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世界で最もユーモラスなピザ

作者: Van G. Kewce
掲載日:2026/11/01

今日、私は世界で最もユーモラスなピザを作るのだ。


午前九時十三分、私は台所に材料を並べた。


トマトソース、モッツァレラチーズ、ベーコン、むきエビ、マッシュルーム、それから黒オリーブ。


生地は昨夜のうちに四枚分仕込んでおいた。もっとも、世界で最もユーモラスなピザになれるのは、そのうちの一枚だけだ。


さっそく、生地を丸く伸ばした。


世界で最もユーモラスなピザは丸くなくてはならない。


もちろん、四角いピザが存在することは承知している。しかし、四角いというだけで面白くなるわけではない。三角形にすれば多少は意表を突けるかもしれないが、それでは大きな一切れのピザにしか見えない。


こういった奇抜さに頼るのは自信のなさの現れだ。私は自信と誇りをもって世界で最もユーモラスなピザの制作に取り組んでいる。


直径は二十八センチ。ユーモアを追求した結果、この寸法に落ち着いた。


次に、生地にトマトソースを塗り、チーズを散らした。


ここまでは普通のピザである。


問題はここからだった。


私は人を笑わせたい。


それも、可能ならば、何の説明もなく笑わせたい。


ピザを見せるたびに、なぜ面白いのかを説明していては仕方がない。説明を聞いて笑うのであれば、それは説明が面白かったのであって、ピザが面白かったわけではないからだ。


そこでまず、黒オリーブを八粒、円周に沿って配置した。


残る一粒を慎重に中央に置く。


八人が一人を取り囲んでいるように見える。


私はしばらく眺めた。


面白くない。


取り囲まれている一人が、ひどく気の毒だからだ。


中央の一粒を少し右にずらしてみた。


今度は八人の会議に、一人だけ遅刻してきたように見える。


私は笑った。


しかし、すぐに笑うのをやめた。


遅刻という既存の概念に頼っている。これではピザそのものの面白さとは言えない。


私はオリーブをすべて取り除いた。


午前十一時四十八分。


ここまでの成果は、生地のみである。


私は一度手を洗い、椅子に座った。


面白いとは何か。


人間は予想を裏切られたときに笑うという。しかし、予想を裏切るだけなら、玄関を開けたところに冷蔵庫が置いてあっても面白いことになる。


それは面白いだろうか。


面白いかもしれない。


私はその光景を想像して少し笑った。


だが、今はピザの話をしている。


考え直す必要があった。


私はメモ帳を開き、今月笑ったもののリストを確認した。


転んだ人。


言い間違えた人。


犬。


犬については、もう少し詳しく記録しておくべきだった。犬というだけで笑えるわけではないからだ。もっとも、犬とだけ書いてあることは少しばかり面白い。


私は「犬」の横に小さく丸をつけた。


午後零時二分。


腹が減ったので、食パンを一枚食べた。


当然、ピザには手をつけなかった。


午後一時十六分、再び作業を始めた。


今度はベーコンを使うことにした。


二本を平行に並べ、そこに一本だけ斜めに置く。


奇妙なことに、それだけで三本目がひどく生意気に見えた。


私は思わず笑った。


かなりよい。


しかし、三本目を反対方向に傾けると、今度は申し訳なさそうに見えた。


私は笑わなかった。


これは重大な発見だった。


角度によって、ベーコンの人格が変化するのである。


私は分度器を取り出した。


三十度。


四十五度。


六十度。


七十五度。


三十八度に戻す。


三十八度が最も生意気だった。


これは良い。


だが、ベーコンが三本並んでいるだけでは、世界で最もユーモラスとは言えない。


私はもう一本加えた。


四本目は他の三本より明らかに長く、最初の三本などまるで眼中にないようだった。


気づけば、四本目ばかりを見ていた。


四本目が笑いを独占している。


これは由々しき問題だった。


四本目が面白ければ面白いほど、ほかの三本はただそこに置かれているだけになってしまう。


三本目など、あれほど生意気だったのに、今では四本目の引き立て役に甘んじている。


ひとりが面白いことと、集団として面白いことは違う。これは集団で何かをする際にしばしば起こる問題だが、ピザも例外ではない。


私は協調性に欠ける四本目のベーコンを取り除き、冷蔵庫に戻した。


午後二時四十一分。


生地の縁が少し乾き始めていた。


私は新しい生地を用意し、再び二十八センチに伸ばした。


トマトソースを塗り、チーズを散らした。先ほどの三本のベーコンも移した。


最初の生地が悪かったわけではない。むしろ、よくできた生地だった。ただ、私の不手際によって、世界で最もユーモラスなピザの生地になるという栄誉を奪ってしまった。


彼に恥じないように、必ず世界で最もユーモラスなピザを作り上げなければ。


私は決意を新たにした。


午後三時十八分。


行き詰まったので、スマートフォンを取り出しAIに相談することにした。


「世界で最もユーモラスなピザを作るには、どうすればいいですか」


少し間があった。


「まず、右膝と左膝のどちらを使うか決めましょう」


私は吹き出した。


午後三時二十八分。


私はマッシュルームを取り出した。


包装には「生産者の顔が見える」と書かれていた。


確かに顔写真が載っていた。


ただし、顔には三割引のシールが貼られていた。


私はしばらく具材を吟味し、マッシュルームとむきエビを生地に載せた。


午後三時四十分。


私は食卓に突っ伏していた。


面白いものを三つ集めれば、三倍面白くなるだろうか。


そんなことはない。


だとすれば、面白さとは足し算ではないのだろう。


私は顔を上げ、しばらく考えた。


引き算だろうか。


私はむきエビを一尾取り除いた。


エビの下には、その形に沿ってくぼんだチーズが残っていた。


私は笑い出した。


一度は収まったが、もう一度見ると、また笑いが込み上げてきた。


引き算かもしれない。


しかし、次に何を取り除けばよいのか分からなかった。


午後四時三十八分。


私は世界で最もユーモラスなピザの具材の配置を決めた。


三本のベーコンと九粒の黒オリーブ。


マッシュルームとエビも、ちょうどよい位置に収まっていた。


一つずつ見れば、どれもそれほど面白くない。


しかし、全体を眺めていると、自然と笑みがこぼれた。


これこそが、世界で最もユーモラスなピザだった。


私は一度目をそらし、もう一度眺めた。


やはり面白かった。


私は慎重に位置を調整した。


一ミリ右へ。


二ミリ左へ。


三本目のベーコンを、さらに二度傾ける。


二次元的にも三次元的にも完璧な配置だ。


私は分度器をしまった。


もう、何もする必要はなかった。


午後五時六分。


私はピザをオーブンに入れ、つまみを回した。


チーズがゆっくりと溶けて崩れ始めた。


ベーコンが縮んだ。


黒オリーブが少し動いた。


マッシュルームは反り返り、エビは特に変わらなかった。


私は立ち上がった。


私のピザが、ピザになってしまう。


タイマーの目盛りを見ると、残り七分を指していた。


七分あれば、何かできるかもしれない。


しかし、オーブンを開ければ温度が下がる。焼成の途中で配置を修正することもできるが、そうするとチーズが乱れる可能性がある。


私は七分間、考え続けた。


結局、何もしなかった。


午後五時二十四分。


ピザが焼き上がった。


私は皿に移し、食卓の中央に置いた。


椅子に座り、ピザを見た。


私は考えた。


しばらく考えた。


午後六時三十一分。


額に汗が滲んでいた。


私は袖口で拭った。


ピザはすっかり冷めていた。


午後七時四十二分。


腹の底から、じわじわと怒りがこみ上げてきた。


私は奥歯を噛みしめた。


何がいけなかったのか。


午後八時四十二分。


涙が一粒、ズボンに落ちた。


私はしばらく染みを見ていた。


午後九時六分。


私はまだピザを見ていた。


少し首を傾けると、ピザが笑っているように見えた。


私は首を戻した。


テーブルの上には、ピザが一枚ある。


ただ、それだけだった。


午後九時四十三分。


窓の外は真っ暗だった。


私は大きく息を吐いた。


今日はここまでにしよう。


ピザをラップで包み、冷蔵庫にしまった。


使わなかった材料を片づけ、食器を洗った。ノートは引き出しに戻し、分度器も定位置にしまった。


それからシャワーを浴びた。


風呂から上がると、スマートフォンに会社の同僚からメッセージが届いていた。


月曜日の営業会議で使う資料についての確認だった。


私は内容を読み、簡潔に返信した。


明日も九時から勤務だ。


いつもと変わらない一週間が始まる。


私は明日のワイシャツにアイロンをかけ、歯磨きをした。


それから目覚まし時計を七時に設定してベッドに入った。


今日はなかなか充実した休日だった。


来週は、もう少し面白いピザを作ろうと思う。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


本作は、長編小説の執筆に行き詰まった際、気分転換として書いた露悪的な短編を、公開に向けて加筆・修正したものです。


ご感想やご意見をいただけますと幸いです。今後の創作活動にも生かしていきたいと考えておりますので、どうぞ忌憚のないご意見をお寄せください。

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