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縄文文書(もんじょ)で世界を救え!! ― 01  作者: 幸田 蒼之助
四、

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20/36

4-3、

※なるべく縦書きでお読み下さい。

 次の週の、火曜日。再び金作宅に来客があった。(くだん)の二人組である。


「金作さん、まだ帰宅されてませんか?」


 黒木、と名乗る先輩らしき男が、金作に質す。


「まだですねえ」


 早くても来年か、再来年では……と金作はいい加減に答える。


「う~ん、そうですか……」


 二人は頭を抱え込んだ。


「あいつが帰ってきたら、連絡しますよ。名刺を下さい」

「はあ。お願いします」


 割とあっさり、二人は引き上げた。


 しかし三日後、またまたやって来た。そして同じやり取りがあり、すごすごと引き上げる二人。


 とはいえ、またもや次の週に二人はやって来た。


「こちらから金作さんに、連絡は取れないのでしょうか?」


 食い下がる。


「そりゃ無理でしょう」

「どうして?」

「だって、内モンゴルかチベットですよ。……いや、ウイグルだったかな?」

「でも携帯持ってますよね、金作さん」

「砂金掘りなんて、どうせ辺境の地でしょ。携帯電波が届くと思います?」

「あ、そうか……」


 諦めて帰って行った。が、それでも懲りずにさらに次の週、来訪する二人。……


(うわ。まぢで面倒臭え)


 金作は居留守を使った。


 ――パオ~ンっ♪

 ――パフパフっ♪

 ――ヒヒ~ンっ♪

 ――ばふっ♪


 何度か賑やかに、インターホンが鳴る。しつこい。


 金作は、そっと傍らのノートPCを開くと、ホームセキュリティのソフトを起動。玄関前の監視カメラの様子を伺う。


「留守ですかね」

「そのようだなあ」


 玄関前の、二人の会話が丸聞こえである。


 二人はそのまま暫く佇んでいたが、そのうち黒木と名乗った先輩格の方が、


「よし。ちょっと庭を見てみよう」


 と言い出した。


「えっ!? いいんですか?」

「ちょっと状況確認するだけだ」

「でも、カメラがあるって話でしたよね」

「構わん。何か適当に誤魔化せばいい。『呼んでも出てこられなかったから、庭にでもおられるのかと様子を見ただけですぅ』とか何とか、な。口実なんざ、どうにでもつけられるだろ」

「はあ。なるほど。それもそうですね」


 庭の方へと回ろうとする様子。


(おいおい)


 金作はそっと立ち上がると、忍び足で庭に面した座敷の方へと移動。金作の意図を察したのか、その後ろに付き従う、まんぷく丸。


 金作は、座敷縁側の窓ガラスを静かに開けた。


「行けっ、まんぷく丸! 不審者を撃退せよ!」


 小声で、しかし鋭く指示すると、まんぷく丸は弾かれたように反応し、


「わふっ!!」


 と鳴いて外へ飛び出した。ワンワンワンっ、と大声で鳴きながら、二人の方へと全速力で走って行く。いや、もふもふ過ぎてあまり迫力はないのだが。


 とはいえ程なく、その先で、


「「うわぁあぁっ!」」


 と男二人の情けない悲鳴が上がった。


(わはははは。エラいぞまんぷく丸♪)


 ――腰兵糧は武士の嗜み。


 備蓄食糧としてまんぷく丸を飼い始めたつもりだが、まさか番犬として働いてくれるとは。……


 そんなことを考えつつ、金作はそっとリビングに戻り、監視カメラ映像を確認する。


 案の定、二人はまんぷく丸に足を噛まれ、痛そうに足を引きずりつつ這々(ほうほう)(てい)で逃げ帰った。


「よしよし。よくやった」


 尻尾をパタパタと振りつつ、戻ってきたまんぷく丸の首筋を撫でてやる。その口元には、わずかに血が滲んでいる。


(まあ、コイツが連中を、ズボンの上から噛んだところで、大した怪我は負わせてないだろう……)


 キッチンの引き出しから“チュルっとな”コンポタ味を一本取り出し、


「そなたの働き、見事であった。お前は今日から備蓄食糧兼、番犬じゃ。褒美をとらす」


 (おごそ)かに、まんぷく丸に渡した。

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