この先へ進むと二度と元の世界には戻れない、 負けても、勝っても
やばい。どうしよう。こんなことになるなんて思ってなかった。軽い気持ちで来てしまった。正直言うと、ちょっと引き返したくなってきた…こわい。
って刻まれた石碑が、コロシアム中央に空いた大穴の前に置いてあるよ。
…そりゃね、ラスボスダンジョンに入ったらフィールドに戻れなくなるのは分かるよ。で、死んだらリスタートしてリトライできるって思うじゃんふつうさぁー。
甘かったぁ…ラスボスも死んだら再復活しないんだから、プレイヤーも死んだらそこで終了ってことかな。まあ、これがフェアだっていうんなら、納得せざるをえない、ような気がする、けど…
しかもしかも!負けて元には戻れないのはまだわかるよ?勝っても戻れないってどゆこと!?勝ったら平和な世界で暮らしていくんじゃないの?元の世界に戻れないってそもそもどういうことなんだろ、キャラクターが消えちゃうのかな…ええーそれは困るなぁ…
「ハイ、じゃあ突入ニャ」
「うそでしょ?!この案内文見ました?!!ちょ、ちゅ!ちゅうちょとかするでしょちょっとはさぁ!!」
「なにをキレちらかしてるニャww あんまり深刻になったらダメニャ、敵の思うツボニャ、ふらっと飛び込んでみよ、さあ行くニャ」
「うええまじっすか…ちょ、え、し、シードルさんは?どう思います??」
「ワタシかい?ホッホッホ、ワタシはネェ、この世界が壊れることを望んでいるのだから願ったり叶ったりさ。もちろんやるからには負ける気はないヨ、ワタシがこの世界を終わらせるんだ!」
ひえ〜!なんかもう魔王みたいなこと言ってる…
「ゆ、靱負さんはっ!?」
「…」
あいかわらず無表情で、じっとこっちを見つめてくる。くそー何考えてんのかさっぱり分かんねぇや!
今までなぁなぁにしてきたけど、今日くらいはしゃべってほしい!あきらめないぞ!
「靱負さんは、どう思いますか?」
「…」じっ
「…靱負さん?どう思いますかって、なんかしゃべってよ」
「…」じっ
「…」ギン!
「…」じ〜
だめだ耐えられない!私の負けだあっ!ただただイケメンと見つめ合うだけの時間!ちくしょうイケメン!!
やだもーーーなにこのメンツ!!!
「まじで…みんな本気で行くんですか!!?メンタルつよっ!メンタル強いっていうかあたまおかしいんじゃないですか?!まともじゃないよぉ!!」
「え?オイラのことマトモだと思ってたの?ww」
「ちょっと今ふざけないでくださいそういうの置いといて!
だって!このキャラが…自分がなくなっちゃうかもしれないんですよ!いいんですかそれで!!」
「あーー、じゃあ引き返すかニャ?それで魔精に囲まれてのほほんと暮らすのかニャ?オマエサンはそれで満足かニャ?」
「満足かと言われると…でもでも!キャラが消えちゃうのはなぁ〜…そうだ、飛空艇来てましたよね、あの人たちに魔王討伐は任せましょう!あの人たちがもしクリアしてくれたら魔物は消えるしボクらは残るし、それが正解なんじゃないかな」
あ、や…そんな目でボクを見ないでよ。だってだって!
「ごめんなさい、でも、ちょっといったん冷静に考えましょう。今日のところは引き返しませんか?なにもいま決断しなくても、リラックスして、よーく考えてから、そしたらなにか…」
「はー…いいかニャ?よく聞くニャ」
「え、はい」
「だいじょうぶだから、一緒に行こうよ」
「は い…ぇ」
顔あっつっ!!ひいいいいいいいまってまってまってまってなにいまの???んな、ナマエさ…
パチパチパチパチ…!
そこ二人!拍手しないで!なにその顔!!うわ恥ず〜〜!!
その様子を見て声出して笑うナマエさん。
「…っは…
あははははっ」
つられて笑っちゃう。はーうける。
なんだこの人たち、ほんと変な人ばっかだな。あは…最高かよ。
なーんかさっきまで考えてたことが急にちっぽけなことに感じてきたよ。なんであんなに怯えてたんだろ、なんかもうどうでもいいや。
ナマエさんが大丈夫って言ってた。ナマエさんが大丈夫って言うんなら、大丈夫だ。
「よし、行きましょう!」
つづく




