35話
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35話
「キュイ」
「お、もう飯の時間かの。おいで、好きなだけ食うのじゃ」
「キュイ!」
トゥルーカーバンクルのリンは、毎日、大魔王様から魔力を食っている。
通常のカーバンクルは果物や野菜、たまに自分の額にあるものと同じ宝石を食すのだが、トゥルーカーバンクルの額の宝石は『純魔石』、つまり魔力の純粋な塊。そして、その純魔石は、込められた魔力の性質で、石の内部に渦巻く色が変わる。
「やはり紫と黒になりよるなぁ。たまにはレインのも食わせんと、綺麗な色にはならんのう」
「私は黒も好きだけどね。純白の毛並みに、漆黒の目と宝石、かっこよくない?」
「寧が言うならよいかの……」
「キュイ」
トゥルーカーバンクルの生態は、わかっていないものが多い。なにせほぼ伝説の生物なのだ。エルダードラゴンや神話生物並だと思ってもいいほど。大魔王様たちが最初の飼育者ということでほぼ間違い無いだろう。
まず、食性は、先程の通り、魔力。
トゥルーカーバンクルがそうなのかはわからないが、少なくともリンは大食らいで、毎食ごとに大魔王様の魔力の1割をもっていく。これは、前の世界で言うところの、普遍的な宮廷魔導師5人の全魔力分程度だ。多少の差異はあるが、中々の量だと言って問題無い。
続いて、行動について。
カーバンクルは寝るが、リンは寝ない。
毛が抜けることもないし、体が汚れる事も無い。排泄もしない、水を飲むこともない。
風呂はたまに、寧とはいっている。単純に気持ちいいのだろう。
そもそも、生物としての成り立ちが違うのだ。
向こうの世界には、2種類の生物がいる。
『神造生物』と『自然生物』だ。
『神造生物』は、その名の通り、神が創造した生物。自然に依らない、むしろ自然を造り操るような生物。フェアリーやトゥルードラゴンがそうだ。
『自然生物』は、その神造生物から生み出されたものや、神造生物を取り巻く環境から発生した生き物。こちらは、我々の知る生物に近い。
ちなみに人間は、神造生物派と自然生物派がいる。大魔王様は、魔族、エルフ、人間、全て自然生物派で、大元は伝説のエクスマキナと言われるものではないか……と考察している。
話が逸れたが、カーバンクルは自然生物、トゥルーカーバンクルは神造生物だ。
そして、神造生物は、造られた『理由』があるという。
トゥルードラゴンは天候の制御、フェアリーは自然の調律、など。
では、トゥルーカーバンクルは?この子達は、如何なる理由で生み出されたのか。
「……かわいいが必要じゃったんじゃろうなぁ」
「キュイ?」
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