺の前に立ちふさがるように近づいてきた。それに思わず俺はたじろぐ。


「あなたがもしその力とやらを使ってカルラの病状を少しも治せなかった場合は……」


「ば、場合は?」


そう聞き返した時、不意にベイルさんは自分の腰に巻かれていたベルトの後ろ側に手を回したかと思うと、そこから短い短剣のようなものを取り出しこちらに突きつけてきた。


「ちょ!!?」


なんてもん取り出してんだこの人は!! 


「あなたにこの街から出て行ってもらう。永遠にな」


彼女はにやりと笑いつつそう俺に告げた。




次回予告


ベイルの妹、‘カルラ’を治すために彼女の家を訪れる荒崎。

そこで彼が見たものとは……


「なんだよこれ……」


次回をお楽しみに!! 

……すいません。一度やってみたかったんですorz

3月4日本文一部修正しました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ベイルの主張が意味不明だし自己中心的的だし支離滅裂すぎて笑えてくる。少しでも治せなかったらこの街を出ていってもらうって笑 なんの権利があってそんなこと言ってるの?王族と懇意にしてること…
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