72話
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72話
「寿司が食いたいのう!」
「また海鮮?」
「またとはなんじゃ!」
とある日、大魔王様は飢えていた。
いや、飢えるほど稼いでいないわけではないが。
「最近は肉ばっかり食っとる気がしてのう。いちごの家にお邪魔すると数日分の肉が手に入ってしまうのじゃ」
「おかげで私も美味しいお肉食べられるから嬉しいけど。またなにかおかえししないとねー」
いちごの家にいくと、絶対にお土産をもたされる。
いちごの実家からの試供品や、いちごの準備してる商品開発のテスターとしてお願いされる事が多いが、当然美味しいので、寧も大魔王様もめちゃくちゃ助かっている。
いちごが店を出す計画は順調らしい。店を出したら壁にサインをしてくれと頼まれている。
「というわけで肉はいちご関連だけでよい。魚も食うてバランスとらんとな」
「まあ、そうねえ。じゃ、私の友達の親がやってる店にいく?一見お断り、予約必須のお店なんだけど、友達のお父さんがやみちゃんのファンらしくてねー。歓迎してくれると思うけど?」
「おお、行けるなら行きたいのじゃ!……じゃが予約はしようかの。いつ空いてるか聞いて置いてくれんか」
「ん、じゃちょっと友達と電話してくるね」
「来たのじゃ」
「やみちゃん!いらっしゃい!カウンター座ってくれるかい?」
「うむ」
「寧ちゃんもいらっしゃい!ウチのがいつも世話んなってるね!」
「あは、おじゃましまーす」
海鮮割烹の店に来た。
寧が友達に電話すると、どうやら空きがあったらしく、今日早速食べにくることが出来た。
今日はこの店で寿司コースをいただく。
先付、蟹の雲丹醤油漬け。
新鮮ぷりぷりの蟹身を、雲丹を溶かした醤油で漬けたものだ。
吸物、伊勢海老のお味噌汁。
出汁がとにかく美味しい。
伊勢海老の身もほどよく転がっていて、味わいと食感が楽しい。
そしてお寿司。
まず一貫目、真鯛。
引き締まり、トロッとした身はまさに極上。
噛むほどに旨味が溢れてくる。
二貫目、シマアジ。
真鯛よりさっぱりかと思ったが、しっかりとした濃い旨味を感じる。
三貫目、車海老。
ねっとりした身から甘味を強く感じる。
食感がやはり面白い。
四貫目、タチウオの炙り。
想像とは違い、しっかりと脂を感じる。
炙っているためさらに脂の甘味がひきたっている。
五貫目、煮穴子。
タレがほどよく染みてとても美味しい。
穴子本来の脂に馴染み高め合うような深みがある。
身もほろほろで、食べていて気持ちがいい。
六貫目、中トロ。
言うことなしの王道の味。
処理が良いのかやはり臭みは無く、マグロのもつ旨味を最大限にぶつけにきている。
七貫目、いくら醤油漬け。
これもやはり最高。
ねっとりぷちぷちの食感。
醤油の塩味、ワサビの辛味がいくらの美味しさを引き立てている。
八貫目、最後はだし巻き玉子。
口の中がだしとたまごの優しさで包まれるようだ。
しかし、終わりを感じてしまってすこし物悲しい。
「んむ……食べてしもうた」
「美味しかったねほんとに……大満足……」
2人とも、もう終わりの気分だ。
とても美味しかった。こういうのは物足りないくらいが1番いいというし、そういうものなのだろう。
「やみちゃんが来てくれたから、最後にもうひとつあるよ!」
「なんじゃまだあるのか!なんじゃろなあ、気になるのう」
「はいよ、甘味の、わらび餅!うちの家内の手作りだよ」
「わああ、わらび餅じゃあ!ワシわらび餅好きなんじゃ。……美味いのう!もちもちぷるぷる、きな粉の仄かな甘味と黒蜜のガッツリした濃い甘味がやはりわらび餅には合うのう。うむ、美味い!」
「そんなに気に入ってくれたなら嬉しいねえ。じゃ、お土産にも入れておこうかね」
「お土産も!嬉しいのう、嬉しいのう」
最後まで美味しく楽しく食事を楽しんだ。
お土産にはだし巻き玉子とわらび餅をいただいた。最高。
帰り際に店主に握手を求められ、ついでとばかりに色紙へのサインもしてやった。
店主はそれはもう笑顔だった。
これを機に、一日一枠限定で、大魔王様のファンのみ紹介無しで入店できる『大魔王様枠』が開設された。
今はもう、その枠のみで数カ月待ちになっているらしい。
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