表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

リライト企画:弐次創作リライト雨澤劇場 3581(島猫。樣作品 3581リライト)

作者: 雨澤 穀稼

挿絵(By みてみん)

デザインワークス:アホリアSS様


   ふたり


 奥深い森へと繋がる曲がりくねった壱本道(いっぽんみち)

 陽の光より遠く遠く遠ざかる鬱蒼とした木立ちに覆われ、凸凹(でこぼこ)とした湿り気が滴るその突き当り。

 少し開けた苔生す木々が静かにゆれて、小さな湖畔に隣接する小屋から灯りが漏れていました。

 暖炉に燃ゆるパチパチと揺れる火に照らし出される弐人(ふたり)雄老人(おんたろうじん)が限り少ない命を寄り添わせておりました。


 ヴゥウウ〜〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。

 ヴゥウウ〜〜〜〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。

 ヴゥウウ〜〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「お互い年をとったな……」


 ヴゥウウ〜ッグゥグゥグゥ……。


「そうだね……でも、お互いの時間を共に共有出来たんだから僕は幸せだったよ」


 ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「何弱気な事いってんだよ! これからだって……」


 ヴゥウウ〜〜〜〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。

 ヴゥウウ〜〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。

 ヴゥウウ〜〜〜〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「御免……今日も柴刈りあんまし刈ってこられなくて」


 ヴゥウウ〜〜〜〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「無理すんなって言ってるだろ!」


 ヴゥウウ〜〜〜〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。

 ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「少しでも役に立ちたくて……」


 ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥヴゥウウ……。

 

「その度に倒れてたんじゃな! 森の中だったら見つけられなかったかも知れないんだぞ! 薪は充分に蓄えてあるんだからな!」


 ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「お料理とか焚き付けに欲しいから……」


 ヴゥウウヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥヴゥウウ……。


「馬鹿……」


 ギュッ……。

 ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「おとうさん……て、呼んだ方がいいんだよね……駄目な息子で御免……」


 ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「またそれか? もういい加減よさないか」


 ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「俺の方が半年生まれが早いからってだけだろ! お互い繋がる為に、戸籍の上で形式的に養子になってるのを、事ある事に持ち出すのはもうやめないか? お互いパートナーなんだからな」


 ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。

「そんなの言われなくたって分かってるよ! ずっと暮らして見て分かったんだよ! 父さん見たいな存在だって! そう思えちゃうんだよ! 何時までも子供みたく駄々っ子で御免ね……」


 ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「お前の家に始めて行った時の事覚えてるか……あの(きったな)い部屋でさ」


 ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥヴゥウウ……。


「もう……それは言わないでよ!」


 ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「どうせまた言うんでしょ! 蟹味噌頭ってさ! ぷう……」


 ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「何だよ? それ……?」


 ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「覚えて無いの? 言った方ってさそんなもんだよね! 言われた方はずっと心にひつわ掛かってるものなのにね……?」


 ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥヴゥウウ……。


「ああ……そうだった! 食用蛙(ウシエル)出荷してきたついでに、街で掘り出し物買ってきたよ!」


 ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「掘り出し物って……またカニカマでしょ?」


 ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「タラバだよ!」


 ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「えっ? タラバのカニカマってあるの……?」


「ちょっとまってろ! よいしょっと……」


 ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥヴゥウウ……。


「お爺がよいしょって言ってるよ」


 ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。

 グゥグゥグゥヴゥウウヴゥウウ〜〜〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「あははははは……少し元気になったようだな」


 ギシシシシ……ギシシシシ……ギシシシシ……。

 ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。

 グゥグゥグゥ〜〜〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。

 ギシシシシ……ギシシシシ……ギシシシシ……。

 ドン!


「これだよ!」


 ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


本物(ものほん)じゃん! ゴツゴツしてて大っきいね! 始めて見たよ!」


 ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「タラバしたらばと見せかけて、タラバ蟹だ!」


 ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「タラバしたらばって初耳だけど……?」


 ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「そう言うと思って! ほれ!」


 ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「えっ! すっごいサプライズじゃん! ビッグサイズのカニカマじゃん! タラバしたらばってさ!」


 ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「今日入籍記念日だろ……」


 ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「え……? あっ! そうか……御免……大事な日……忘れてて……」


 ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥグゥグゥグゥ……。

「あの日……喰えなかっただろ……悪かったな……壱人息子(ひとりむすこ)なのにな……突然別れを告げられた時は……心が掻き毟られるようだったんだぜ……」


 ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「……あの時は……ああするしかなかったんだよ……でも結婚式で本当に卒業目の当たりにするとは思わなかったよ……花嫁を置き去りにしてさ」


 ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「家どうしの政略結婚だったんだろ」


 ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「僕を辛い子絡みから連れ出してくれて有り難う……ずっとお礼言えて無くて……御免」


 グゥグゥグゥ〜〜〜〜〜ッヴゥウウ……。

 見詰め合う雄老人弐人(おんたろうじんふたり)……。


「ここ閉めようと思うんだ……どう思う」


 ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥヴゥウウ……。


「何だよ……急にさ……」


 ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「これ申し込んできたよ」


 ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥヴゥウウ……。


「介護付きマンション? ここで養殖(ウシエル)しながら最後を迎えようって言ってたんじゃ……?」


 ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


(つい)の棲家は、別に人里離れたとこじゃなくてもいいと思うんだ……もう昔と違ってオープンでも良いんじゃないか……そう言う時代になったんだよ」


 ヴゥウウヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。

 ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「ウシエルはどうすんのさ!」


 ヴゥウウヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥヴゥウウ……。


「もともとここに自生してたんだから、自然に還るさ! 後は主樣が決めてくれるよ」


 ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「お前の事が心配なんだよ! 頼むから俺より壱日(いちにち)でもいいから長生きしてくれよ! 俺を看取ってくれんのはお前の役目だぞ! 形式的には息子でもあるんだからな!」


 ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥヴゥウウ……。


「何だよ! 否定するのか肯定するのかどっちなんだよ! もう!」


 ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「お前の受け取った財産の壱部(いちぶ)使わせてもらうからな」


 ヴゥウウヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥヴゥウウ……。


「それは好きに使ってって言ってたじゃん! ずっと手も付けてなかったよね……計画してたんだね……黙ってさ……」


 ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。

 ヴゥウウヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥヴゥウウ……。


「お前が嫌だっていっても、もう決めたんだ! 頼むからお医者さんに診てもらおうよ! 心配何だよ! 壱生に壱度(いっしょうにいちど)の俺の我儘聞いてくれよ! この通りだ!」


 ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。


「やめてよ! 頭なんか下げないでよ! 分かったよ! 分かったからさ……ニョンタン」


 ヴゥウウヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥヴゥウウ……。

 静かな湖畔の森の中、夜の帳に漏れる灯りが揺れていました……。

挿絵(By みてみん)

デザインワークス:島猫。樣

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨澤穀稼の作品
新着投稿順
総合ポイントの高い順
デザインワークス:コロン様
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ