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27話

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27話


「きたのじゃ〜」


「いらっしゃい、やみちゃん!」


「おじゃまするのじゃ、いちごよ。……うむ?レインもおるのか?珍しいのう」


「仮眠中だから静かにね!どうせならって思って、呼んじゃった!!お昼ご飯はテキサスバーベキューだよ!」


「うお、グリルでかいのう……買ったのかの?」


「うん、新作だったから買っちゃった!掃除だけ大変そう!」


「さっすが、肉に人生賭けとるのう……昼飯が楽しみじゃ」


夏、朝、いちご宅。

庭にあるベンチに、レインが寝ている。

庭のど真ん中には、クソデカグリル。焼却炉かと見紛うほどのデカさである。中には牛リブと丸鶏が入っているらしい。いい匂いが庭中に広がっている。


「配信は昼時からかのう?」


「そうですね!ひとまずゆっくりしましょう!」


「うむうむ。ああ、これ、親御さんへ手土産じゃ。冷やして食うてくれ」


「わ、羊羹!ありがとうございます!ちょっと渡してきますね!」


「うむ」


屋内に走っていったいちごを見送り、ベンチに近づく。レインは、すぅすぅと寝息をたてて寝ている。


……その腕には、ぷにぷにの、うごめく、透明な…………魔物。


「おいレイン、おい、おきんか。おい、説明せんか!」


ぺちぺちぺちぺちと体の隅から隅まで叩き倒してレインを起こそうとする大魔王様。腕の中の魔物はそれにほぼ反応を示さず、うごうごと蠢いているだけだ。


「はぁ〜ぁ…………やみちゃんです……?どしたのです……?」


「どうしたもこうしたもあるか、ソレ、説明せい、そのスライムはなんじゃ!」


「スライム……あぁ、スラちゃんです?かわいいでしょ〜!」


「うむ、あっちのスライムとはまったくもって違うのはわかるぞ、かわいいのもわかる、わかるが、詳しく説明せんか!」


「あぅ、えっとですね……」


レインいわく、これは魔導生物だ。

レインの魔力を糧に、レインのためにのみ存在する、いわばレインの魔力に形を与えて使役している、ようなイメージである。

今のところ単純なもの、スライムやスケルトンを生成するのがやっとだが、熟達すれば、もっと複雑な命令をこなせるような、まさに『生物』を生み出せるようになるだろう……とのことだ。


「だから、安全なのです!」


「んむ?安全なのはわかっとるわい」


「じゃなんであんな焦って起こしたのです!?」


「レインの魔力の色しかないんじゃからレインのなにかなのじゃろうて。……そんな事より魔導生物じゃと?アレはワシが結局諦めた術じゃぞ?なぜおぬしが知っておる?どうやって完成させた?」


「あ、やみちゃんもやっぱり研究してたです?あっちじゃ資料が少なすぎて無理だったのです……こっちで生物学とか電気系をちょびっと学んで、なんとかここまで出来たですよ!」


「うおお、先を越された悔しさと、理論はあってた嬉しさと、うおお、複雑じゃ!複雑な気持ちじゃ!」


「とうぜん、やみちゃんに教えるためにもってきたのですよ!」


「うう、教えてほしいのじゃ!ワシの理論では魔力の繋がりの維持がちょいと不安定での、つまり魔導生物の形の維持ができなんだ。どうすればよいのじゃ?」


「こっちで言う電池と、電波の応用なのです。送受信の波長を合わせた魔力波で、魔導生物内の核に対して魔力を送るのです。魔導核への刻印はわかるですよね?」


「うむ、それはわかる」


「魔導核に、受信の命令も刻んでおくのです。魔力の受信と体内への拡散の命令と、体をどう動かすかの命令と、二分割なのです」


「混線を防ぐわけじゃな?一応秘伝なのじゃが、やはりハイエルフは知っておったか」


「それからここをこうして…………」


「なるほど、じゃあここは…………」


「というわけなのです」


「おおよそ理解したわい、助かる」


「こほん!」


「…………いちご、戻っておったのか。すまん、話し込みすぎたのう」


「いいですけれど、そろそろお昼ご飯ですよ!」


「ごはん!たのしみなのです!!おっにく、おっにく!なのです!」


「待たせてすまんの、さて、昼食にしようぞ!」


「はい!あとでそのスライム、触らせてくださいね!」


「……安全なんじゃよな?」


「安全、なのですよ!」

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