~歓迎と『平和の象徴』~
「俺の名はダーイーク。この街全体の建築を任されている。転生者サマの家も俺たちで作ったんだぜ?」
大男、ダーイークがそう言ってジーロウへ手を差し伸べた。しかしジーロウは、手を取りつつもそんなダーイークの言葉に首を傾げる。
「はて、ワシはこの街に住むとはまだ決めていなかったんじゃが……」
「だとしてもここでの生活拠点は必要だろ?この街で永住するにしても、冒険や長旅で家が必要ないとしても、宿だけじゃ手狭になるだろうし、金もかかるってもんだ。それに、転生者サマ、まだこの世界の金も式長様から貰った分だけでそこまで潤沢、という訳でもないだろう?」
ダーイークの言葉に、ジーロウは首を縦に振る他無かった。この世界について簡単に教えてもらっただけで、ジーロウの異世界生活はまだ24時間も経過していない。宿も1週間分の代金を払ってもらっただけで、それ以上泊まるにはさらにお金がかかる。
「それによ、もし外に出るってなっても、転生者サマが暮らしていた家、というのは箔が付くってもんだ。お前さんの前に転生してきた奴の家も、移住希望者が殺到してオークションになったくらいだしな」
「ジーロウじゃ」
「ジーロウ?お前さんの名か」
「うむ。転生者がこの街に現れるとなれば、名を知っていた方が分かりやすいじゃろ」
それもそうだ、とダーイークは笑う。
「っと、話を戻そう。つまりお前さん、ジーロウの家、というのは作るだけ得って話だ。空き家になったとしても、ジーロウが住んでいた、という事実だけで観光名所になったりするからな」
「随分と転生者を持ち上げるもんなんじゃのう、この街は」
「そりゃそうさ。魔族にとっても人間にとっても、転生者というのは『平和の象徴』だからな」
「平和の象徴……?」
ダーイークのその言葉に、ジーロウは再び首を傾げた。
「おっと、この話を式長様はしなかったのか?」
「うむ。昨日到着した時間が遅くてのう。ルーフェン殿とは雑談くらいしか出来ていないのじゃ」
「てことは、まだギルドにも行ってないってことか。お前さんさえ良ければ、伝承について説明するが」
「ダーイーク殿の時間は大丈夫なのかのう?これから仕事では?」
「逆逆。さっき仕事終わらせたばかりでさあ。向こう数日休みになってるから、こっちの時間は気にしなくても大丈夫だ。ギルドの開く時間までには終わらせるしな」
そういうことなら、とジーロウはダーイークへ着席を促した。ダーイークは促されるままに座ると、奢りだと言って2人分の珈琲を注文する。部下はいつの間にかダーイークらのいるテーブルに椅子を寄せて、全員が既に聞く体勢に入っていた。