発見
真美子さんに誘われて、勇寺は何となく靴を履き、外へと歩き出した。
朝日が眩しくて外が真っ白だ。
目がだんだんなれるといつも通りの見慣れた町並みだ
勇寺 沢毘は変わらない日常に少し退屈しながら足を前に進めた。
最初は億劫だったが、始めてみると鳥の鳴き声やお日様が暖かくて気分がいい。
勇寺 沢毘
「真美子さん!出てきて!」
真美子
「どうしたんだい?」
勇寺 沢毘
「真美子さんの言った通り、散歩は心地が良かったよ。ありがとうね!」
勇寺がニコッと笑いかけると、真美子はキュンと心が射抜かれ、勇寺の頭を抱きしめて撫で撫でした。
真美子
「よし!よし!よし!ゆーちゃんは本当に素直で可愛いなぁ!」
勇寺は少し鬱陶しそうに頭から手を避けた。
真美子は少し悲しそうだったが、思春期の難しさを思い出し、大人しくなった。
普通の人にはどこにも異変が無く、いつも通りの道だが、超常を認知できる勇寺には見えてはいけない物も見えてしまう。
だが見えるからと言って特に不自由はない。
不自由どころか、勇寺には普通の人には見えない友達が何人かいる。
それに少し迷惑なやつはよく居るが、本当に危険なやつはそう簡単には居ないし、起こらない。
居たり、あったとしても、関わらなければいいのだ。
よく見るのが電柱の影で立っているサラリーマンや、OL、体育座りしている小学生などだ。
勇寺 沢毘
(家を出て一番近くの公園にはいつもスクワットや鉄棒で懸垂をして、筋トレをしている幽霊の小林さんがいる。今日はそこまで行って、筋トレしてる小林さんを見て何となく自分もやり切った感を出して帰ろう)
「真美子さん!今日は公園まで行って、小林さんを見て帰ろうと思う。」
真美子
「分かったわ」
幼児連れの親子
幼児A「お母さん!あの人1人でおしゃべりしてる!」
母「こら!だめよ!関わらないの!」
幼児A「はーい!」
勇寺
(しまった…考えごとしてたから周りを見てなかった。今絶対ヤバい人って思われたよなぁ…)
真美子さんもニヤニヤしながら勇寺を見ている。
ドカン!!
進行方向の曲がり道から爆発音が聞こえた!
勇寺 沢毘
「えっ!?何事?」
あまりの大きな音に思わず声が出てしまったが、向かいから歩いてくる犬の散歩をしている、お爺さんは何も反応していない。
真美子
「ゆー君!逃げよう!何か向こうから危険なものがやってくる!!」
勇寺 沢毘
「何かって?何?!」
真美子
「いいから早く逃げて!!」
その瞬間、曲がり角の壁をヒタリと死人のような冷たい手が掴んだ。
それと同時にさっきまで、心地良く鳴いていた鳩や雀が泣くのを止めた。
勇寺は呆気に取られ、真美子の声が届いていないのか?動けずに、その手を凝視していた。
すると、ずぶ濡れの人形の何かがこちらを向いた。
人の形をして外骨格のような物を纏った、明らかに人ではないそれ。
顔は所謂、人間そのものだが、おでこに白と黒の勾玉を合わせた円形の物を携えている。
それは勇寺の目を凝視すると口を開いて一言言った。
「見えてるな?…」