38話
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38話
「ピクニック、楽しかったのじゃ……」
「楽しかったねぇ、秋にもいきたいかも」
「紅葉狩りじゃぁ……」
「溶けてるわね……」
3人でピクニックに行った翌日、大魔王様は溶けていた。
楽しかった日の記憶が鮮烈なうちは、だいたいこうやってロスで溶けるのだ。
「今日はもうなんもせん。全部明日やるのじゃ」
「まあ、やることないし……買い物も明日かなぁ」
「ピクニック……お弁当美味しかったのじゃあ……」
「おにぎりつくってあげるから、テレビでも見ときなさいな」
「助かるのじゃ……」
台所に行った寧をソファから見送り、リモコンでテレビをつける。
ニュース、バラエティ、色々やっているが、どれも別に興味がそそられるものではない。
「なんぞないかのう」
チャンネルを切り替えていると、ひとつ、面白そうな番組があった。
「ほこてん……歩行者天国?仮装パーティかのう?ほお、いろいろおるなぁ……魔物の仮装なんぞもあるんか。なんの意味があるんじゃ?ほお、騎士やら魔術師の仮装も…………ありゃ?」
ほこてんを眺めていた大魔王様。
ひとつ、とてつもなく気になる人物を発見。
「いやいや、他人の空似ってやつじゃ。おるわけない。あやつは転移どころか魔法も使えんかった。……おるわけ、ない、事もないのか、ワシがおるんじゃから……いやいや」
ほこてんで、見覚えのある顔を見た。
前の世界の、屋敷の使用人。
魔族でありながら、魔族の特徴をなにももっていない、魔法も使えない、不思議な子。
研究対象として、そして屋敷の非魔法衛兵として雇った、戦争孤児。
「ユイ……いや、違う。あやつは……いやでもあの雰囲気は……」
テレビの向こうでは、カメラを向けられた『ユイ』が、満面の笑みでダブルピースをしていた。
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