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縄文文書(もんじょ)で世界を救え!! ― 01  作者: 幸田 蒼之助
四、

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21/36

4-4、

※なるべく縦書きでお読み下さい。

「全然ダメですわ。玉澄金作、当分帰って来そうにないですな」

「連絡もつかんそうです」


 白い壁の、無機質な会議室である。


 広さは二◯畳程だろうか。これまた無機質な、折りたたみテーブルと折りたたみ椅子が並ぶ。立て直したばかりの庁舎ゆえ、全てが真新しい。


 現状を報告するのは、件の二人組である。


「そうか……。参ったな」


 報告を聞きつつ眉をひそめるのは、上司らしき五〇男。いかにも仕事が出来そうな雰囲気を醸してはいるが、ネクタイを緩め襟元のボタンをだらしなく外している。


「さて、どうするか……」

「そりゃまあ、玉澄金作の帰国を待つしかないでしょ」

「そういうわけにもいかんのだ」


 五〇男は渋い顔で、胸元のポケットからタバコを取り出し、口に加えてその先に火を点ける。


「どうして? 急ぐ必要もないでしょ。そもそも情報も不確かですし。玉澄という男の側から届け出があったわけでもなし、工事でもやってて急いでいるわけでもなしわけでもなし……」

「上から()かされているんだ」

「上?」

「とある県会議員だ」

「はあ!?」

「もう既に、貰うモンを貰っているらしい」

「なんですかそれ!? 収賄じゃないですか!」

「政治献金名目だ。違法にはならん」

「はあ、なるほど」


 ブカブカと灰色い煙を撒き散らす、五〇男。黒木――二人組のうち先輩格の方――が目をショボつかせる。


「岩切さん、ここ禁煙ですよ」

「知らん」


 どこからともなく取り出した灰皿をテーブルの上に置くと、灰を落とし、なおも吸い続ける。


「とにかく、何とか玉澄金作とコンタクトを取るぞ。手段は問わん」

「何か良い手がありますかねえ。既に何度も、玉澄宅を訪問しているんですが」

「その、留守番の男は、なんて名前だ?」

「名前は聞いていません。金作は自分の、弟のいとこの……えっと」

「嫁の旦那だとか言ってましたっけ」

「はあ!? 何だと!」


 岩切と呼ばれた五〇男の、タバコを持つ手がピタリと止まった。


「弟のいとこの、嫁の旦那ぁ!? 何じゃそりゃ! お前ら、アホか!?」

「ん? ……ああっ!!」


 二人は顔色を変える。


「お前ら、おちょくられてるんだよ」


 岩切は苦々しげに、このバカタレがと吐き捨てると、灰皿の上で乱暴にタバコをもみ消した。


「よし。まずはその、留守番男の名前を聞き出せ。で、中村は市役所に掛け合って、男の素性を確認しろ。市役所がゴネるようなら、オレにすぐ報告しろよ。オレが上を動かして住基ネットを調べさせる」

「はいっ」

「黒木。お前は文化財関連の法律を確認しろ。強硬に現場へ踏み込む、口実を何か見つけろ」

「はあ、了解しました」


 二人が去ると、岩切は両手でこめかみを軽く揉みほぐし、それから再びタバコを取り出し咥えると火を点け、会議室中に煙を撒き散らし始めた。

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