4つのエリア
前回のあらすじ
勢いで出国したよ。
「え、なんでついてきてんの?」
「ちょっ!そりゃないっすよー!言ったじゃないですか、ひとりでも強くなる方法を教えてくださいって!」
「いやーまさかほんとについて来るとは思わなかったニャ。ひくわー」
「引かないで!
だって〜、あんだけ どや顔で『だが断る』キメといて、そのあと街になんて戻れないでしょ、それこそなんでいんの?ってなるじゃないですかー」
「それはそれでおいしいニャw
いやマジで、よかったのかニャ?その場のノリで慣れ親しんだ土地から出て行くことになったニャ。絶対後悔するニャ」
え、ボクの事心配してくれてんのかな。なんだかんだいってけっこういい人だよねナマエさんって。
「んーまあたしかにノリで決めましたけど、後悔してないですよ。持ち家があったわけじゃないし、アイテムは全部持ち歩いてるし、それとその…ボクを待ってる人も、別れを惜しむ人も、いませんし…」
「さすがボッチ!期待を裏切らないニャww」
訂正します、こいつはやなやつです。
あ、ニルギリのことちょっと忘れてたけど、あの子しばらくインできないって言ってたし、引っ越しして落ち着いたら呼べばいいよね。
「それに、いつかはウェルスタンを出て旅がしたいなって思ってたんです。だから絶好のチャンスだって思ったんですよ。
ところで!いい加減教えてくださいよ、これからどこへ向かうんですか?」
「あーどこがいいかニャア、どっか行きたいところあるかニャ?」
「え、ノープランすか…
ってか決めていいの!?えーまって!」
やっぱ東エリアかなぁ、東の都市『イガシ』。日本要素強めのオリエンタル風な街並みで、街中に水路が張り巡らされる水上都市、いいよね〜。上級プレイヤーの間で、いかに立派な神社仏閣を建立できるか競うのがはやってるらしい。お寺巡りしたいなー。
北の都市『ノルトフ』もありだな。雪と鉱山とスチームパンクがテーマでかっこいいんだよね。でもなースラムというかマフィアの街ってかんじで物騒なんだよね。そういう裏社会×ダークファンタジーの世界観が刺さる人には刺さるみたいだね。ボクも嫌いじゃないけどね。
南エリアは砂漠ばっかりで、都市の名前は『サウルス』。エジプトとかアラビアとかインディアンとかサバンナとか、とにかく乾燥してる地域をぎゅっとしたかんじ。ファンタジー的な要素は他の都市と比べると弱くて、正直あんまり人気がない。それでも主な産業に魔物狩りってのがあって、レアな魔物がたくさんいてレアなドロップアイテムを落とすから、それを目当てによそから冒険者がやってきて観光地っぽくなってるんだって。定住者は少ないけど。それと運営とよくもめてるけど、カジノも有名だよね。ボクはギャンブルはあんまり興味ないかな。色んな意味で玄人向きですサウルスは。
ちなみにボクらがいたのは西エリアの都市『ウェルスタン』。周りは森と平原が広がってて、さらに城壁に囲まれた石造りの街。まさに古典的な王道ファンタジーってかんじ。農業や林業が盛んで、豊かでのんびりしてて、職人系プレイヤーに人気のエリアだよ。
「いつか全部まわりたいですけど、まずはイガシかなー。イガシでお願いします」
「お、いいねぇーいってらっしゃいニャ。オイラは南に行くからここでおわかれニャ」
「おいてかないで!目的地決まってるじゃないですか!
なんで南なんですか?」
「東は遠いからいやニャ。西に来るまで北にいたから北はいやニャ。南はおもろい所だし、親善試合に出やすそうだからいいニャ」
「え、ナマエさんあの親善試合に出るつもりですか!?」
親善試合、またの名をエリア対抗マッチ、要は東西南北の都市の代表選手がガチンコで戦うPvPイベントだよ。
「そんな簡単に出られるもんなんですか?あれってプライムギルドマスターが決めるんですよね、選手とか組って」
「なんとかなるニャ。あそこのおばちゃんとは仲いいニャ」
サウルスの統治者をおばちゃんって、やっぱただものじゃないな…
「んで、オマエサンも出るニャ、親善試合」
「はあああ〜〜!!?」
つづく