散歩
現代人は誰でも何かしらの悩みや不安を抱えて生きている。
学校のクラスの人間関係がぐくしゃくして学校に行きたくない事や、会社の責任ある立場に胃を痛めてたり、精神を病んでしまったり。
悩みは人それぞれだ。
大抵の人は環境を変えたり、病院に行ったりすれば現在の悩みは解消されて、問題はない。
だが、満員電車に揺られるサラリーマンや、憂鬱そうに自転車を漕ぐ学生は知らない。
その負の感情が「超常」という現象を起こし、我々がその対処をしているということを。
勇寺 沢毘
「もう学校に行きたくない。何かをされていじめられているという訳ではないけれど、学校に行く事にメリットを感じないんだ。10年後の自分を想像して就職の事を考えたり、受験について考えたりなんてできる訳がない。」
真美子
「だめよ。しっかり学校に行ってお母さんを安心させなくちゃ」
勇寺 沢毘
「真美子さん。教えてよ。学校に行くメリットって何?」
真美子
「頭のいい高校に行って、頭のいい大学に行って、いい仕事について将来楽する為よ」
勇寺 沢毘
「真美子さんはどうだったの?」
真美子
「私は、しょうがないじゃない。入った会社がブラックでお酒浸りになっちゃったんだから。あんだけめちゃくちゃな大企業なんて本当に珍しいんだから。ゆうちゃんはきっと大丈夫よ」
勇寺 沢毘
「ほら!勉強して大企業に入ったとしても幸せになれるとは限らないじゃないか」
勇寺 沢毘は中学2年生。学校の登校時間になっても布団に包まっていた。
真美子は以前このマンションに住んでいたOLの幽霊。良い大学を卒業した後、大企業に就職したが、ストレスが多く、家でストレス発散の為にお酒を大量に飲んだ結果、急性アルコール中毒によって亡くなった。
勇寺 沢毘は父が出社したっきり家に帰らず失踪、その後、母とこの格安の事故物件に引っ越した。
現在のマンションに引っ越す前に内見した際、母は寒気がした為、別の場所を選ぼうとしたが、当時幼かった勇寺 沢毘が大変気に入った為、しぶしぶこのマンションにした。
勇寺がこのマンションを気に入った理由に真美子さんがあった。
勇寺 沢毘は生まれつき幽霊や妖怪などの超常的な現象を認知できた。
また、真美子さんは子供が大好きだった為、内見に来た幽霊が見える勇寺と遊んであげた。
仕事に忙しい母の代わりに、真美子が勇寺 沢毘に愛情や友情、道徳、勉学を教えた。
そして、現在、勇寺 沢毘は登校を拒否していた。
真美子
「分かった。じゃあ登校はしなくていい。勉強もできているからね。だから散歩でもしよう。朝の散歩は心地がいいぞ。きっとそのもやもやした気分も晴れるはずだ。」
勇寺 沢毘
「散歩かぁ…真美子さんが言うならそれぐらいなら良いかもなぁ〜」