44話
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44話
「防護魔法に全力かけて、ふたりで入るのです。迷宮は入ったところから絶対に出られるようになってるですから、なにがあっても一撃だけ防げるようにしていれば死にはしないのです」
「んむ、まあそれしかないかの」
「え、大丈夫なんですか……?え……?」
「ほとんどの場合は大丈夫なのです!レインがやばいと思った1層目は1個しかなかったです!」
「ん、冥府のラビリンスじゃよな?あれはやばかったのじゃ。あれ以外なら大丈夫じゃ」
「どれだけやばいんですかそれ……!」
レインが到着、ラビリンスワームにはひとまずふたりで様子見として潜ってみようという事になった。
入口の大きさからして、そんなに大変な迷宮ではないだろうという見立てだが、最悪の場合というのもある。ラビリンスワームは分裂するのだ。それこそ千年に一度とかの頻度だが。分裂したての迷宮は、入口の大きさが不安定だ。数十年かけて、難易度に見合った大きさに変形していく。
分裂した場合、元の難易度の8割ほどのものが2つに増える。
つまり、最悪の場合というのは、ふたりが死を覚悟したほどの難易度の冥府のラビリンス本体、もしくはその分裂体、ということになる。
……まあ、数多あるダンジョンからそれが選ばれる確率など知れているはずだが。自分たちがこの世界にいる以上、なにが起こるかはわからないのである。
「じゃ、いってくるのじゃ。1時間で帰らんかったら寧にはよろしく言っておいておくれ」
「久しぶりのラビリンスなのです!」
「え、そんな軽く!え!えー!!」
「んーむ、どうじゃ?」
ラビリンス内部。ひとまず即死は無いようで安心し、調査をはじめる。
「瘴気もないですし、魔力も薄いのです」
「これは抜け殻か雑魚じゃな」
「ひとまず安心なのです!ちょっとだけ奥に進むです?」
「うむ、階層があるとまた話が違うからの、軽く行き止まりまでじゃな」
ふたりは慎重に、かつ大胆にラビリンスを進んでいく。
ラビリンスには、稀に落とし穴や毒矢の罠などがあるタイプも存在する。ほとんどのラビリンスは内部で作り上げた魔物のようなもので侵入者を迎撃するのだが。
「魔物もおらん。やはり抜け殻かの?しかしなんでまた抜け殻なんぞが……」
抜け殻というのは、ラビリンスワームのコアが破壊されたときに生まれるもので、時空間魔法で維持していた本体が魔力暴走で破裂して飛散、散らばったそれが残留魔力を用いてラビリンスの体をなそうとする、亡骸である。
それらは時間とともにに消え失せるか、他のなにかの魔力を吸って新しいラビリンスワームとして復活するか、となるのだが。
「ワシやレインの魔力程度じゃ復活もできんじゃろうし」
「抜け殻なら普通の人間さんの倉庫にでもなるですかね?」
「お、最奥かの?なーんもない。階段も落とし穴も扉もないのう。抜け殻確定じゃの」
幾本か石柱の立つ最奥の広間に到着。
1番奥が広くなってるのはラビリンスにありがちな構造である。
「……あれ、なんか倒れてるです?」
「ありゃ……予想外のトラブルじゃ」
石柱の裏、死角になっていたところに、人が倒れていたのだ。
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