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プロローグ

※なるべく縦書きでお読み下さい。

 都内某所。――


 路地裏にひっそりと佇む、四階建ての古びたビル。


 ひょろりと細く、外壁のあちこちにひび割れが目立つ。大きめの地震でも発生すれば、あっさり崩壊するのではないかという、儚さを感じさせる。


 秋の夕日は、既に随分と傾いていた。


 路地裏ゆえもう殆ど真っ暗で、あたかもお化け屋敷の如きおどろおどろしさを醸し出している。その、ビルの四階の一室にて。


「オシャンティ様、オシャンティ様! これですこれです、これですねん。これちゃいまっかー?」


 プロレスラーの如きガタイの、怪しい人相の男が(わめ)いた。


「あまり騒ぐんじゃないよ、バーボイっ! ご近所様に声を聞かれちゃマズいだろう!?」


 オシャンティ、と呼ばれた八頭身ボンキュッボン美女が、眉をひそめつつ小声でそう嗜める。


「まあまあまあ、そう怒らないで下さいよ~オシャンティ様。とうとう見つけたんで~すよ。例の、ワルプルギス様がおっしゃっていた連中の、動画を見つけちゃったんで~すのよ~ぉ」


 痩身、出っ歯の男が、のんべんだらりとオネエ口調で横から宥める。


「ああ、そうかいそうかい。良くやったわねカマエル。お手柄じゃぁないの~♪」


 どれどれ、と言いながらオシャンティが、PCの前に座る男二人の横からモニターを覗き込んだ。仄暗い室内にモニターの明かりだけが灯っており、三人の顔を怪しく照らし出す。


「あららら。“タマキンのブラブラ日本男児Ch.”ですって!? 品のないチャンネル名だねえ」

「オシャンティ様は何を想像してるんですかねぇ~。ダ~メですよ~」

「ホンマでっせー。この動画チャンネルの主が、“玉澄(たますみ)金作”言いまんねん。ほで、略して“タマキン”ですねん」

「おやまあ、そういうことかい。紛らわしいわねえ」

「そ~んなお下品な事ば~っかり考えてるから、行き遅れるんですよ~オシャンティ様ぁ」


 ニヤニヤしながらカマエルがツッコんだ0.13秒後、オシャンティの右フックがカマエルの出っ歯アゴに炸裂した。


「アイタタタタっ!」

「行き遅れとか言うんじゃないよ! あたしぁ、まだ二六歳だよ!」

「二六でも三六でも、どうでもいいんで~すのよぉ。それより、これ……」


 カマエルはモニターに映し出された動画を指差す。


 三人の男が、何やら地面の下の穴蔵から、大きめの壷らしき物を幾つも取り出す様子が映っていた。


 彼らはそれを家の座敷に運び込み、四苦八苦しながら開封し始める。


「おやおや。何だい、これは? 大昔の漬物だか梅干しでも入っているのかい?」

「違いますよ~オシャンティ様。これですよこ~れ。ワルプルギス様の仰っていた、『世界をも支配出来る、古代の叡智』ってヤツで~すよ~」


 なるほど彼らが開封した壷から、粘土板だか瓦らしきブツが次々と出てくる。


 動画を拡大しつつよく見ると、その表面には、何やら文字らしきものがビッシリと刻まれているではないか。


「ほうほうほう。なるほどねえ……」


 モニターのバックライトに照らされ、ニヤリと笑うオシャンティの表情が、闇に映えた。


 ハリウッド女優さえつとまりそうな、妖艶なる美女顔ではあるが、悪巧み中であることがひと目で判る、何ともワルい表情である。


「よ~し、分かった。早速、アレを奪うわよ~っ! いつも通り、作戦はカマエルに任せた! いいわね? バーボイはカマエルをしっかりサポートしな! さあ、いくわよ~っ!!」

「「ガッテンだ~っ!!」」

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