レイド
話し合いの結果、封印を解く大量の魔石はエリクシルさんが持つことになったよ。話し合いっていうよりも、結局シュナウツァーさんに誘導されたというか全ては閣下のシナリオ通りって感じだったけど、まあエリクシルさんならいいよねってほぼ満場一致だったよ、ナマエさんだけごねてたけどね。ほかにもいろいろ話し合ったけど、全部説明すると長くなるんでまあ追々ってことで…
そしていよいよ遠征出発の日になったよ。出発の日取りはあらかじめ告知されてて、ウェルスタンの内外から志願兵が集まってきてる。集合場所は正門の外なんだけど、なんちゅー人の数…街の住人まるまる引っ越すのかなってほどの大集団だ。鯖落ちしないかな…
なんか行列ができてる、なんだろ?あ、四天王を復活させる魔石を提供する列だ。こっちの列はシュナウツァーさんで、こっちの列はエリクシルさんが受付を担当してるんだな。たしかにこの二人なら絶対持ち逃げしないから安心だよね。出資を募るっていうよりむしろアイドルの握手会みたいなノリだな、投げ銭感覚に近い。集まった魔石の量がリアルタイムで表示されてるけどこのペースなら余裕でしょ。
あ、靱負さんみっけ。ひとりで突っ立ってる。置物みたいだな…でもこういうお祭りみたいなの無関心っぽいのに毎回ちゃんと来てくれるのえらいって思う。意外と嫌いじゃなかったりして。
「靱負さーんお久しぶりです。あ、魔将石使ってなんか創りました?」
親指きらんっ。
「おお〜楽しみですねぇ〜。ボクもいいかんじのスキルを創りましたよぉ、早くおひろめしたいですね。ところでシードルさん見かけませんでしたか?」
小首かしげ。
「見てないですか。マップにも表示されてないし、ウェルスタンにはいないみたいですね。直接サウルスに向かうのかな。まあ来ないってことはないでしょう。じゃあいっしょにナマエさんのところに行きますか」
ちなみにここまで靱負さんはずっと無表情です。靱負さんはこれでいいんです。
「ナマエさーんお疲れ様です」
「お、逃げずにちゃんと来たニャ」
「え?ああ、もちろんですよ、ふふふ…
あっ、まさか馬車で行くんですか!?乗せてください!」
「ええーオマエサン飛べるんだから飛んで行ったらいいニャ、むしろ先に行って始めといてくれていいニャ」
「いやですよーひとりで始めてたらみんなで遠征する意味がないでしょー、乗せてくださいよぉー」
「もうなーちゃん意地悪言わないの、もちろんレビンちゃんも乗っていいからね」
「やったぁありがとうございますママさんっ」
ゴォーーン…ゴォーーン…
お、時計塔の鐘が鳴ってる。出発の時間かな?シュナウツァー閣下が概要説明を始めたよ。ボクはこういうの初めてなんだけど、パーティーの集合体、"レイド"ってのを組むみたい。これに登録しておくと同じレイドチームの同士討ちが防げるし、敵チームを攻撃しても通報されないらしい。敵と味方の区別もはっきりつくからスパイの排除もできるしね。レイドシステムすばらしい。
ちなみにレイドチーム名は『SRUTR slayers』。シンプルでよき。スルトってああやって書くんだ。アドミラル…?リーダーのことかな?は、もちろんシュナウツァー閣下。SRUTR slayers に加入してる人をマークするとぼんやり青色で表示されるよ。
さあ!いよいよ全隊が動き出したよ。アイボリーフォレストの皆さんはちゃんと整列して行進してる、さすがだなー。けど他の人達は順番無視して好き勝手に歩いてる。まーこんだけ人数がいたらこうなるよねぇ、訓練された大隊ってわけじゃなくて、良くも悪くも個性的な冒険者達だもんね。
あ、サンチョスさんみっけ。たんまり稼いだって言ってたけど、また四天王退治に参加してくれるんだ。なんだかんがいってゲームを楽しんでるのかな?サンチョスさんなにげにけっこう強いから助かるー。ってか強そうな人ちらほら見かけるんだけど、かなり戦力そろってるよね。
一番最初、靱負さんの家で勇者と怯者の話を聞いた時は勇者は世間の敵!みたいな話だったけど、まさかこんなに四天王を倒したい人が集まるなんて思わなかったなー。あでも四天王だけだったら倒してもいいかなって人もいるのか、四天王倒した後は手のひらクルーってして怯者側にまわる人もいるんだろうな。んー、四天王倒した後か…魔王の討伐っていう最大の目的がひかえてるんだよね、どうすんだろ…
「ナマエさん、最後の四天王を倒した後はどうするんですか?どうなるんですか?」
「倒す前から倒した後の話かニャ?気が早いニャ、取らぬタヌキの皮PON PONだポン。ねえタヌキの語尾ってなんでポンなの?鳴き声がポンだから?」
「いや違うでしょ。こう、お腹を叩いた時の音じゃないですか?ぽんぽこぽーんって」
「なんでタヌキがお腹を叩くのかニャ?そんな生態見たことないニャ。集団幻覚?」
「ボクも知らないですけど…昔話にルーツがあるんじゃないかと…それか信楽焼になにかヒントが…あのタヌキの話続けます?」
「あ見て、タヌキの獣人ニャ」
「うそ!?そんなのいるの?!どこ??」
あれ?なんの話だったっけ…まあいいか。
途中休憩しながら、日が暮れる前に宿場町に泊まって、宿に入りきれない人はバーニングキャラバンの人達が組んでくれたテントで野営して、夜が明けたら出発して、そんなこんなでようやくサウルスの目前までやってきたよ。時刻は夜、予定通りだね。
お、先遣隊…というか勝手に先走っちゃった人達がちゃんと待ってる。それと、ウェルスタンからの遠征に参加できなかった人達も決戦が始まる時間に合わせてここに集まってるみたい。あ、シードルさんもいる。目立つなー。おーいこっちだよー。
遠征軍の最後尾も到着したみたい。いよいよか、ついに決戦が始まるんだ、あー緊張してきた…
さて、街の方はといいますと…はい出ました"とおせんぼ"。律儀にずっと待ってたんだ。ヒマなのかな…
目深にローブをかぶった人達がずらっと並んで街への侵入を防いでる。ちょっと不気味…でもこっちと比べると数はそんなに多くはないかな。
ん、真ん中にローブじゃない人がいる。
「勇者の皆さん!遠路遥々足をお運びいただき誠に痛み入ります。ようこそ、我がサウルスへ…さあ、血湧き肉躍る最高のショーを始めましょうッ!!」
ダジャレかな?
つづく




