~昔話と始まりの転生者~
「事の始まりは数万年前と言われているくらい昔の話なんだが、魔族と人間は争い合っていた、そこに宙人という奴らが現れて、三つ巴の戦いになった後、停戦してそこから種族間での大きい争いはなくなっていった。……この辺までは全種族のガキが最初に教えられることなんだが」
「ふむ。それは転生の際に聞かされたのう。2千年前から亜人と呼ばれる者も現れ始めた、ということもな」
「オーライ。で、だ。その争いを止めたのが、『アース』からきた3人の転生者だという伝承が残ってんだ。この3人はこっちにない技術を持っていて、『神の使い』なんて持て囃されていた。それぞれが人間、魔族、宙人に転生したんだが、驚くことにこの3人が元は家族だった、ってことらしいんだ。そんで、そこからの紆余曲折は伝承にも残ってないんだが、最終的に和解して、半永久の停戦協定、ということだ」
所々追加の説明を挟みながら、ダーイークの歴史講座の幕が降りる。元々の教養が高いのか、それともダーイークが話上手なのか、皆聞き入っており、〆の言葉の後には店内から拍手が巻き起こっていた。
「ふむ。聞く限りじゃと、超スケールの家族喧嘩じゃのう」
ジーロウのその言葉に、拍手が鳴り響いていた店内がスっと静まり、誰かの吹き出す音を皮切りに、今度は笑い声が響き渡った。
「お前さん面白いな!!言われてみれば家族喧嘩にゃ違いねえ!!」
その中で一際、ダーイークの声は遠くまで響いていた。
「……っと、悪い悪い。それで、その3人なんだが、『始まりの転生者』としてギルドとかにも銅像があったりするから、行った時にでも拝んでおくといいさ」
「なるほどのう。そうさせてもらおうかの」
「っとそうだ。色々楽しませて貰った礼だ。これをやるよ」
そう言うと、ダーイークは懐から何かを取り出した。見るとそれは木製のカードケースであり、ダーイークはそこから名刺を1枚取り出した。
「改めて、俺はここの建築を任されているんだが、それとは別に家具作りもやっててな。その名刺を家具屋で見せれば俺の商品を格安で売ってくれる。必要になったら使ってくれ」
「ほう。いたせりつくせりで、何か悪いのう」
「良いってことよ。転生者もその家族もフランクな奴が多かったが、その中でもお前さんは格別だ。久しぶりに酒なしでいい夢見れそうだぜ」