第一章 君がいない世界
ブラック企業で心を擦り減らしていた佐倉悠人。ある夜、ビルの屋上から転落した彼が目覚めたのは、争いのない穏やかな異世界だった。失った光を取り戻す、心温まる再生の物語
「はぁ……」
僕は無意識に、何度目かの溜息を吐いた。
デスクに積み重なった書類の山を眺めながら、時計を見る。午前三時。オフィスに残っているのは、もう僕だけだ。
蛍光灯の白い光だけが、無機質な空間を照らし続けている。
佐倉悠人、二十八歳。
普通のサラリーマン。いや、普通じゃないかもしれない。休日も、まともな睡眠時間もない。ただ働き続ける毎日。
でも、それでよかった。
少なくとも、何も考えずに済む。
「光……」
ふと、その名前を口にしていた。
小学生の頃、僕には親友がいた。名前は光。いつも笑顔で、誰にでも優しくて、クラスの人気者だった。
内気で友達の少なかった僕に、最初に話しかけてくれたのが光だった。
「ねぇ、一緒に遊ぼうよ!」
あの明るい声が、今でも耳に残っている。
光といると、世界が明るく見えた。一緒にいるだけで、僕は自分が特別な存在になれたような気がした。
でも、その光は小学四年生の冬に、病気で死んでしまった。
突然だった。
ある日突然、光は学校に来なくなり、そして二度と戻ってこなかった。
「悠人、ごめんね。また一緒に遊べなくなっちゃった」
病室で、弱々しく笑いながら光が言った言葉を、僕は忘れられない。
あれから二十年近く。
僕は光を失った穴を埋めるように、ただ働き続けてきた。何かに没頭していれば、寂しさを感じずに済むと思ったから。
でも、結局何も変わらなかった。
心の奥底にある空虚さは、何をしても埋まらない。
「もう、疲れたな……」
そう呟いて、僕は席を立った。
休憩がてら、屋上に出ることにする。
私たち姉弟で小説を書いています、畠山ゆなと申します。
機械音痴な姉と二人三脚で共作している作品です。
通勤時間や寝る前のひとときに、少しでも心が軽くなったり、ワクワクしていただけたら嬉しいです。
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