74話
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74話
「ついてきてほしいんだけど、どうだい?」
「おんしもか…………」
透の家に来た。買うもの買ったので帰ろうと思ったが、どうやらついてきてほしい店があるらしい。
最近こういうのばっかりだな、と思いながらも、大魔王様は優しいので快諾する。帰っても別にやること決めてないし。
「スイーツの店なんだけど」
「どうせ桃かチーズ系が名物なんじゃろ」
「ま、そうだよ」
「寧といけばいいじゃろが」
「良い店だってわかってからだよ、本命は」
「ワシで試すな!……まあよい。透の奢りじゃ」
「ん、当然」
そのお店は、やはりというべきか、桃とチーズを推しているお店だった。
内装は、可愛すぎず、シックすぎず、落ち着いた雰囲気に可愛らしさをマッチさせている。
男性のみでは入りづらいだろうが、男女のカップルなら雰囲気を気にせず楽しめるだろうか。
席に案内され、メニューを見る。
「桃、チーズ、桃、チーズ、桃とチーズ、チーズ、桃……」
「詠唱かな?」
「透と寧のデートの為にあるような店じゃな。じゃが寧からは聞いた事がない」
「先週できたばっかりらしいからね。それもひっそりと。知れ渡ったら流行るんじゃないかな?」
「混んだら嫌じゃのー。通販とかないかのう」
さて、注文を決めよう。
透は当然、チーズケーキ。普通のではなく、桃のレアチーズケーキだそうだ。
大魔王様は桃のパンナコッタと、桃のチーズタルト。
「写真でもう美味しいのが確定してるのじゃ」
「ふふ、楽しみだね」
商品が届く。
まずは桃のレアチーズケーキ。
普通のレアチーズケーキの上に、ゴロゴロとカットされた桃が、寒天で固められて乗っている。
桃がとても柔らかく、味も濃厚。レアチーズケーキの酸味にも負けない甘さで、互いの味を引き立てあっている。
「これは……いいねえ、桃もチーズケーキも、両方しっかり楽しめる。よし、コレは寧と……」
次は桃のパンナコッタ。
まず、上に載っている桃のコンポートが目を引く。ツヤツヤで美味しそうだ。
容器の中で、斜めに三層になっており、まず上がチーズパンナコッタ。間にブルーベリーゼリーを薄く挟み、下に桃のゼリー。
これも全体の調和が取れており、プルプル食感も楽しく食べやすい。
「うむ、美味いのう。見た目も良いし、くどい甘さじゃなくて食べやすいのじゃ」
最後に桃のタルト。
上から見ると桃の岩山のようだ。隙間なく桃が溢れている。
断面にも、少し桃が潜んでいる。桃を最大限に楽しめるタルトだろう。
タルト生地に、ふわふわのチーズムース。そしてジューシーで甘くトロトロの桃。
三位一体、まさに極上だ。
「いいねタルト。生地もしっかり美味しい」
「んふー、美味いのじゃ!この店気に入ったのじゃ」
大魔王様は大満足なようだ。
結局、またあと数品を頼み、おなかいっぱいまで食べてしまった。
「今日はありがとね、やみちゃん」
「うむ。……寧と行った時は、ワシにお土産を忘れるでないぞ」
「あは、そうするね。タルトがいいかな?」
「んむ!」
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