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縄文文書(もんじょ)で世界を救え!! ― 01  作者: 幸田 蒼之助
七、

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32/36

7-1、

※なるべく縦書きでお読み下さい。

 ――パコンっ、スチャラカチャンポロペロリン、スッポンポンっ♪ ぱふぱふっ♪


「さあっ、始まりました。みんな大好き“タマキンのブラブラ日本男児Ch.”のお時間っ! 本日は大事件が発生しましたので、緊急ライブをお届け致します。特大有料級ですが何とナント、いつも通り無料でご視聴頂けます。いよ~っ、持ってけドロボーっ!」


 その代わり、内容を気に入って下さった方々はジャンジャン拡散して下さい。いやいや遠慮は要りませんよ……と、いつものオープニングトークである。


 すかさず、拍手喝采……の効果音。


 普段は座敷に四人並んで座り、撮影しているが、今日はリビングでの撮影である。四人、ゆったりとソファーに座り、すこし遠方にカメラの三脚を立て映している。


「さて、本日のタイトルですが」


 ででんっ。


 ――謎の巨大遮光器土偶メカ出現! 死闘、そして撃退までの顛末!!


 ガトリング彰善の素早いPC操作により、デカデカとタイトル字幕が表示された。


 いつもの如く、


 ――謎メカ登場!?

 ――マジかよwww


 といったコメントが画面を流れる。


 緊急ライブゆえ、まだ視聴者数が少なく、普段よりコメントが少ない。が、その間もどんどん視聴者数カウント値が上昇する。


「というわけで、事情はタイトルの通りでございます。私達は無届けで、(くだん)の縄文文書(もんじょ)を発掘し解析作業を行っていますが、どういうわけか県の教育委員会に嗅ぎつけられまして」


 で、複数の引越会社を使い、ブツをあっちにやったりこっちに移動したり……と翻弄し、見事、防衛に成功した、と顛末を簡潔に解説する。


「ところがその直後、目つきの悪いセクシーねえちゃん、ひょろガリ出っ歯のオカマ、青髭のプロレスラーみたいな謎の三人組が現れたんです」

「そうそう。そうなのよ」


 と、傍らで笙歌が相槌を打つ。


 大きく頷く、金作。


「そいつらがナント、今朝方、全長一五m程の巨大謎メカに乗って、わたくしタマキン宅へと攻め込んで来たのですよ。ブツをよこせ、と」


 派手な効果音と共に、画面は謎メカ実写へと変わった。


 全てが片付いた後、地にデカデカと横たわった巨大遮光器土偶メカを、ウドさあ倫輔が遺跡調査時に使用するドローンにて空撮したものである。


 ――マジで謎メカじゃんw

 ――亀ヶ岡の遮光器土偶、まんまかよww

 ――再現度スゲえ。


 早速コメントが怒涛の如く、画面を流れる。


「というわけで、三人組+謎メカと戦闘になったわけですが」


 ここで彰善謹製の戦況解説画像へと切り替わる。金作宅前の画像に、亀ヶ岡遮光器土偶画像を張り合わせた再現映像だ。


「そうそう。こういう感じで攻めてきたんです」


 彼らが事前にガソリン三五〇リッターを購入していたのは判っていた。だから謎メカが登場する可能性は、一応想定していた。それが実際にやってきた!


 だが我々は、得物のチョイスを誤った……。


 チョ~ンっ♪


「まずガトリングが、謎メカの足部分に、刀で斬り掛かったんですよね」


 すかさず画面が、人気時代劇“必殺残業(ゝゝ)人”の迫力ある殺陣(たて)シーンに変わる。


「続いてウドさあが、果敢にも相撲技で足部分に取り付き……」


 画面がモンゴル人力士の取り組みシーンに変わり、トンッ、トトントンッ♪、と寄せ太鼓(ゝゝゝゝ)の音が流れる。


「おいっ、ちょっと(ちょっ)待てガトリング! オイのシーンはそイか!? 恥ずかしい(げんね)ど!」


 倫輔が抗議し、傍らの彰善の膝をピシリと叩く。ニヒヒと笑う、彰善。


「まあ、そういう具合に謎メカと対決したわけですが、何しろこんな巨大メカですから、剣術や相撲技などでは歯が立たない。ガトリングの古備前正恒など、一発で刃こぼれする有り様。さて、どうするか!?」


 金作が講釈調でまくしたてる。


「笙歌も薙刀を抱えていましたが、それとて謎メカに歯が立たないのは一目瞭然。……おまけにここで、三人組は飛び道具を使ってきた! その名もナント、“ビーム光線”!!」


 ――うわ。まさかのビーム光線www

 ――昭和かよww

 ――ヤバい。みんな逃げてぇ~~~~


 視聴者数が五万人を超え、そろそろコメントも賑やかになってきた。


「命の危険を感じ、ギョっと固まった我々四人っ! だがしかぁし!」


 画面に大写しとなる、メカとビーム光線の図解画像。


「発射口は土偶の目部分に取り付けられていて、しかも真正面にしか(ゝゝゝゝゝゝ)飛ばなかったんですよ」


 なにしろ全長一五m程ですからねえ。目の部分なんて、地上高一〇m以上です。そこから真っ直ぐ、真正面に飛ぶだけですから、我々の遥か頭上を真っ直ぐ飛び去っただけ。……


 たちまち、


 ――どんなギャグだよwww

 ――腹痛えwww

 ――やっぱ昭和だわwww


 といったコメントに満ちた。


「……とまあ、そんな具合でして。で、我々が、先日の動画でも公表しましたサイコキネシスにて、華麗に謎メカを倒したんですね」


 そのまま倒すと向かいの民家まで壊してしまいますから、そこが工夫のしどころだったわけですが。具体的に言うと、わたくしタマキンがサイコキネシスで謎メカを浮上させ、笙歌が角度を付けてから、後ろに押し倒す……と。


「そういうわけで、見事三人組を無力化し、撃退に成功したわけです。わははは」

「じゃっどじゃっどー。こン技はシンプルで、習得もお手軽じゃっとですが、非常に有効じゃち今回痛感しもした。何トンあっとかも判らん巨大メカでも、実にあっさり浮かせられるとです。まこちスゴか技じゃ」


 倫輔が興奮気味の口調で補足する。


 しばらく画面上に、多数のコメントが流れた。


 ――ウドさあの薩摩弁が全然わからん。

 ――標準語に翻訳ぷりーず。

 ――アツくなってるウドさあ、可愛い。抱いて~♡


 頭を掻きつつ苦笑いする、倫輔。


「そういうわけでして、ひとまず今回は謎の敵対勢力を無事に追い払うことが出来ました」

「でもまあ、巨大メカまで作って襲ってくる連中がいる、と判明したわけです。急ごしらえだったらしく、武装の設計などはあんぽんたんでしたが、全長一五mもある謎メカを製造する、技術力や資金力のある敵対勢力が存在するというわけです」

「じゃっとです。縄文文書の発見は、そイだけ価値が高いっちゅう証拠じゃと考えにゃ、いかんとでしょうね」

「あの謎メカを解析して、オレ達もビーム光線を開発するか……。ついでに自衛隊にも売り込む、と」

「ちょっと待ってよ! 物騒なコト言わないでよ~」


 わふっ、とカメラのフレーム外から、まんぷく丸がひと鳴きした。ツッコミを入れたつもりだろうか。


「そんなこんなで本日の事件の顛末、以上です。いずれにせよ、強大な敵勢力が実際に存在するわけですので、我々は今後、身を守る手段の確保を急ぎつつ、縄文文書の解析作業を進めていきたいと思います。……それではまた次回。ご視聴ありがとうございます」


 いつものエンディングテーマが流れ、緊急ライブ動画が終了した。


 ライブ配信後も着々と視聴者数が伸び、わずか三日で数百万となった。

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