押すなよ、絶対に押すなよのやつ
はぁーモフモフさいこー。
ところでこういう、ピンチのときにヒーローが現れる的な展開はついさっきもあったんですけど、1日2回は多くね?
あ、あの人知ってる。この都市で一番えらい人だ。プライムギルド『アイボリーフォレスト』のギルドマスター・シュナウツァー"閣下"。名前が覚えにくいんよねこの人、たぶんシュナウツァーであってたはず。
国王とかのNPCがいないこの世界で、プレイヤーでありながら統治者をやってる人ですね。グレーの髪色でおヒゲを生やしたイケオジ。生で見るのは初めてだ、しぶいわぁ閣下…
それにしてもなんでこんなところに…
あ、さっきのチンピラBが後ろの方でニタニタ笑ってる。たぶんあいつが呼んだんだな。
「げ、やばいニャ。このタイミングで出くわすのは最悪ニャ…」
おお?ちっちゃい声でなんか言ってるけど、もしかしてナマエさん動揺してる?あの唯我独尊のナマエさんでもシュナウツァーさんには敵わないってことかな…
「よー お山の大将、街の外まで来てオイラにちょっかい出すなんて、そんなにオイラにかまってほしいのかニャ?」
「お前の行動は目に余る。このウェルスタンの秩序を守るものとして、お前のような無法者は放っておけないのだよ」
「あそ、勝手にがんばったらいいニャ。オイラは今から引っ越しするところだったのニャ。オマエサンにかまってやれなくてとっても残念ニャ。んじゃね〜手紙書くニャー」
え?引っ越すの?そんな急に!
「フン、尻尾を巻いて逃げるのか。賢明だな。安心しろ、背は打たん。とっとと去るが良い」
「ほらもーそういうこと言うー!ア゛アー言うこと聞くのは癪だからやっぱり出て行くのやめるニャ」
「なにを言っている?自分から出て行くと言ったばかりではないか、なぜ翻す?」
「もうすぐ親善試合だからちょうどほんとに引っ越そうと思ってたのにぃ〜もうどうしてくれるニャー!」
親善試合?話はよく見えないけど、ナマエさんがなんか困ってるってのはわかる。さっきシュナウツァーさんが出てきた時「タイミング最悪」ってつぶやいてたのはこの展開を恐れてたのね。
ナマエさんの天邪鬼な性格を逆手にとるなら…
「ナマエさん聞いてください、お願いがあります。どうかこの街にとどまってください。お願いだから、絶対に、出て行かないでください」
にやぁ〜〜。ナマエさんわっるい顔して笑ってるわ。
「はあ?なんでオマエサンのお願いを聞かなきゃいけないニャ?ここにいてほしい??イヤだニャ。出てってやるニャこんな街っ!」
あきれ顔の閣下。ほんとめんどくさいですよね、ナマエさんって人は。
「あーなんか、おつかれさまです。
じゃ、ボクも行きますね。それでナマエさん、目的地って…」
「待て!君はここに残りたまえ。なぜあんな厄介者を追う?奴と一緒にいると君までそういう目で見られることになるのだぞ。もし君がひとりきりで仲間がいないというのなら、我がギルドへ入るといい、歓迎するぞ」
「おーそーだニャ、そいつの言う通りだニャ、これで念願のパーティーが組めるニャ。いやーめでたしめでたし」
ええーまさか願ってもないチャンスじゃん!シュナウツァーさんめっちゃいい人だ。あのプライムギルドに入れるんだよ!はぁー夢のようだぁ〜めでたしめでたし
「だが断る!」
「なにっ!?」
「アハハハハ、いっぺん言ってみたかったんすよねw
ナマエさん、ボクも天邪鬼なんです。ダメだって言われてもついて行きますからね!」
でもここで空気読まずにダメっていうのがナマエさんなんだよなぁ〜…
「ギャハハハハだっせwwwww ふ、フラれてるニャハハハハハハwww」
えっ?爆笑…
あ、閣下が、なんというか大変複雑な面持ちになってらっしゃる…怒らせちゃったかな。
「よし!んじゃ行くニャ!」
「はいっ!失礼します閣下!」
「んベェ〜」
「こどもか!」
つづく
「閣下、よろしいのですか?」
「ああ構わんさ。どうせすぐ会う事になるだろう。その時こそ…」