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私たちが残すべき記憶  作者: 箕宝郷
義心と疑心(ぎしんとぎしん)
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祭恋8

 大学に着くといつもより他人から見られていると感じた。「もう噂が広まっているのか?」と感じながら太晴に問いかけた。

「太晴。なんか俺の噂広まっていない?」


「いや、なにもないな。どうしたん?」


「今日いつもより視線を感じるからさぁ」


「お前、さては昨日なんかあったな」


「いや、心当たりないから聞いているんだよ。」


「分かった。分かった。特別に教えてやるよなんか伊新さんとお前、付き合ってることになってるぞ!」


「はぁ?嘘だろ?」


「でも安心して。そんなに広まっていないし、俺もお前が伊新さんの事嫌っていること知っているからさぁ誤解だよって言っているからさぁ。」


「太晴、やめろよそういうのよけなお世話だよ。」


「フーン折角噂が広まらないようにしてやっているのに、そういう事言うんだ。」


「ちっ、分かったよ。ありがとう。」


(利弥の奴、伊新さんとの噂話が広まったからって動揺すんなよ。まじ中学生か?)


 「やっぱり噂になっていた。」そう思った私は、しばらく誰とも話さないようにした。とにかく静かにしようと講義はノートを取ってるフリをするか、寝て、極力、下を向くようにした。休み時間は、下を向きながら移動して何とか午前中は太晴と以外話さずにできた。

 しかし、昼休みトイレに行こうとすると、美香とすれ違い話しかけられた。


「あっ、糸米君。あのこの間はありがとね。これ忘れ物だよ。」


渡されたのは万年筆だった。どこかで無くしたと思っていたので正直、とても嬉しかった。あの時「伊新さんありがとう。」と一言いえていればもっと早く関係が進展していたかもしれない。しかし私は、なぜか素っ気ない態度をとってしまった。

「いや、これ違いますね。別の人の物だと思います。」


周りに人もいたので、私は嘘をついてしまった。早くこの場から抜け出したいと私は必死になっていたのだった。


「あれ?糸米君のじゃないの?おかしいなぁ。」


 美香は不思議そうに言いながら、どこかに行ってしまった。私は自分の気持ちに正直になれない悔しさと嘘をついてしまった罪悪感でいっぱいになっていた。今日は食欲が出ないので、ゼリーを食べてスマホをいじりながら時間を持て余していた。

 午後の講義に入り、午前中同様に人と極力会話しないようにしていた。1日全ての講義が終わり、家に帰ろうとした時、宝ケさんに呼ばれた。


「ちょっと糸米さん。」


「なにって、宝ケさんかよ。」


「これ、あんたのでしょ。」


 宝ケさんの手には万年筆があった。


「んまぁ、そうだけど」


「なんで、美香ちゃんに嘘ついたの?美香ちゃんすごく困ってたよ。んまぁ太晴君が言ってくれたから分かったけど。」


「いや、あの時は昼休みで時間もなかったから。」


「はぁ...せっかく届けてくれたのに可哀想じゃん。なに?糸米君はそれでいいの?」


「それでいいって何が?」


「もういいよ。とりあえず、美香ちゃんにお礼言っておきな。」


「は、はい。」


 あぁ、面倒なことになってしまったと思いながら宝ケさんと会話していた。


続く

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