リライト企画:弐次創作リライト雨澤劇場 3581(島猫。樣作品 3581リライト)
ふたり
奥深い森へと繋がる曲がりくねった壱本道。
陽の光より遠く遠く遠ざかる鬱蒼とした木立ちに覆われ、凸凹とした湿り気が滴るその突き当り。
少し開けた苔生す木々が静かにゆれて、小さな湖畔に隣接する小屋から灯りが漏れていました。
暖炉に燃ゆるパチパチと揺れる火に照らし出される弐人の雄老人が限り少ない命を寄り添わせておりました。
ヴゥウウ〜〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
ヴゥウウ〜〜〜〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
ヴゥウウ〜〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「お互い年をとったな……」
ヴゥウウ〜ッグゥグゥグゥ……。
「そうだね……でも、お互いの時間を共に共有出来たんだから僕は幸せだったよ」
ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「何弱気な事いってんだよ! これからだって……」
ヴゥウウ〜〜〜〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
ヴゥウウ〜〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
ヴゥウウ〜〜〜〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「御免……今日も柴刈りあんまし刈ってこられなくて」
ヴゥウウ〜〜〜〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「無理すんなって言ってるだろ!」
ヴゥウウ〜〜〜〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「少しでも役に立ちたくて……」
ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥヴゥウウ……。
「その度に倒れてたんじゃな! 森の中だったら見つけられなかったかも知れないんだぞ! 薪は充分に蓄えてあるんだからな!」
ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「お料理とか焚き付けに欲しいから……」
ヴゥウウヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥヴゥウウ……。
「馬鹿……」
ギュッ……。
ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「おとうさん……て、呼んだ方がいいんだよね……駄目な息子で御免……」
ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「またそれか? もういい加減よさないか」
ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「俺の方が半年生まれが早いからってだけだろ! お互い繋がる為に、戸籍の上で形式的に養子になってるのを、事ある事に持ち出すのはもうやめないか? お互いパートナーなんだからな」
ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「そんなの言われなくたって分かってるよ! ずっと暮らして見て分かったんだよ! 父さん見たいな存在だって! そう思えちゃうんだよ! 何時までも子供みたく駄々っ子で御免ね……」
ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「お前の家に始めて行った時の事覚えてるか……あの汚い部屋でさ」
ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥヴゥウウ……。
「もう……それは言わないでよ!」
ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「どうせまた言うんでしょ! 蟹味噌頭ってさ! ぷう……」
ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「何だよ? それ……?」
ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「覚えて無いの? 言った方ってさそんなもんだよね! 言われた方はずっと心にひつわ掛かってるものなのにね……?」
ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥヴゥウウ……。
「ああ……そうだった! 食用蛙出荷してきたついでに、街で掘り出し物買ってきたよ!」
ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「掘り出し物って……またカニカマでしょ?」
ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「タラバだよ!」
ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「えっ? タラバのカニカマってあるの……?」
「ちょっとまってろ! よいしょっと……」
ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥヴゥウウ……。
「お爺がよいしょって言ってるよ」
ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
グゥグゥグゥヴゥウウヴゥウウ〜〜〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「あははははは……少し元気になったようだな」
ギシシシシ……ギシシシシ……ギシシシシ……。
ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
グゥグゥグゥ〜〜〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
ギシシシシ……ギシシシシ……ギシシシシ……。
ドン!
「これだよ!」
ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「本物じゃん! ゴツゴツしてて大っきいね! 始めて見たよ!」
ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「タラバしたらばと見せかけて、タラバ蟹だ!」
ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「タラバしたらばって初耳だけど……?」
ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「そう言うと思って! ほれ!」
ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「えっ! すっごいサプライズじゃん! ビッグサイズのカニカマじゃん! タラバしたらばってさ!」
ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「今日入籍記念日だろ……」
ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「え……? あっ! そうか……御免……大事な日……忘れてて……」
ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥグゥグゥグゥ……。
「あの日……喰えなかっただろ……悪かったな……壱人息子なのにな……突然別れを告げられた時は……心が掻き毟られるようだったんだぜ……」
ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「……あの時は……ああするしかなかったんだよ……でも結婚式で本当に卒業目の当たりにするとは思わなかったよ……花嫁を置き去りにしてさ」
ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「家どうしの政略結婚だったんだろ」
ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「僕を辛い子絡みから連れ出してくれて有り難う……ずっとお礼言えて無くて……御免」
グゥグゥグゥ〜〜〜〜〜ッヴゥウウ……。
見詰め合う雄老人弐人……。
「ここ閉めようと思うんだ……どう思う」
ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥヴゥウウ……。
「何だよ……急にさ……」
ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「これ申し込んできたよ」
ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥヴゥウウ……。
「介護付きマンション? ここで養殖しながら最後を迎えようって言ってたんじゃ……?」
ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「終の棲家は、別に人里離れたとこじゃなくてもいいと思うんだ……もう昔と違ってオープンでも良いんじゃないか……そう言う時代になったんだよ」
ヴゥウウヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「ウシエルはどうすんのさ!」
ヴゥウウヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥヴゥウウ……。
「もともとここに自生してたんだから、自然に還るさ! 後は主樣が決めてくれるよ」
ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「お前の事が心配なんだよ! 頼むから俺より壱日でもいいから長生きしてくれよ! 俺を看取ってくれんのはお前の役目だぞ! 形式的には息子でもあるんだからな!」
ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥヴゥウウ……。
「何だよ! 否定するのか肯定するのかどっちなんだよ! もう!」
ヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「お前の受け取った財産の壱部使わせてもらうからな」
ヴゥウウヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥヴゥウウ……。
「それは好きに使ってって言ってたじゃん! ずっと手も付けてなかったよね……計画してたんだね……黙ってさ……」
ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
ヴゥウウヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥヴゥウウ……。
「お前が嫌だっていっても、もう決めたんだ! 頼むからお医者さんに診てもらおうよ! 心配何だよ! 壱生に壱度の俺の我儘聞いてくれよ! この通りだ!」
ヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥ……。
「やめてよ! 頭なんか下げないでよ! 分かったよ! 分かったからさ……ニョンタン」
ヴゥウウヴゥウウヴゥウウ〜〜〜ッグゥグゥグゥヴゥウウ……。
静かな湖畔の森の中、夜の帳に漏れる灯りが揺れていました……。